ロアンナ

ロアンナは思う


全てが平等で公平な世界は素晴らしい


そんな世界になるのが


一番いいに決まっている、と



けれどロアンナは思う


本当の意味での平等など

きっと
この世界に

訪れることはないのだろう、と

だから冷めたふりをして


静かに遠くを見つめている

あの人は
苦労の多い人だから


可哀想な人だから


普通の人生を送れないから


だから仕方ないのよ


許してあげましょう


認めてあげましょう



そう言って擁護するママの目は


弱者を哀れみ蔑んでいる


その思考がすでに


本来の理想から大きくかけ離れ


偏っているということには


ちっとも気付いていない



ロアンナは考える


この星が誕生したその時から


平等など存在したことはない


この世に生まれる前から


各々の不公平は始まっていて


残念ながら人間とは


弱者を見下し強者を羨むように


組み込まれた生き物であるのだ、と

ロアンナは知っている


平等な世界の為に必要なのは


弱い立場で虐げられている者を


特別に扱うことではなく


個々を取り巻くもの全てを排除して


皆を等しく扱うことだ、と


そして
昨日まで踏み躙られていた者も


今まさに踏み躙られている者も


明日誰かを踏み躙る側に


簡単に成り代わるということも

ロアンナは憂う


平等や公平を履き違えた世の中に


新たな特別が一つまた一つと


生まれてゆくたび


そこから溢れた者が


今度はその特別を討つために


新たな弱者として

声を上げるのだろうか、と



認められた誰かの陰に


虐げられる何かが必ずあるとすれば


永遠に同じことの


繰り返しではないのか、と

夢はシャボン玉


期待は砂のお城


つまり理想など幻想


それが彼女の口癖


彼女に似た
白いタンポポが揺れる



それにふと目をやり
ロアンナは思う

私達がただの「普通」でいられる場所が


宇宙のどこかにないかしら、と

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