第十二話 放課後

「ってワケで、なーんかキョウちゃんが企んでそうな気配がするんだよねー」

 

 放課後、教室に残っているカナとユイにそのことをついて話を振る。


「なっ」

「げっ」


「なーんであんたらがヤな顔すんのさ」


 バツが悪そうに顔を逸らす2人。ややあって、まるで釈明するように喋り出す。


「や〜だってウチら、元クラスメイトなんよ。去年一年間」

「キョウ姉ね。沢木の姉御。サラちは別のクラスだったけどさ」

「ま〜いずれぶつかるとは思ってたけど〜」

「どっちもダチだしな〜ってカンジで複雑なオトメゴコロってゆ〜か」


 思案顔に腕組みしふんぞり返る2人。2人の考えてることも分からなくは無い。2人にとってキョウはサラと同じく友人である。その2人が対立するのを心苦しく思うのは自然なことである。


「知ってるよそんくらい。何? そんなんで誰かを悪者にしようとか思ってないしあたし」


「んま〜そうだけどさ……サラち側はなんとも思ってないだろうけど」

「キョウ姉の方が立つ瀬無いってか、退路断ってるカンジするじゃん。見え方的に。どっちが悪いとかそういう話じゃなくてさ?」


「あんたらねぇ……」


 と呆れた風にため息をつく。


「そりゃキョウちゃんが学校No.1女子の立場追いやられて周りから都落ちのレッテル貼られて腫れ物扱いされて可哀想っていうのも可哀想な状況になってることは確かだけどさぁ」


「わ……すごい旧友の前で全部言うんだデリカシーゼロどころじゃ無いじゃんもう、虚数?」

「この世の女の悪いところ全部煮詰めて真空保存したような女は言うこと違ぇや」


 2人の悪評は意に介さず続けるサラ。


「仕方ないじゃんね? この天才完璧美少女"あたし”が"降臨“しちゃったんだから。全部の元凶はこのあたし。大いなるかわいいには大いなる責任しっとが伴う、ってコトで。キョウちゃんがあたしにぶつけるジェラシーは全部受け止めるんだから、あんたらが気負う必要なんてどこにも無いワケ、あーゆーおっけい?」


「あ〜も〜……いいよ勝手にどうぞ」

「態度がデカいのか器がデカいのか頭が悪いのか分からんねもう」


 今度は2人の方が呆れるため息を吐いた。


「んーむしろあたし的には? 直接面と向かって嫌味言ってくれるだけ清々しいよね? 普通陰でコソコソ言うもんなのに。そーゆーとこ普通に好感持てるわ。キョウちゃん」


「ははは、敵に褒められてやんの、キョウ姉」

「仲良くやって欲しいんだけどね、ウチら的には」


「向こうがどんな出方してくるか分っかんないからなー。ま、大体の予想は着きそうなものだけど」


 そう言って、教室後方の窓際の席を見やる。


 いつもと同じ時間に、いつもと同じように、きっと明日もそこでそうしているように――


 サラはイヤホンを付けて予習に励むミズキを見た。


「……じゃ、そろそろ帰ろっかな、あたし」


「あれ、どっか行くん?」

「ミズキっちじゃね? おデートですか〜サラ姫?」


「くくくく。あたしはそーゆーことにしてもいーんだけどね?」


 鞄を手に取り、教室後方へ向かう。


 まだ気づかない。どれだけ近くにいってもサラがノートを凝視していることにミズキは気が付かないようだった。


 仕方ないのでサラは、それはそれは仕方がなかったので。ノートを見るミズキの視界に入るくらいにまで顔をぐぐぐっと近づける。


「んー?」


「………………っ!? えっ、あっ、えっ、さ、サラさん?」


「ささらじゃないです。サラです」


「あっ、えっ、あっ、ど……どうされました?」


「えっへっへっへ。一緒帰りましょいや。ミズち?」


 誘うのは2度目。いつも通りのキョドり方、いつも通りのからかい方。もう手慣れたものである。


 手慣れてはいるが……若干の疑問が浮かぶサラ。


 その毎回好感度リセットされてるような反応は、流石にいかがなもんかね? と、困った笑顔を浮かべるミズキに暗に問うた。

 

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