第30話
「ギュイイイイイイイイイイイ」
タッタッタッタッ
〝竜〟に向かって走り込んでいくユウキ。
とーー、頭上から尾を叩きつけられる。
「〝幽霊化〟ーー!!」
すんでのところで、透明化して攻撃を回避ーー
「ギュイッ!?」
「へっーー!ずいぶんと驚いてるみてぇだが、まだまだ序の口だぜ!?」
〝竜〟の懐に入り込んだユウキは、咄嗟に〝幽霊化〟を解除。
「〝魔気吸収〟ーー!」
ズオオオッ、と触れた手から〝竜〟に流れている魔気を吸い取りあげるユウキ。
「ギュオオオオオオオオオッ!!」
ジタバタと暴れ抵抗する〝竜〟。
「おらっ!暴れんな!!」
〝竜〟がユウキにかぎ爪で攻撃する直前ーー、
「〝幽霊化〟ーー!!」
ユウキは透明になり、〝竜〟は自分のかぎ爪での攻撃を自分自身の腹をかすめた。
「すごい……あんな悍おぞましい〝竜〟を相手にここまで立ち回れるなんてーー、本当にユウキさんって何者なのーー!?」
素人目にも見えるユウキの圧倒的な立ち居振る舞いに、驚きを隠せないセシリア。
「本当ーーすごい。」
そしてそれは、ポピィもまた同様であった。
(〝潜伏〟を使うのも無しではないが……その場合アイツらに矛先が向くだろうーー。メンドクセェけど、〝アレ〟使うかーー!!)
あまりに膨大な量の魔気を持つ〝竜〟。
ユウキは〝幽霊化〟を解除して〝竜〟の油断を誘う。
「おいどうした化け物!?そんなデケェなりしてもうお手上げか?」
指をクイックイッと動かし挑発するユウキ。
明らかに〝竜〟もまた、ユウキに対しての苛立ちを露わにしていたーー。
「ちょ……ちょっと油断しすぎじゃないユウキさん!?」
そんなポピィの心配は、見事に裏切られる形となったーー。
「グオオオオオオオオオオッーー!!」
一瞬でユウキに間合いを詰める〝竜〟そして
ザシュッーー
ユウキの腑はらわたを〝竜〟のかぎ爪が貫通するーー。
「っーー!!ユウキさん!!」
しかしーー、
「グオオオオオオオオオオッーー!?!?」
明らかにダメージを受けた反応を示したのは〝竜〟の方であったーー。
「《ダメージ反転》……どうだ、自分の爪の味は?結構いてぇだろ?」
先程貫通したはずのユウキの腹部は、見れば血の一滴すら出血していなかった。
「あ、あれーーえ、どう言うこと?」
目を白黒させるポピィの隣では、ことさら目を大きく開けて驚きを隠せないセシリアの姿がーー。
「あれはーー魔族が使うとされる《魔術反転》の一種……でしょうか?でも魔族でさえも扱うのが難しい技を一体どうやってーー?」
理解に追いつかない二人を他所に、ニヤリと笑みを浮かべるユウキ。
そして、〝竜〟が怯む一瞬の隙を、ユウキは逃さなかったーー。
「お見舞いだ!喰らえっーー!!」
〝竜〟の顔面まで行ったユウキは両拳に力を込めてーー
「鼻フーーーーック!!!」
〝竜〟の鼻の穴に、両の手を突っ込む。
「グアアアアアアアアアアアッーー!!!!!」
さらに怯む〝竜〟。
ユウキはさらに追撃として、
「喰らえっーー〝奥義〟!!クサ玉だああああああ!!」
右ポケットから取り出した腐った卵を〝竜〟の口の中に放り込むユウキ。
ゴクリッ、と呑み込む〝竜〟
「グ……グアオオオオッ!?」
涙目でジタバタする〝竜〟。
最後にトドメとしてーー
「喰らえ〝神・奥義〟!!目潰し!!」
またも左ポケットから取り出した唐辛子の粉末を、六つの眼のある〝竜〟にふんだんにかけまくるユウキーー。
とうとう耐えきれなくなったのかーー
「グアアアアアアアアアアアッ!!グオオオオオオオオオオッ!!!」
体を倒してゴロゴロと暴れ回る〝竜〟。
そんな様子を、先程の驚き様とは対照的にジト目をしながらーー、
「……………………本当に何者なの?ユウキさんって?」
「あはははっ…………………ごめん、私もわからない」
「にゅにゅ〜(ナニあれ?)」
理解が及ばず目が点になる一向であったーー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
B6階層ーー
ポピィ達とは離れた所に、一人思い足取りで行動する者がいた。
「ハァ……ハァ……レックス、ゼル……」
槍使いのアレンは、ペシャンコになった槍を杖代わりに突きながら、なんとか歩みを進めていたーー。
「先ほどから〝竜〟と〝何者か〟が戦っている……。無事なのか……?セシリアーー」
ボロボロの体で、口端からは血が溢れている。
よほどの激闘を繰り広げていたのだろう……
「Bランクの俺でさえ、全く歯が立たなかった……レックスもゼルもだ……おそらく、〝Sランカー〟でなければ奴は倒せない……クッーー」
歯噛みし、苛立ち混じりに槍を突く。
(待っていろ……セシリア。絶対に死なせんーー!!クローバー家の名にかけて……!!)
その瞳はまだーー、絶望の色に染まってはいなかったーー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます