大好きだった初恋妻の誰にも言えない背徳で裏切りな秘密。僕らはもう、あの頃には戻れない
中村 青
第1話 僕の大好きな妻を紹介します(甘々有り)
人生というのは、まさに山あり谷ありで、どん底だと思っていても歩み続けていれば日の出を見ることができるものだ。
かく言う僕自身も、幼少期に父の事業が失敗したのをきっかけに、家庭崩壊の危機に晒された時期があった。昼間はパートで夜は水商売を始めた母は体を壊して寝込み、父も絶望して塞ぎ込みがちになっていた。
だが、そんな父の会社の技術を認めて融資してくれた銀行に助けられて、僕らは九死に一生を得たのだ。
その後、幼馴染で初恋だった彼女、
妻と結婚して五年……息子も四歳になり、幸せな毎日を過ごしている。
———……★
「あら、
「パパ、おかえりー」
仕事を終えて帰宅すると、エプロンを身につけて食事を作る妻とリビングのテレビを見る息子、
「ただいま。今日の晩御飯は何?」
年齢よりも童顔な彼女は、大きな胸を揺らしながら自慢気にフライパンの中を見せてきた。
「今日は真人さんの大好物のチーズインハンバーグですよ。ジャガイモも素揚げしますから、楽しみに待っていてくださいね」
ほうれん草とベーコンのスープとサラダ。そしてジュージューと音を立てる芳ばしい香りの漂うハンバーグ。その場にいるだけで涎が滝のように垂れ流れそうだ。
「スゴく美味しそうだね。莉里那、いつも美味しいご飯をありがとう」
「とんでもないわ。これも全部、真人さんが働いてくれるおかげですから。ありがとうは私達のセリフよ」
よくできた妻、誰もが口にする彼女への賞賛の言葉だった。僕自身にとっても自慢の妻だし、自分のことのように誇らしい納得の言葉である。
元々幼馴染として幼少期の頃から顔見知りだったのだが、彼女の器量の良さは劣ることなく、むしろ年々磨きが掛かり素敵な女性へと成っていた。
そんな可愛くて素敵な妻が、自分なんかと結婚してくれたこと自体が夢のようで信じられないと感謝する日々だった。
この先、何があっても莉里那を信じて愛し続けよう。
この時の僕は、本気で誓っていた。
何も知らずに馬鹿みたいに、妻のことを信じていたのだ。
時間は深夜0時まわった頃。
髪を乾かし終え、ベッドに入って眠りにつこうとしている莉里那とスマホでゲームをしていた僕。
彼女の柔らかくフワフワになった髪からカモミールの香りが優しく伝わって、無意識に僕を誘惑してくる。
シアバターの保湿クリームでふっくらした肌。そして身体のラインがハッキリとした魅惑的なルームウェア。彼女の身体が完全にベッドに沈む前に、包み込むように抱き締めて首筋に唇を押し当てた。
ビクッと震える身体——……。
汗ばみ、吸い付く肌に欲情は歯止めを知らず、指が蠢く。
「真人さん、待って」
最後まで言葉を紡がせる前に唇を塞ぎ、そのまま舌を咥内に侵して、柔らかさを味わった。
艶やかな声も、荒い鼻息も、口角から溢れる涎も全部、愛おしい。
この獣のような原始的な求愛行動ですら彼女となら全部、丸ごとこなしたいと願ってしまう。
一つ一つのボタンを外して、汗ばんだ肌を鷲掴んだ。指先で弄んで彼女の魅力に溺れていく。
「んン……っ、真人さん」
「莉里那、いいかな?」
何度も、何十回も、何年も求め合っても飽きることなく終わりが見えない。最初は異常すぎる性欲に絶望したほどだったが、彼女だけにしか盛らなかった。
他の女性には興味も感じなかった。その代わり莉里那だけを、週に何度も求めてしまう。
「もちろんよ、私の中を真人さんでいっぱいにして」
潤んだ瞳で眉を下げて、何とも言えない表情で
内腿に手を添え、そのままこじ開けて濡れた指でなぞった。
くぷ……っと沈む。どこまでも果てしなく沈んでいく。
それが極楽なのか地獄なのか、そのときの僕は気付かなかった。
———……★
何度果てただろう?
大の字に両手を広げて天井を仰いで、僕らは全力で駆け抜けた。
「莉里那……、大丈夫?」
「ん……っ、うん、大丈夫。真人さん、今日も素敵でした」
トロンと涙で潤んだ瞳が僕を映し出す。
その長い睫毛に留まった涙すら愛しい。
そんな儚い雫を指で掬い上げ、汗だくのまま体温を分かち合った。熱い、スゴく熱い。
いっそのこと、このまま溶け合って一つになってしまいたいくらい彼女のことを愛していた。
「ごめん、今日も気持ちが抑えきれなくて。莉里那のことが好き過ぎるんだ」
冷静に考えたら好きすぎるってなんだって思うけど、そんな気持ち悪い僕の気持ちも全面的に肯定して受け止めてくれる優しい彼女に、今日も僕は甘えて委ねてしまっていた。
「私も……。真人さんと陸のいない人生なんて考えられない。これから先もずっと、私のそばにいて下さい……私のことを見捨てないで」
そして後日、僕はその言葉の意味を、思いもしない形で思い知ることとなる。
———……★
次回『僕の知らない妻の顔。そして、僕の脳は壊れてしまう』
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