第九話
昼休憩、サラはミズキを校舎裏に呼び出していた。
「てかさーミズち、お昼一緒に食べん?」
「えっ!? えええっ!? サラさんとですか!?」
慌てふためくミズキをまあまあと落ち着かせる。流石のサラも無策でミズキを呼び出すようなことはしなかった。
「5限の数学の授業あんじゃん? あたし分かんないトコあんだよねー。でもお昼食べてたら時間無くなっちゃうからさー、食べながらでいいから教えてくんない?」
サラと一緒に弁当を囲むことを想像してか、ミズキがあははと困ったように笑う。しかし勉強を教えてもらうという体裁を取ったのが功を奏したか、しぶしぶうなずくミズキ。
「うん、いいよ。……でもなんで校舎裏なの? 教室じゃダメとか?」
「だってほら、教室だとさ――」
あたりを見回すサラ。つられてミズキも見回し、その顔を青くする。
「見られてしょーがないっしょ、ここだと」
「そ……そーですね……」
ミズキを連れて、逃げるように教室を後にする2人だった。
◯
校舎裏は中庭となっていた。手入れが行き届いておらず、草がぼうぼうに生えコンクリートが一部壊れてしまっている。そのため昼休憩でも人通りはまばら。目立つのが苦手なミズキと食べるならここしかない! とサラが学校中を探して見つけたスポットだった。
「よいしょっと、ま、座って座って」
錆びついててガタガタ揺れるベンチに腰を下ろす。
ベンチは2人座るにはやや狭く、2人で座ると服の裾が触れてしまう程の広さしかない。
それでいい。それも計画のウチ。
サラはおいでおいで、と手まねきでミズキを呼び込んだ。
「あ……大丈夫ですよ、俺、ここで」
と言って地べたに直接座り込むミズキだった。
「……むぅ」
「えっ……なんでそんな不満気……?」
「……別に?」
サラとしてはぜひ隣に座って欲しかったが、そこらへんの機微はミズキには備わっていないらしかった。
「じゃーん、見て見て、あたしお手製お弁当ー」
「あ……へぇ、すごいですね」
「淡白! 女子のお手製弁当見た割には反応が淡白だよミズち!」
「結構驚いたつもりだったんですけど……ってかあれですね。結構冷食多いですね」
「え゙?」
サラの眉間に皺が寄る。
確かに、サラのお手製弁当は近所のスーパーで買い漁った冷食の惣菜を詰め合わせたものである。
「ナニカナミズキクン? キミは冷食が手抜きだとでも言いたいのカネ?」
「いいい言ってない! 絶対に言ってない! 俺もそうだから便利だよねって言おうとしただけです!」
「だーっ! いいでしょ冷食! あたしがチンして綺麗に配置したんだからお手製弁当で何も間違ってないでしょ! ……ってミズちも弁当自分で作ってんの?」
「作ってますよ! 普通にサラさん偉いなって思いますから! だからそんなに怒らなくても……」
「へー、やるじゃん。うぃ」
と、一瞬で機嫌を直して肩をこづく。
偉いと言われるのがもう少し遅かったらもうちょっと不機嫌でいてやろうと思ったが、今日のところはこれくらいにしてやろうと溜飲を下げた。
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