42. 第一章エピローグ:たまには島の外にも出ないとね

「ん~!良く寝たぁ!」


 イベントダンジョンでの死闘から一夜明け、いんは寮の自室で目を覚ました。


「俯角先輩には感謝しないとね」


 ダイヤが眠った後、いんは彼をお姫様抱っこしながらダンジョンの外へ移動したのだが、俯角が露払いとなってくれたので他の人がガンガン攻めてくることは無かったのだ。

 ダイヤをダンジョン外の救護施設に預け、自分もそこで回復魔法をかけてもらい、それから自室に戻るまでの間も、俯角はついてきてくれてフォローしてくれた。

 俯角のフォローの元で次々と投げかけられる質問には出来るだけ答えたが、いんだってかなり疲れている。それを察した俯角が負担をかけないようにといんの行動が邪魔されないように周囲の生徒達をコントロールし、強引に引き留められることなく無事に寮の自室まで戻ってくることが出来たのだった。


「そんじゃお返しに沢山聞かせてもらうで~」

「きゃっ!」


 自室なのに話しかけられ、思わず掛布団をギュッっと掴んで驚いてしまう。


「別に抱かせろなんて言っとるわけちゃうで?」

「俯角先輩!?どうしてここに!?」


 ケラケラと楽しそうに笑うのは、昨日お世話になった俯角だった。

 どうして彼女がいんの部屋にいるのだろうか。


猪呂いろちゃん忘れちゃっとる?ウチも一緒に入って来たやん」

「あ……」


 部屋までついてこようとする女生徒達からいんを守るために俯角も入り、睡眠中に余計な訪問者が来ないように見張ってくれていたのだった。


「ごめんなさい!ここまでして貰ったのに私ったら……!」

「ええでええで気にせんといて。別に無償の善意でやっとるわけじゃないかんな」

「それは知ってますけど……」

「へぇ、知っとんの?」


 いんの答えに俯角の瞳が怪しく光った。

 これまでの胡散臭い感じが無くなったのは、少しだけ素を出したのか、演技をしているのか。


 謎のキツネ耳がピコピコ動いているから演技の可能性が高いか。


「考察系クラン『明石っくレールガン』。ダンジョンに関すること、特に何故ダンジョンが世界に出現したのかを考察するクランで、情報を得る為ならどんな手段をも厭わない。今回は私達に恩を着せて聞き出そうって魂胆ですよね?」


 今回は穏便に対応してくれているけれど、むしろ武力行使の方がいつもの彼女達らしいやり方だ。

 島の外のクランとのつながりもあり、人材も資金も豊富で、スキルポーションとの交換物品もその潤沢な人脈を使って用意した物だった。


「あっはっはっ!猪呂いろちゃんもクランについてちゃんと勉強しとるんやな。そういうの大事やで」

「お世話になったので出来る限りは協力しますよ」

「うんうん。サンキュな。でも入ってはくれんのやろ?」

「はい。ダイヤが入るなら入りますが、多分入らないと思いますので」

「せやな。あの子は他人の下につくタイプやないもんな」


 その評価は半分正しく、半分間違っている。


「必要ならダイヤも誰かの指示に従うと思いますよ。それで目的が達成できるなら自分からお願いする気もしますし」

「ほうほう。なるほどなぁ。それが奥様の感覚なんやね」

「お、奥様。えへへ……」

「ほんとにちょろいわ」

「ちょろくないです!」


 ダイヤとお似合いだとでも言えばなんでもポロポロしゃべってくれそうだ。


「別に私もダイヤも隠さないから、そういう揺さぶりは止めて下さいよ~」

「でもスピのことは隠してたやん」

「アレは私も詳しく聞いてないから分かってないですが、ダイヤのことだから多分誰かが悲しむと思って言わなかったんですよ。基本的にえっちだけど底抜けに優しい人ですから。えっちだけど」

「底抜けにえっちな人ならしゃーなしか」

「そっちじゃないですよ!?」

「あっはっはっ!」

 

 爆笑する俯角を見て溜息を吐いたいんは自分がまだ寝起きだったことを思い出した。


「ごめんなさい。着替えてきます」

「せやな。これから人前に出るんやからしっかり身だしなみ整えとくんやで」

「……はい」


 俯角だけではなく、島中のあらゆる人から質問攻めになる日々が続くだろう。

 あるいは様々な協力を依頼されるかもしれない。


 だがそれはダイヤが中心であって、ただのヴァルキュリアにすぎないいんは、彼と一緒に行動していたから何か気付いたことは無いか、くらいのことしか聞かれないだろう。


「(私が守ってあげなきゃ)」


 そう考えるとお化粧にも力が入ってしまうものだ。

 誰かに見られるからではなく、ダイヤに見られると思うと、普段はやらないことまで手を出して美しくあろうとしてしまう。

 少しでも綺麗になってダイヤに喜んで貰いたいと思ってしまう。


「乙女モードになってるとこ悪いんやが」

「きゃっ!」


 ダイヤとキャッキャウフフしている妄想に入りかけていたいんを俯角が背後から呼び止めた。

 このままだと長時間戻って来ない可能性もあったためナイス判断だろう。


「先に言っておかなきゃならんことがあるんや」

「はい。何でしょう」

猪呂いろちゃんにとっては辛いことかもしれんが、覚悟して聞いてや」

「え……怖いんですけど」


 俯角がわざとなのかシリアスっぽいトーンで話してくるから、より怖さが倍増だ。

 戦天使と立ち向かった時よりも嫌な予感がするのは気のせいだろうか。


 いんはもうほぼ終わっている化粧をパッと切り上げ、俯角がいる部屋に戻った。


「まず一つ」

「ということは複数あるんですね」

「せやな。三つある」

「三つも……」


 その全てがいんにとってショックなことだと言われると、聞くのに躊躇してしまいそうになる。しかし目を逸らそうにも恐らくはいずれ分かること。せっかく心の準備をさせてくれているのだからと、意を決して聞くことにした。


「んじゃ伝えるで。最初は猪呂いろちゃんの旦那のことなんやけど」

「ダイヤに何かあったんですか!?」

「旦那で誰か分かるんやな」

「教えてください!」

「う~ん、これはガチやな」


 からかいが通じないくらい真剣に聞き返して来るところに、重い愛を感じた俯角であった。


「そこまで悪いことや無いから安心してええで」

「そ、そうなんですか?」

「せや。島から消えただけや」

「はぁ……なんだぁ……ってええ!?!?消えた!?!?」

「いつの間にか救護所から居なくなってたって、あの子を目当てにしてた奴らが大騒ぎや」

「まさか誘拐されたんじゃ!」

「その線は薄いと思うで」

「どうしてですか?」

猪呂いろちゃんに伝言が残されてたからや」

「私に?」

「『ちょっと待ってて』だそうや」

「…………どういうことよ」


 心配しないで、とか僕は無事です、のような典型的なセリフならば誘拐犯による偽の書置きの可能性があるが、意味深なセリフを残しているところが妙にダイヤっぽかった。ゆえに自分からどこかに消えたのだろうと思われている。


「色々と調べた結果、島の外に出る彼の姿を見つけたんや。猪呂いろちゃん、心当たりある?」

「あったら飛び出して行ってますよ」

「せやな」


 いんに隠れて何かをやろうとしている気配がプンプンな書置きなため、彼女にはダイヤの行き先が分からないと最初から分かっていたのだろう。俯角はそれ以上この件について突っ込まなかった。


「あいつ何やってるのよ……」

「そんで書置きには続きがあるんや」

「え?」


 ダイヤが居なくなったのは前フリで、それこそが辛いことの本題だった。


「『ごめんね。インタビュー頑張って』だそうや」

「ダイヤあああああああああ!」


 ダイヤが居なくなったことで、生徒達の全ての矛先がいんに向かってくること間違いなし。

 分からないことだらけでも根掘り葉掘り何度も何度も群がるように質問され続けるだろう。


「あいつ逃げたの!?逃げたのよね!?絶対にぶん殴る!」


 面倒なことから逃げるために一旦島の外に出て身を隠し、ほとぼりが冷めるのを待つ。

 しかもいんを連れてかないことで彼女に島内の『熱』を集めてもらう。


 あまりにも最低なムーブで、百年の恋も覚めようものだ。


「あっはっはっ!離婚の危機やな」

「しないわよ!あいつは逃げないもん!でもなんでよー!」


 反射的に逃げただなんて言ってしまったが、ダイヤがそんな酷いことをするような人間でないことをいんはもう知っている。何か理由があるのではと察している。しかしこれから待ち受けることを考えると、それでも文句を言わざるを得ないのであった。


「怒ってるとこ悪いけど、次の話をするで」

「はい!」

「ウチに怒らんといてや」

「ご、ごめんなさい」

「素直なええ子やなぁ。あの子が惚れるのも分かるわ」

「ちょっ!!」


 流石にこの言葉にはいんも照れてしまったようで、激情がおさまり通常運転てれてれしてしまった。落ち着かせるための俯角の作戦だったのだ。


「次のは猪呂いろちゃんのお友達のことや」

「え?」

猪呂いろちゃんが寝ている間にここに来たんやが、心配してたから会ってあげるんやで」

「もちろん!」


 それはユウ達のことだろう。

 失くしもの探しから戻って来ないいんのことを心配し、捜索に向かうダイヤを送り出したと思ったら、一緒にイベントダンジョンに突入したなんて配信が始まったでは無いか。


 どれほど心配させてしまったのかと、いんは青褪める。


「行かなきゃ!」


 彼女達に会って謝らなければと部屋を飛び出そうとする。


「まぁ待ちい。続きを聞いておかな損するで」

「何よ!早くして!」

「彼女達もええ子達やなぁ。本当はダンジョンの出口で出迎えたかったそうやが、猪呂いろちゃんの負担にならないようにって体力が回復するまでは会わないように自重してたそうや」

「…………」


 そんなユウ達ですら、いんはこれまで友達だと信じ切れていなかった。

 彼女達がいんではなく、ヴァルキュリアを求めているのだという考えが頭から離れなかったからだ。短い付き合いでもそんな人達では無いと分かっていたにも関わらず、自分を友として本気で慕ってくれていると分かっていたにも関わらず、信じ切れなかった。


 そのことを一刻も早く謝りたかった。

 涙涙の再会を果たして心の内をぶつけ合いたかった。


 しかし。


「そんで彼女達がこうも言ってたんや。『あんなハーレムクソ野郎のどこが良いんだか』ってな」

「え?」

「『目を覚まさせてやる!』とも言ってたで」

「ああああああああ!」


 ここに来てようやくいんは思い至る。


 自分がダイヤにテレテレしていた姿が全部配信されていたことを。

 それを友達に見られてしまっていたことを。


 あまりの羞恥っぷりに瞬間沸騰してしゃがみこんでしまった。


「どんな顔して会えば良いのよおおおおおおおおおおおおお!」


 怒られようが、弄られようが、気を遣われようが、どれも恥ずかしい以外の何物でもない。


 見ず知らずの人に見られていることは覚悟できていた。

 しかし親しい人にも見られていることを失念していたいんの痛恨のミスである。


「ドンマイ猪呂いろちゃん。でもそれはマシな方やで」

「まだ何かあるのおおおお!?」

「これで最後や。ほな、これ見てみ?」

「ふぇ?」


 俯角が見せて来たのはスマDの画面だった。


「SNS?」

「せや」


 それは学園内での交流や情報共有目的で運営されているSNS。

 そこに投稿されているある文面を俯角はピックアップしていんに見せた。




音乱いんらん新入生の音乱いんらんシーン何度も見ちゃうわwww』




 そしてその下にはいんがダイヤに積極的にちゅちゅする切り抜き動画。


「いやああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 なんと『音乱いんらん』という言葉が『精霊使い』を抑えてトレンド一位となっており、それをネタにネット中が大盛り上がりになっていた。しかもダイヤの歴史的発見とセットで島外にまで拡散され、島内のローカルSNSだけではなく世界中でトレンドになっていたのだった。


「うわあああああん!恥ずかしくて生きていけないよおおおおお!」


 配信されているダンジョン内で堂々とちゅっちゅするという前代未聞の行為をしてしまった。

 世界中の玩具にしてくれと言っているようなものである。


「ドンマイやで!」


 羞恥に悶え苦しむいんにとって、そんな胡散臭い心のこもっていない慰めの言葉など、何ら効果が無いのであった。




ーーーーーーーー




 それから数日。


 連日のように羞恥攻撃を受け続けたいんは、死んだような心で毎日を生きていた。

 押し寄せて来た生徒達に何を答えたのか、もうはっきりと覚えていない。


 その日もまた、目覚めたにもかかわらず魂が抜けたかのようで起きる気力が湧かない。


 ベッドの上で体を起こしたままぼぉ~っと虚空を眺めていたら、突然スマDに一通の通知が届いた。


「(どうせまた嫌がらせか無駄な質問か何かでしょ)」


 そう思いながらも律儀にスマDを確認する。


「!?!?」


 その通知を確認したいんに生気が蘇り、大慌てで身だしなみを整えて部屋を飛び出した。


猪呂いろ、おはよ……あれ?」


 途中にユウが居たことにも気づかずに寮を飛び出し、全速力で島の入り口に向かって走り続ける。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ!」


 辿り着いたのはバス降り場の近く。

 そこにメッセージを送って来た人物がいた。


「ダイヤ!」


 何の説明も無く居なくなったダイヤ。


 好きな人に会えて嬉しい気持ちと、どうして居なくなったのかと文句を言いたい気持ちがごちゃまぜになり、感情が荒れ狂う。

 抱きしめたい気持ちと、ぶん殴りたい気持ちが重なって、愛しい人を前にどうして良いか体が動かない。


「(私はこんなになってるのにどうしてあんたはいつも通りなのよ!)」


 のほほんと人畜無害そうな笑顔を浮かべて佇むダイヤは、全く変わらない。

 優しく穏やかな雰囲気がいんのごちゃごちゃした心を穏やかにさせてくれる。

 

 少しだけ気持ちの整理が出来たいんは小さく息を吐いてダイヤに問いかけようとする。


「一体今まで何を……」


 しかしそこまで言いかけて止めてしまった。

 何故ならばダイヤが指に口をあてて『静かに』のポーズをしたから。


 どういうことかと不思議に思っていると、ダイヤはゆっくりと口にあてた手を開き、彼の右横を見るように促した。


「あ…………」


 一人の女性がベンチに座っていた。

 清楚な白いワンピース姿で、いんと同じくらいの年代の若い女性。


 彼女はゆっくりと立ち上がると、ダイヤと入れ替わるようにいんの前に立った。


「久しぶり、いん

「ど、どうして……?」

「あなたの恋人が連れて来てくれたの」

「!?」


 その瞬間、何故ダイヤが島を離れたのかを理解した。

 島の外で何をしていたのかを理解した。


 胸が熱い。

 全身が火照る。

 あまりにも強い感情が爆発してどうにかなってしまいそうだ。


「(ダイヤの馬鹿!こんなのもっともっと好きになっちゃうに決まってるじゃない!)」


 好き。

 好き。

 好き。


 その単語がグルグルと体中を巡ってしまう。


「本当に好きなんだね」


 恋する乙女と化したいんの様子を彼女は羨ましそうに見つめていた。


「うん。好き。大好き。好きすぎて困っちゃうくらい好きになっちゃったんだよ。良子ちゃん・・・・・


 ダイヤが何のために島の外に出たのか。


 それは厄介な質問責めから逃れるためではなかった。


 いんのため。

 いんが過去を乗り越えるために、彼女が会うべき人物を連れてくるため。


 自分のあらゆることをさておいて、いんのためだけを思って急ぎ行動してくれたのだ。

 これが嬉しくない訳が無いだろう。


 そして同時に思う。

 ここまでお膳立てされて、向き合わないなんてありえないと。


「良子ちゃん。聞いてくれる?」

「うん」

「私は良子ちゃんのことを友達だと思ってる。でも心のどこかで、良子ちゃんも私のことをヴァルキュリアとして利用しているだけじゃないかって思ってた。私自身のことは本当は興味ないんじゃないかって、もしかしたら他の人みたいに嫌っているかもしれないって怖がってたの」

「うん」


 突然の懺悔を聞いても良子は顔色一つ変えることは無い。

 事前にダイヤに何があったのかを聞いていたのだろう。


「気付いてあげられなくてごめんね」

「良子……」


 良子は優しい微笑みを浮かべたままゆっくりといんの目の前まで歩いて来た。




「だなんて言うと思った?」

「え?」




 そして右手を振り上げいんの頬に向けて思いっきり振り抜いた。


 パァン!


「っ!」


 かなり本気でぶったのだろう。

 あまりの痛みと叩かれた驚きでいんは頬を抑えて茫然としている。


「私がどれだけいんのことを好きだと思ってるのよ!ヴァルキュリアだかなんだか知らないけど、そんなのどうだって良いわよ!嫌いな訳ないじゃない!この馬鹿!」


 ほろりと、良子の瞳から涙が零れる。


「あ……ああ……ごめ……ごめんなさい……」


 彼女の姿を見ていんは理解した。

 許しでは無く怒りをぶつけられることで、どれだけ相手が自分のことを大切に想ってくれていたのかを。


「絶対許さない!絶対に許さないから!」


 そう言いながら、良子はぎゅっと強くいんを抱きしめた。


「だから許して貰えるように頑張ってよ!」

「うん……うん……ありがとう良子ちゃん……ありがとう……」


 いんが本当に欲していたのは、許しでは無く責めだった。

 親友を疑ってしまったことを心から恥じ、責めて欲しかった。


 だが優しいダイヤにはそれが出来ないし、それをするのは当事者の役目だと分かっていた。

 だからその役目を親友の良子に託し、ここに連れて来た。


 いんの望みを叶えるために。

 負い目のある相手からしっかりと怒られて責められ、罪を罪だと認めてもらい罰せられることで、ようやく前に進むことが出来る。


 そんなのは自己満足にすぎないと思う人もいるかもしれない。

 罪の意識を軽くしたいがための安易な贖罪にすぎず、本当の反省では無いと指摘する人もいるかもしれない。

  

 だがそれがどうしたというのだ。


いん、もっと一杯お話ししよう」

「うん、うん」

「何度も遊びに来るからね」

「うん、うん」

いんからも来てくれなきゃ嫌だよ」

「うん、うん!」


 誰もいんのことを嫌ってなどなく、当事者の彼女達がそれで良いと思っているのだ。

 いんが幸せであるならば、他人がどうこう言おうが関係ない。




 それほどまでにいんは愛されている。




 ただそれだけのことなのだから。


 心優しき少女は他者の言葉に惑わされ心を歪ませた。

 高潔と低俗との間に揺れ、あるべき姿を見失いかけていた。


 そんな少女を救ったのは、ハーレムを目指す一人の精霊使い。


 その少年は離れた所で少女が涙する姿を眺めながら思った。


「(実はご両親も来ているって知ったらどんな反応をするかな)」


 少年の優しさは留まるところを知らず、少女が更に少年に惹かれる未来が待っているのであった。




 第一章・完

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