第12話
「さて、そろそろ日が登ってきた頃合いだし、方針も決まった事だし、グレイス君ーーユウキを呼んできてくれるかなーー?」
「っーー!!御前様、よりによってあいつにポピィ殿を任せるおつもりですか!?あいつはーー」
そこまで言ってカーヴェラは待ったをかける。
「グレイス君ーー、君の懸念もわかるわけだよ……?だが今のあいつにとってもちょうど良い復帰リハビリになるはずだ……。そうだろうーー?」
頭を抱え悩むグレイス。
そうしてしばらく考え込んだ後、
「はぁ……わかりました。御前様がそうおっしゃるのならば致し方ありません……。して、これからどこに?」
カーヴェラは立ち上がり、くるっと半回りして……
「もちろん!私の屋敷にーーだよ」
指をパチンと鳴らすと、カーヴェラ・ポピィ・ヒュイ・グレイスの四人は一瞬にして広大な敷地の中にある、それはそれは大きな大きな十三階建ての屋敷の前へと飛ばされたーー。
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『やはりお前は足手まといだ……ユウキ……残念だが、お前にはこのパーティーを抜けてもらう』
『……はあ!?何でだよ……今までずっとやってきたのに……急に何で!?』
『今・更・じゃない……俺たちは聖国が抱える〝勇者パーティー〟まで上り詰めた。全員がSランクだ!なのにお前はいつまでたってもEランクのまま……悪いが、メンツと言うものもある』
『つーか、正直今までアタシたち反対してきたけどエドワードとエリがアンタのこと庇ってたから我慢して来たのよ?ちゃ〜んと後継になるメンバーもいるから、安心して出・て・行・っ・て・?』
何だよそれ……結成時からずっと一緒にやってきたのに……こんな事って………
『つーか、そもそも何でお前は自分から出て行こうとは思わなかったんだ?俺たちとは住む世界が違うって何で理解出来なかっただろうな……意味不明だろ?こういうのは気遣ってお前の方から出ていくのが筋ってモンだろうに……』
理解してはいた。俺・の・能・力・は表に出せないから……いつまで経ってもギルドに評価されない。仲間にも言えない……だけど、こんな事ってあるのかよ……!?
『つーかさ、アタシとカイゼルはエドワードの出した試験に合格したから今のパーティーにいるわけだけど、ユウキとエリはエドワードと結・成・メ・ン・バ・ー・だ・か・ら・ってだけの理由でしょ?エリはちゃんとこのパーティーにふさわしい活躍と能力があるし、ギルドでの手続きとか率先してやってるワケだけど……アンタは何もやってないよね……?』
『っーー!それはお前らがーー』
っーー!
『ああ?俺たちが何だって……?』
いいぜ……お前らがその気なら……俺はーー!
ガチャンッ
『ぜぇ……ぜぇ……はぁ……はぁ……』
『…………エリ?』
『待ってよーー!何で、何でユウキを追い出そうとするのーー!?』
『エリ……何故ここに……?ギルドから招集があったはずだろ……』
チャリッ、と。エリは猫につけているクリスタルのペンダントを取り出す。
『にゃ〜、ゴロゴロ……』
『タマに付けてるペンダント。これは盗聴の役割があってね……ちょうど会議も早く終わって帰り際だったけどみんなの話し声が聞こえて来たから……。ねぇ、エドワード……これどういう事?何でユウキを追い出すわけ?だってユウキはーー!』
『悪いが決定は覆らない……確かにコイツはあの《伝説の魔法使い》であるカーヴェラさんの紹介でもあって結成メンバーに入れた……。正直あの人に不義理を働く形になって申し訳ないとは思っている……だが、俺たちは〝勇者パーティー〟だーー!Eランクの冒険者を抱えるわけにはいかない……。もちろん、ユウキには相応の退職金を出す。次の仕事もできる限り斡旋しよう。だからーー』
『…………いらねぇよ』
手を伸ばすエドワードの手をパチィンッーーと振り払う。
『…………悪ィ、エリ……俺はどうやらここまでのようだ……、せいぜい頑張れよ……。お前らも今まで世話になったな……じゃあな……』
『っーー!!ユウキ……!』
『ちょっとアンタ!退職金も払わなかったらウチのパーティーに不評が立つじゃない!コラッ、話を聞け!!』
『やめておけエレミー、あいつにかける情けなんてねぇよ……』
『でもあいつ……チィッーー生意気な奴め!!二度と姿見せんなーー!!』
『っーー!エドワード……?本当に……本当にこれでいいの…………?』
唇をぐっと噛み締める。
『…………せめて、最後くらいあいつの好きにさせてやろう……』
ユウキを見送るエドワードの目にはどこか、やるせなさと苛立ちが混じっていたーー。
チチチチチチチッ
「あ〜、久々に嫌な夢見たー、だりぃ……」
ベッドの上でネズミ色のパジャマを来た黒髪の青年ーーユウキがボソリと呟く。
ふと机の上には、山のような手紙があったーー。
「はぁ……ったくあ・い・つ・も、毎日毎日…………手紙なんかいらねっつの」
しかしそんな毒舌的な言葉とは裏腹に、全ての手紙の封は空いていたーー。
トントントンッ
部屋の戸を叩く音がする。
「ユウキ、いるのだろう?グレイスだーー。」
「げっ!?おやっさん!?何でここに……」
急ぎ足で窓を開けて足をかける
ドンドンドンドンッ、と。
「ユウキ!いるのだろう!!話がある!!」
「こっちにはね〜よ、バーカ!!」
ドンっとドアを蹴り破る。
「げっ……」
「もう逃げられんぞユウキ!大人しく捕まって俺について来い……御前様がお待ちだ!」
ユウキはグレイスをからかうように、
「やだよバーカ!!お師匠に捕まったら尻百発叩かれるだけじゃすまねぇからな……あっかんべーだ!!ケケケ……」
「こ奴ーー!」
ふぉんーーと、グレイスがユウキの目の前まで一瞬で迫る。さすがは《伝説の聖騎士》と言った所だろうか?
「へっーー脳筋バカめ……!」
「なっーー」
するりっ、と。触れたはずのグレイスの手はユウキに触れられず、そのまま五階の窓から落ちるーーかに思たが、すんでの所で窓際に手を掛けなんとか落下を防いだーー。
「き……汚いぞ貴様……〝幽霊化ゴースト〟を使うなどと……」
「へっーー!〝不死王リッチー〟に身を落とした聖騎士サマには言われたくねぇな……!どうした?引き上げてやろうか……?」
「き……貴様ーー!やめーー」
と、グレイスの手を握るとーー
「うわあああああああああああああ」
「あっははははははははははははは」
スキル《魔気吸収ドレイン》を使ってグレイスから魔気を奪う……。
「チィッーーやっぱアンデット×元聖騎士ってのはどうも吸いづらくてかなわねぇ……」
「おい……お前やめ、ふがっーー」
ドレインをやめてグレイスの顔を踏み台に外へと飛び出すユウキ。
「ヒィィィィィィィィィヤッホォォォォォォォォッーーー!!!」
スタッと軽やかに着地し、タタタッと走り抜ける。
ふとーー
「ん?こんな所に客か……珍しいな?」
「え?ああ……あの、本日付けでカーヴェラさんの弟子になりましたポピィです!!」
何故かビシッと敬礼をするポピィ。
「何で敬礼してんのお前?」
「ああ、す、すみません……ここの住人の方かと思いまして、これからお世話になるかもしれないので一応挨拶を……」
おどおどするポピィを尻目に、ユウキはーー。
「あ、ご心配なく。面倒見る未来は俺の予定にはないから」
「あ、ああ……そうです……か?」
突き放されたような対応に、少ししょぼんとするポピィ。
そんなユウキはと言うと頭を掻きながら、気だるげに口を開く。
「しっかしにてしてもお前……あんな化け物みたいな人の弟子になりたいだなんて物好きな奴だな〜?あの人一体何歳だと思う?俺はやめた方がいいと思うよ?あんなサディストの頂点に君臨するような人に教えを請うなんて命が幾つあっても足りゃあしねえ〜。それこそ魔王の下僕になって一生忠犬みたいに尻尾振ってた方がマシ……ん?どうしたお前……?」
「あ……あの〜、その〜」
ポピィの指差すユウキの後ろに。
「……………………ほ〜う、私のかわいいかわいい愛弟子は、あ・い・つ・の下僕になって忠犬として過ごす人生の方がずっと嬉しいのか〜」
ギクリッーーと、ユウキの首が機械のようにギギギッと小刻みにゆっくりと後ろを振り向く。
「あ……あの〜、お師匠さま……?今のお話……どこまで聞いておいでですか……?」
「ふふっ♪どこまでだと思う?ユ・ウ・キ・君♪」
「ぎ、ギィヤァァァァアアアアアアア」
断末魔と共にユウキの上に跨がり悪そうな顔をするカーヴェラ。
その後はカーヴェラさんの愛・情・表・現・という名のお仕置きが、日が上りきるまでずっと続くのであったーー。
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