第廿週目

【無造作気取り 風にたなびく トレンチコート ベルトださ】


 冬は好きだ。確かに手足はひりひりと冷えていくのであまり活動する気にはならないけれど、その埋め合わせをするように人は夏よりもファッションの工夫を施すようになる。

 なかには羊のように、まるまると着込むだけの者もいる。冬毛のようにダウンでパンパンになっているタイプ。

 他方で、街々の雑踏には、それで防寒できているのかとかえって疑念すらも催すような、オシャレに特化した人もいる。

 いずれにせよ、不毛の土地のなかで人類は着飾り、他者よりも目立とうと古来よりしてきたに違いない。その生存本能こそが、男女の境なく冬服のレパートリーを膨大にしていったのだ。

 なかには戦時中に誕生したものもある。そのひとつが、トレンチコート。塹壕ざんごうという意味を持つ、トレンチ。雨天には軍服がドロドロになるので考案されたとか。それが今やコンクリートとビル群の中に着こまれるものである。

 だからこそベルトの結び方にも多種多様なものが開花していった。その方法と印象の差異は未だ人類には計り知れない。きっと誕生200周年の折にトレンチコート文化史学者によって定められるのではないだろうか。

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