レジェンダリーダンジョン~悪役モブに転移した俺、最弱から最強になってやる~
アンリミテッド
第1話 悪役モブ
俺は自分の顔を見る。鏡に映る姿を自分自身であることを知っているが、同時に違うとも言える。
何が言いたいのか。つまり、自分の顔が違うのに違和感が全くない、当たり前に受け入れているのである。
そして、見覚えがあった。俺は自分の名前を口にする。
「
それが俺の名前であり、『レジェンダリーダンジョン』、略して『レジダン』に出てくる主人公と対峙する悪役モブであった。
話は数分前まで遡る。
俺は気付けば、『夜桜高等学校』の入学式の最中にいた。夜桜高等学校とはレジダンの舞台の1つである。
場所は講堂であり広かった。生徒達に囲われて、
「是非、この夜桜高等学校で自分達の理想の探索者になって欲しい。夜桜高等学校は貴方達が探索者として成長することを心の底から願っています」
前を向けば、白髭を生やしたスーツ姿の老人が立っていた。
俺は夜桜高等学校、老人、いや校長先生を見て確信する。これはレジダンのオープニングであり、今は入学式の最中だと。
俺は心の底から興奮した。まさか、レジダンのストーリーをこんな形で体験出来るなんて。しかも妙にリアルで、ゲームであることを忘れてしまいそうだった。
だけど、俺はレジダンのイベントに参加していた。どうして急にこんなことになっているのか分からず、イベントのことも全く思い出せなかった。
「新入生の皆さん! ようこそ! 夜桜高等学校へ!!」
俺がイベントを思い出そうとしている間に入学式は終わった。両腕を広げる校長先生。パフォーマンスだなぁと眺めていた。
クラス順に退出していく新入生達。俺のクラスは一番最後であった。……一番最後、つまり主人公と同じクラスか。
俺はいったい、どうなっているんだろうか。
お手洗いの鏡を見る限り、間違いなく遠野和真であった。
遠野和真という人物はどのルートでも必ず主人公と敵対する。そして主人公が勝つと、いつの間にかいなくなっていた。序盤で登場することもあり、プレイヤーからは悪役モブと呼ばれていた。
それが今の俺であった。
「……」
言葉が、溜め息が出なかった。
「戻ろう」
取り合えず教室まで戻ることにした。悪役モブになったことを受け入れなければいけないか。
教室に戻って自分の席に座る。窓側の一番後ろの席であった。
俺は教室を見渡しながら、レジダンのことを振り返る。
レジダンは、夜桜高校とダンジョンを舞台にした現代ファンタジー。主人公とヒロイン達が作り上げる王道のストーリー。VRMMOで大人気のゲームであった。
生徒同士で争う展開がある。主人公は仲間と共に困難に立ち向かっていく。
2週目からはカスタムキャラが使えるようになり、主人公と同じ立ち位置でストーリーを攻略することになる。
それとヒロインも多い。様々なヒロインがいて攻略していけば結ばれる。笑顔は別格であった。
振り返ってみても面白いゲームだと断言出来る。
そして今の状況は、最悪かもしれない。
まず席順は成績で決まる。俺は窓側の一番後ろの席であることから、このクラス、いや学年最下位である。
次にこのクラスなんだが、主人公がいる。しかも
最後にEクラスであること。……レジダンのイベントに巻き込まれるかもしれない。ステータスを見て考えるが、巻き込まれたくないかな。
あっ、扉が開いた。先生が教室の中へと入ってきた。そのまま教団に立つ。
「よし、座っているな。私がここ、Eクラスの担任となった
自己紹介か。なんて言えば良いかな。席順は一番後ろだから焦らず考えれば良いか。
「私は
ヒロインの一人。長い銀髪でポニーテールの少女。貴族であり、制服には特別な金色のバッチを付けていた。
「俺は
金髪で、荒々しくトゲのある髪型。
何故彼は自己紹介で軽い脅しをしているんだ。文句を言う奴はいない。こういう男と思っているのか、淳一が貴族だからだろうか。
彼も貴族なので金色のバッチを付けている。
「僕は
茶髪のショートカット。眼鏡をかけた知的系男子だ。しかし彼は熱い心を持っている。主人公の強力な相棒になること間違いなし。
「俺は
男性主人公である彼。黒髪で短髪。見た目だけなら普通……よりイケメンだけど。俺と彼とでは圧倒的な壁がある。
「私は
明るく笑顔で振るまう彼女は女性主人公である。赤色の髪にワンサイドアップ。黒のリボンを結んでいた。
「
桃色の髪を長く伸ばした少女。彼女は支援系に育てれば必ず役に立つ。バフを掛けたり、回復するのが得意だったな。心音は葵と同じくヒロインだ。
「
明莉と同じく元気な自己紹介をした彼女。青髪を白のリボンでツーサイドアップに纏めている少女。ヒロインではないけど人気のあるキャラクターだ。ただし……不遇キャラである。
その後も自己紹介が進んでいく。なんの初期ジョブになりたいか明かしていた。初期ジョブというのは、『ファイター』、『メイジ』、『シーフ』の3つである。
俺は無難にファイターかなぁ。いやでも悪役モブだし、う~ん。……よし! これでいこう。
前の席の自己紹介が終わり、俺の番である。立ち上がると自己紹介をした。
「遠野和真。ジョブはまだ決めてない。よろしく」
俺の自己紹介は簡潔だ。本当に必要最低限のことしか言ってない。だけど自己紹介なんてこんなもんでしょう。
で、俺の自己紹介は……うん、失敗だな。馬鹿を見る視線、冷たい視線、一部は睨み付けてくる。葵や柊翔からの視線が痛い。淳一からの視線は怖い。
「チッ」
思い切り舌打ちしやがった。
まぁ、良いか。これはゲームなんだから。俺は気にしていない風に座り込んだ。
それと気になる点が1つ。原作ではクラスメイトは全員で30名。しかしここでは
考えても意味ない、か。東谷先生が話を進めようとしている。
「自己紹介は終わったな。なら次の行動に移す。机の上にある機械を見てくれ」
俺は東谷先生に言われた通り機械を見る。スマホに似ているそれはダンジョン関係で大きく貢献してくれる優れ物だ。
「これは『夜桜パッド』だ。主に使うのは君達のステータスを確認する時、起動すれば君達のステータスを見ることが出来る。ステータスを確認するには一番下の真ん中に指を置くこと。そうすれば機械が君達のステータスを読み込む仕組みになっているぞ。試してみろ」
東谷先生の言う通り動く生徒達。俺もすぐに夜桜パッドを起動した。
夜桜パッドが起動する。俺は画面を動かしてみる。……あれ? ログアウト機能が
運営を問い合わせる項目も無い。どうなっている?
これは後で考えるか。ステータスを確認してみよう。
【名前】 遠野和真 Lv1
【ジョブ】 未登録
【HP】 8
【MP】 13
【STR】10
【VIT】 8
【AGI】 9
【INT】 5
【MND】 7
スキル〈1/2〉
【スローアップ】
……弱っ!? 弱過ぎだろ!!? これが俺のステータスなのか!? むしろこれでよく主人公に挑もうとしたな!?
俺は結構絶望した。……絶望? これはゲームなんだから絶望するなんて、なんでだ?
それに、【スローアップ】ってなんだ? こんなスキル、レジダンでも見たこと無いぞ。俺の知らないスキルだ。鑑定があれば何か分かるかもしれないが。
……いや、今はそうじゃない。俺がすべきことはまず運営に問い合わせないと。イベントの記憶が抜け落ちている時点からやばいぞ、俺。
その後東谷先生はダンジョンと教会の設備について話を進めた。
「君達が使用するのは日本で3つある内に1つである『東都ダンジョン』だ。東都ダンジョンは階層ごとにモンスターの強さが違うから自分で出来る範囲で頑張ってくれ。
また、東都ダンジョンは『探索者協会』が管理している。入りたいなら探索者協会で探索者登録をするように。学生証と夜桜パッドがあればスムーズに事が運ぶようになっている。この作業は来週の初めにも伝える予定である。以上」
これで東谷先生の話は終わり、入学式は終わりを迎えるのであった。
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