第157話スライムの特性
「やった・・・?」
ちょっとフラグかな?と思いつつも、頭と心臓急所二つを貫き、切断したのだ。
流石に倒しただろうと思っての発言だが、無事回収される。
急に腕が持ち上がったかと思うと、こちら目掛けて振り下ろしてくる。
「うおわぁぁ!?
まだ生きてるねー」
一応二人とも警戒はしていたので、当たることはなく、後方へと下がり攻撃を回避する。
オークの首の断面や心臓の部分はスライム状の物体で覆われており、吹き飛ばされた首を持ち上げて首の上へと乗っけると、スライム状の物体が接合し、頭部がくっつく。
「え、完全回復?」
「流石に臓器の修復はできないかなー。
だから、心臓は失われたと思って大丈夫―。
根拠としてはこういう魔物の再生能力って破損した周りの組織を分裂させて修復するんだけど、今回は心臓まるごと失っちゃっているからねー。
やれるとしても戦闘中に回復されることはないかな」
再生する際には設計図のようなものが必要であり、失った部位の周りからコピー複製して補って再生させるわけだが、今回のように心臓がまるごと無くなった場合、心臓を構成していた一部、つまりコピー元が存在しないのだ。
厳密には遺伝子情報には記載されているので、そこから情報を持ってくれば良いのだろうが、そのままコピーするのと、加工したうえで複製というより新しく生み出すでは難易度が大きく異なるのだろう。
「となると、頭はくっついた?
というか、なぜ考える脳と分離しているのに、動けた・・・?
それに心臓もないから、全身にエネルギーを送る術もないはず」
2人は攻撃を再開しつつ、状況について整理を続ける。
相変わらず、羽からは風の刃が飛んでくるし、腕から繰り出される斧や、爪の攻撃はかなり重たい。
ウィリィンとフェアで基本半身ずつを担当し、お互いの危ない場面はサポートを入れるというのを繰り返しながら攻防を繰り返す。
ただ、オークとしての再生力はかなり高く、少しの傷ではすぐに治ってしまうし、切り飛ばしても肉片の内側からスライム状の物体が染み出てきて元の部位へと戻ろうとする。
失った部位を再度吸収し直すことができるため、再生のコストを更に下げることに成功している。
「いや、完全にくっついたわけではないはず。
切断した際に首の部分は焼いたからねー。
ま、切れ味を上げるために焼いただけだから、完全に全部が焼けているわけではないけど。
完全に繋げるためには一度変質してしまった部分を取り除いたうえで、お互いを繋ぎ合わせないといけないはず。
だけど、それをしている様子はない。
となると、変質した部分はそのままに繋げられるところを無理やり繋いで、残りはスライムで誤魔化しているだけだと思うよー。
だから、元通りほど強力にくっついているわけではない。
あと、なぜ脳がなくても動いたかだけど、答えはオークの体内の魔力の流れを良く見れば分かるよー」
ウィリィンはフェアに言われてオークの体内に対して意識を集中させると、オークの身体の中央で大きく鼓動を繰り返しているものが見つかる。
「スライムの核みたいな物体・・・?
そうか、スライムとして特性を利用して身体を動かしているのか」
オークの身体全体にはスライムとしての特性をもった肉体が広がっている。
そしてスライムは頭、脳といった部位は存在せず、その代わりに核が動力源兼、脳の役割を果たしていると考えることができるだろう。
ただ、流石に脳と核の二つ体制の方が動きのキレは良いのだろう。
時間が経つにつれて切断された神経が通るようになってきたのか、動きが良くなってきている。
心臓も核との2つ体勢だったわけ全身へとエネルギーを送る能力は半減しているように思われるが、核の部分が激しく脈動を行っている。
命を削るような運用をすることで出力をカバーしており、持久戦になれば分からないが、この戦いの最中にパワーダウンすることはないと思われる。
「だから、核となってる場所を再度破壊すれば今度こそ勝ちだね」
「なるほど」
目標が定まったところでオークへと向き直る。
幸いなことにスライムを3体吸収したものの、核の数は3つにはなっておらず、1つのままであるため、1度攻撃が決まれば次こそ倒すことができるだろう。
と弱点である核の部分を凝視しすぎたせいか、オークもこちらの狙いに気付いたようで、
なんと背を向けて逃走を開始した。
「え、アイツ逃げた!?」
「でもこの先は行き止まりだけどねー?」
そう、下がったところであるのは宝箱を隠すためだけにある曲がり角だけであり、2人から逃げることができるような場所は存在しない。
キメラオークはある程度下がった場所で壁を押し込むとオークと二人の間の壁が開き、中から普通のオークが3体ほど現れる。
そしてオークの内2体に命令を下すと二人の前へと立ち塞がる。
「いやー、露骨な時間稼ぎだねー」
「1体残したのにはどんな意味が?
取り敢えず、さっさと倒さないと」
フェアはタイミングを合わせて閃光を決めると視界を奪われ怯んでいる隙にフェアはワイヤーで首を跳ね飛ばし、ウィリィンは金棒で頭を破壊する。
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