雲の向こう


「雲の向こうは、いつも青空」


 あの日、君は確かにそう言ったね。


「何それ」

「誰かの名言! 私これ好きなんだー」

「ふーん」

「何だよぅ、気のない返事!」


 だって、雲の向こうになんて本当に興味なかったんだ。


 見上げた空は、分厚い雲に覆われて灰色だ。

 あぁ、君のいる場所は今日も青空なんだね。


 瞼を閉じれば鮮やかな青がそこに浮かぶ。

 頬を伝う雫は冷たかった。

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