サラリーマンライフ

@J2130

第1話 自己紹介 前編(全員◯◯生まれ)

「それでは新入社員にみなさん、順番に自己紹介をお願いします」


 30年以上前、緊張でコチコチの僕ら新入社員を紹介してくれたのは朝礼の司会を務める総務の小杉さんでした。

 40代くらいの細見の男性でした。


 社長や会長、本社勤務の全社員さんが目の前にいます。


 僕の番がやってきました。

 体育会らしく大きな声で言おう! 

 そう決心していました。

 今思えば…思いっきり ”昭和” です…


「堀と言います! 」

「大学時代はヨットをやっていました! 」

「使いべりしません! 」

「よろしくお願いいたします! 」


 朝礼と新入社員の紹介が終わりました。

 それから約一か月の社内研修があり、電話応対、名刺の渡し方受け取り方、エレベーターでの位置、車での座席の位置、お茶の出し方などなどを教えられました。


「明日は工場と倉庫に行きますから…」


 メーカーでしたので現場にも行き、製品の製造もやらせてもらいました。


 *****


 時は移り…かなり移り…新入社員は僕よりはるかに若くなりました。

 ある時、社内研修の講師になり、なじみの人事の金子さんからこんなことを言われました。


「堀さん…今年の新入社員はね…」

「え…なに…? 」


 新入社員のみなさんは目の前に座って僕の講義というか仕事の説明を待っています。

 当時所属していたシステム室の業務説明会の講師をしていました。


「全員平成生まれなんだ…」


「えっ…! 」


 なんと言えばいいのでしょうか…

 別世界の、違う時代の人達に思えました。

 かなりショックを受けましたね。


「そうなの…」



 目の前のかわいい女性の新入社員に向かって僕は同じ言葉を言いました。

「そうなの…? 平成生まれなの…」


「はい! 」

 涼しいまぶしい笑顔で彼女は応えました。


「そうなのか………」


 三度同じ言葉を言いました。ホワイトボードに振り返りなぜか溜息をはきました。


 平成生まれの視線が僕の背中にささりました。

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