君と始める異世界黙示録

樹希柳唯

第一章 終末の異世界

プロローグ.『誰かの夢』





 ――何も救えなかった。



 仲間も、大切な人も、未来も。



 当然だ。この世界は滅ぶために創られたのだから。

 何もかもを失うために創られたのだから。

 これが、神様の望んだ結末なのだろう。


 ――ふざけるな……。

 ――ふざけるな

 ――ふざけるなっ!!!


 到底諦められない!

 受け入れることなどできるはずがない!!


 「それでも、俺じゃ届かなかったから……頼む。天使でも悪魔でも、何でもいい――この世界を救ってくれっ!」




 『いい覚悟だ。あいつを思い出す』




 「誰だ……?」


 『誰でもいいだろ? すべきことがあるんじゃないのか?』


 「そうだ。俺は諦めきれない。でも……」


 『手を貸してやる』


 「――!?」


 『代わりに、お前は何を差し出せる?』


 「俺の全てを差し出す!!」


 『足りない』


 「でも、俺には何もない。俺以外に払えるものなど何一つない。力は借り物で、心だって貰い物で、何かを成し遂げる知恵もない。何時だって足りない。何もかも足りない。そんな俺に払えるものは、俺自身しかない」


 『その想いも、紛い物か?』


 「違う。断じて違う! この想いだけは本物だ!! アンセスを、オルドゥークを、多くの仲間たちを想う気持ちは、アストリアを想うこの気持ちだけは本物だ!!!」


 『そいつを貰うとしよう』


 「この想いを手放すことは、すごく寂しくて、切なくて、苦しい……それでも、」


 ――俺のこのちっぽけな想いで、この世界を、あいつらの想いを、アストリアの夢を救ってくれるなら。


 「この想い、持っていけ!」


 『勘違いするなよ? 手を貸すだけだ。救うのは俺じゃない。俺は救わない』


 「じゃあ、誰が?」




 『次の、誰かだ』




 意識が遠のいていく。


 ――誰か……"誰か"、か。


 「ハハッ!」


 何故だろう。

 ふと笑いがこみあげてくる。


 ――そうか、俺はここで終わりか……だけど、悪くない。


 願わくば次の勇者が――、






 "この世界に救いを"




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