第35話劉武が江陵を奪い、父子が再会する!
三万、
まさに三万の大軍が城を攻めている最中、主将が突然拉致された!
曹軍の将官たちは呆然とした。
このまま攻城を続けるか?
主将がいないのに、何を攻撃するというのか?!
しかし、反応が早い将軍もいて、各自の部隊を急いで集め始めた。
ちょうどその時、
轟!~
西陵の南門が突然開いた。
ヒヒーン!~
魏延が馬に乗って刀を掲げ、城門から密集した三千の歩兵が押し寄せてきた。
そして、城門から出てきたのは十数本の「劉」字の旗…
魏延は一瞥し、うんざりとした。
全く、まさか劉玄徳の大旗を掲げて威を借りる日が来るとは思わなかった。
しかし今はそうせざるを得ない、魏延は嫌悪感を抑え、「この『劉』字を子烈(劉武)のものとみなすしかない」と心中で呟いた。
彼は自分をそう慰めた。
……
西陵城の北門、
城門が開き、一台の戦車がゆっくりと城を出て行った。戦車は非常に遅いスピードで進んでいた…
その上には江東一の猛将、甘寧(甘興霸)が座っていた。
散漫な山越の兵士たちが戦車の後ろに続いていた。江東から送られてきた山越兵士たちは凶暴だが、訓練はほとんどされていなかった。
「甘将軍、計画通りにお願いします。」戦車の上で、甘寧の側にいる兵士が冷たい声で言った。言葉には強い脅迫の意味が込められていた。
甘寧の顔は青ざめ、胸の中に怒りの火が燃えていた。彼は本当に、陸遜がこんなに卑劣だとは思わなかった。
見た目は車に座っているが、実は縛られている。
両足はしっかりと縛られ、一方の手も背後に縛られており、ただ服に隠されているため他人には見えなかった。
さらに、戦車には二人の兵士が甘寧の背中に匕首を突きつけており、甘寧が何か不審な動きをすればすぐに…
彼はすでに協力することに同意していたが、以前に劉武に重傷を負わされてまだ回復していなかったため、甘寧は歯を食いしばり「陸伯言(陸遜)は本当にろくでなしだ!」と罵った。
しかし、その言葉が終わる前に、戦車の兵士は「甘将軍、計画通りにお願いします!」と言った。
次の瞬間、背中の匕首が前に押し進んできて、甘寧は軽い痛みを感じた…
その後、甘寧はゆっくりと動くことができる左手を上げ、「旗を上げろ!」と言った。
カンカン!~
カン!~
すぐに数十本の大旗が高く掲げられ、それぞれに「孫」字が書かれていた。
三千の山越兵士が戦車を囲み、曹軍に向かってゆっくりと前進し始めた時、
「甘将軍、計画通りにお願いします。」
その後、甘寧の大声で「江東一の猛将、甘興霸が来たぞ!!」と叫んだ。
……
「劉皇叔(劉備)の大将、魏文長が来たぞ!!」
曹軍の南側の陣地で、魏延は馬に乗り、鞭を振り上げ、ほぼ凶悪な顔つきで叫んだ。
強風が吹き、彼の背後には十数本の「劉」字の旗が激しくはためいていた…
曹軍の右翼の陣地が動揺し始めた、
「あれは…魏延だ!」
「本当に魏延だ!」
「劉備の大将魏延が来た!」
江陵から来た曹軍の多くは、かつて劉表の配下にいた荊州の兵士たちで、自然と魏延を知っていた。
彼らはかつて魏延が城門を開いて劉備を襄陽に入れ、旧主の長沙太守を斬って劉備に降ったことを知っており、魏延が通過する所では曹軍の士気が激しく動揺し始めた。
……
曹軍の左翼陣地では、
三千の山越兵士が戦車を囲み、ゆっくりと曹軍に向かって進んでいた。
甘寧は戦車の上に座り、厳しい表情で八面六臂の威風を放っていた。
「甘将軍、計画通りにお願いします。」
そして甘寧は大声で「江東一の猛将、甘寧が来たぞ!!」と叫んだ。
曹軍の右翼は即座に動揺し、
「本当に甘興霸だ!」
「江東一の猛将甘寧が来た!」
「江東が出兵した!」
「甘寧は江東一の猛将だ…」
かつて赤壁の戦いで、曹操が敗北し、甘寧が曹軍を追撃して屍を積み上げ、その名を轟かせた。
荊州の兵士たちにとっては、それが大きなトラウマとして残っていた。
さらに、髪を切った山越兵士たちは江東軍の象徴だった。
戦車の上、
軍士が剣を渡すと、
甘寧は歯を食いしばり、それを受け取り、
彼は片手で剣を受け取り、前に力強く振りかぶった。「殺せ!!」
戦車が加速し、山越兵士たちも一斉に前進し始めた!
曹軍の右翼陣地は即座に動揺し、崩壊の兆しを見せた…
魏延と甘寧が確定すると、曹軍の将軍たちは全員が恐慌に陥った。
「まずい!劉備と孫権が出兵した!」
「孫劉連合軍が来た!」
「魏延と甘興霸が出陣しているからには、関羽や張飛、周公瑾(周瑜)も後ろにいるに違いない!」
「この状況では、曹仁将軍は…」
「早く部隊を集めて、江陵に退却せよ!!」
……
西陵城の城壁の上、陸遜は重々しい表情で戦場を見つめていた。
城壁の上にいても、「曹仁が捕らえられた!」、「江東軍が来た!」、「劉皇叔の魏文長を知っているか?!」、「曹仁が生け捕りにされた!」、「我が軍の司令官が西陵に来た!!」という声が聞こえてくる。
その声の中で、曹軍は一波また一波と激しく動揺し始めた。
数人の曹軍の将軍たちが自分の部隊を率いて戦場を急いで退却すると、この三万の曹軍は真の大混乱に陥った!
「ハハハハハ!」と、陸遜が突然笑い出した。
傍らの百夫長が前に進み出て、「先生、なぜ笑われるのですか?」
陸遜は深く息を吸い込み、ゆっくりと剣を鞘に収め、静かに言った。「他人を笑うのではなく、ただ周瑜の無謀さ、諸葛亮の知恵の少なさ、そして曹仁という自惚れた愚か者を笑うのだ!」
……
西陵から江陵への官道上、一隊の騎兵が西陵の方向から急いで来ていた。
彼らは昼夜を問わず進み、一昼夜のうちに江陵の地に達していた。
「曹仁はどうなった?」と、劉武は馬を止めて振り返った。
高順が前に出て報告した。「六度目の目覚めで、目覚める度にすぐに気絶しました。愚かになる可能性はありますが、命には別状はありません。」
「それならいい。」と、劉武は馬鞭を振り、停まることなく進んだ。
半時間後、
一行の百余りの騎兵がついに江陵の城下に到達した!
高順は馬に乗って前に出た。「早く城門を開け!」
江陵の留守将軍が城壁の上から覗き込んだ。「大軍は西陵を討伐しているのに、なぜお前たちは戻ってきたのだ?」
高順:「我々は計略にはまった!孫劉連合軍はすでに西陵に大量の兵を屯しており、我々の三万の軍勢はほぼ全滅しました!」
「我々は死力を尽くして戦い、曹仁将軍を救い出したのです!」
「早く城門を開け!」
この言葉を聞いて、城壁の守将は震撼し、どうして可能だと考えた。
三万の軍勢が西陵を攻めたのに、守軍は二三千しかいないと言っていたではないか?
どうして孫劉連合軍に遭遇し、全滅したのだ?!
「お前たちは嘘を言っているのではないか?」と、江陵の留守将軍は信じられなかった。
ちょうどその時、劉武の後ろにいる二人の兵士が曹仁を担ぎ出した。この時、天人将軍曹仁将軍はまだ昏睡状態で、額には血が滲んでいた…
「子孝将軍!」と、城壁の守将は一目でそれを認識した。「子孝将軍はどうなったのか?!」
劉武は言った。「どうなったかって、早く医者を呼んで子孝将軍を治療させろ!」
「子孝将軍は曹丞相の従弟だ、彼に何かあれば、我々全員の首が飛ぶことになる!」
これを聞いて、守城将軍は耐えきれず、慌てて城壁を下り、しばらくすると江陵の城門が開かれた…
その将軍は自ら出迎え、劉武たち百余りの騎兵を城内に引き入れた。
「子孝将軍は二時間前に一度目覚めたが、江陵城には守軍がほとんどおらず、危険な状況だ!」と劉武は深い眉を寄せて言った。
江陵の守将は昏倒している曹仁を見て、ため息をついた。「そうだ、残っているのは三千だけだ。」
傍らの高順は動揺した…
劉武はすぐに言った。「子孝将軍は二時間前に目覚めた時、状況が危急で兵力が薄いため、城に入った後、江陵城内の百夫長以上の全員を彼の帳内に集めるようにと言っていた。」
江陵の守将:「了解した。」
劉武は曹仁の脈を探り、そして言った。「子孝将軍がもうすぐ目覚める、将軍は急いで彼らを召集してくれ。」
江陵の守将は「わかった。」と言い、
その後、江陵の守将は馬に乗り、城内の百夫長以上のわずかな軍中の指導者たちを急いで集めに行った…
一方、劉武たちの百余りの騎兵は、城中の守軍によって江陵城の郡府内に案内された。
およそ一炷香の時間が経ち、江陵の守将は六七人の部将と曲将を連れて郡守府に急いで駆け込んだ…
しばらくすると、郡守府から軍令が発せられた。「子孝将軍は江陵城内の全ての百夫長を郡守府に召集せよ!」
……
江陵城は大江の北岸に位置し、非常に重要な場所だ。
赤壁の戦いの後でも、軍威が圧倒的な周公瑾(周瑜)でさえも長い間戦ったが、この雄城を奪えなかった!
大江は雄大に流れ、ここの水流はやや急で、江面の濃い霧も流れによって時折見え隠れし、変化していた。
重い江霧を越え、江の激流を越えると、江陵城の対岸には新しい城があり、それが公安だ。
元々はただの小さな町だったが、周瑜と曹仁が江陵で激戦を繰り広げたため、小さな城となった。
ただし、大江の南の荊州の地は後に江東が劉備に貸したものであり、これがいわゆる借荊州だ。だから今、公安城には劉備が駐留している。
劉備だけでなく、
関羽や張飛、諸葛亮もいる。
そうそう、少し前に劉武が公安城から逃げ出したばかりだ…
現在、公安城の灯火のひとつは、糜夫人と阿斗(劉禅)のために灯されている。
我らが劉皇叔は今、暇ではなく、数艘の楼船を率いて江北の江陵城に向かっている。
「最近、江北で異変が起きている。」孔明は羽扇を軽く揺らしながら言った。「おそらく江陵を奪取する時が来たのだろう。」
船頭にいる劉備の表情はそう軽やかではなかった。「だが曹仁は経験豊かな将軍だ、周公瑾でさえも長い間戦ったが、奪えなかった。」
孔明は江上の大霧を見つめ、突然質問した。「主公、阿武公子は見つかったのか?」
その言葉を聞いた途端、劉備の顔色が変わった。「先生、その話を持ち出すな!」
孔明の一言で、劉皇叔はこの江の上でほとんど激怒しそうになった…
「はあ…」と、諸葛亮は仕方なく、羽扇を軽く揺らしながら、楼船は静かに濃い霧を抜け、対岸の江陵城へと渡っていった。
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