水さん
天川裕司
水さん
タイトル:水さん
ある日、私は水(みず)さんという存在に出会った。
夏休みの初日、私は旅に出ようと密かに計画していた
富山県横断旅行に出向いた。
でも、ものの数時間でギブアップしてしまい、
だだっ広い公園をさまよっていた時。
「ハァハァ…水、水が欲しい」
となった瞬間、少し向こうに水が現れたのだ。
「え…ウソ…?」と私はその水のほうへ近寄った。
地面にある水なんて飲めないのに、
きっと、体の本能が私を動かしたんだ。
でも本当に驚いたのはそのあと。
私が近づくとその水は中央に集まり出して、
次の瞬間、人の形になったのだ。
「え!?」と喉が渇いている事も忘れ叫んだ時…
水さん「どうだい?水の夢を見て、君の心も少しは潤っただろう?」
そんなことを言ってきた。
「…は?余計喉が渇いたわ」
みたいなことを心で思うと、
水さん「あ、そうだったか。ごめんごめん」
と言って、その水さんはあっさり消え去った。
「なんだったんだろ今の?」
と不思議な気持ちで向こうを見ると自販機があった。
ポケットに入れていたわずかな小銭でジュースを買う事ができ、
私の喉は本当に潤った。でも…
「はて?この公園に自販機なんてあったっけ?」
次の日、行くと、やっぱりその公園に自販機なんか無かった。
「もしかして、あの水さんが…?」
本当に潤ったよ、ありがとう…
なんてそのとき少しあの水さんに感謝した。
(プール)
でも夏休み中に友達と一緒にプールに行った時。
「きゃあ!」
メインプールから少し離れた所にあった第二プールで、
友達の子が何を思ったかそこへ飛び込み、
頭から血を流して倒れていた。
「な、何やってんのよ大丈夫!?」
友達からの反応はない。
その第二プールは水が張っておらず、
飛び込み台から飛び込めば、こうなるのが当たり前。
わずかに意識を取り戻した友達は、
「…あ…あ…このプールに水が張ってたから…」
そう言い残してまた意識を失った。
その時ふとあの公園での事を思い出した私。
思い出した直後、
水さん「どうだい?少しは沢山のプールで遊べるその心が潤っただろ?」
私はその時とっさにこう言った。
「こればかりは頂けないわよ!友達をすぐに返して!」
すると水さんは、
「あ、ごめんごめん。そうだったか。じゃあ返してあげる」
そう言った。
その直後、私が抱えている友達の内部が透き通るように見えて、
まるで水が沸き起こるように友達を包み、
その友達は意識を取り戻したのだ。
頭から流れていたはずの血も皮膚の中に戻り、
裂傷は見る見るうちにふさがって治り、
友達は7割がた回復できた。
その時、水さんがぼんやり私の横に立ち…
水さん「人間の体というのは地球と同じで7割が水。そのぶん回復させてあげたよ。どうだい?これで君の友達を思う心も少しは潤っただろ?」
そう言ってすっかり消え去った。
それ以来、私はあの水さんを見た事がないけど、
何か本当に困った時になれば、
きっとまた現れてくれるんじゃないかな?
なんて思ったりした。
でも時々行き過ぎて、間違いをしてしまう水さん。
もうそう言う意味で間違ったりしないでほしいなぁ…
なんて思ったりもしながら。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=3KwSU1u5y-w
水さん 天川裕司 @tenkawayuji
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