第143話ゴブリン

「ゴブリンだねー。

ウィリィン、戦ってみよー」


フェアがウィリィンへと道を開けて、戦うように促す。


「わ、分かった」


ギギギギ


ゴブリンは手に持っている短刀を構えながら嘲笑うようにこちらの方を見てくる。

そして、こちらに向かって走り出したかと思うと、途中で盛大にコケた。


「ん?」


転んだのとほぼ同時に何かがはじき出される音が聞こえ、暗がりからウィリィンの頭目掛けて矢が飛んでくるが、ウィリィンはそれをキャッチして奥で矢を放ってきたもう一体のゴブリンに対して投げ返す。


ギギ!?


奥にいたゴブリンは予想外の反撃を受けて、そのまま消滅し、囮になったものの、全く成果をあげれずに仲間が散っていったことに動揺し、動けなくなっているゴブリンも流れるように金棒を取り出し、そのまま潰した。


「おー、引っかからなかったねー」


「いや、弓の音が聞こえてなかったら危なかったかも。

あんだけこっちを嘲笑うような笑いをしておきながら転ぶから面白かったけど、流石に都合が良すぎて警戒できたのも良かったかな」


「こんな感じで今のところはそんなに強くないけど、ちょっとした奇襲は沢山やってくるから気を付けてねー」


「うん、わかった。

でも、何か仕掛けてくるって分かっていると頑張って演技してるんだなって感じがしてちょっと気まずいかも」


「そんな発言して大丈夫かなー?

これで引っかかったらとても恥ずかしいよー?」


フェアはニヤッと笑いながらウィリィンに忠告を促す。


「勿論、攻撃はなるべく喰らいたくないから、そうならないように注意する」


その後もゴブリンとの攻防は続く。

曲がり角で待ち伏せしていて、奇襲を仕掛けようとしてきたり、


「まあ、死角からの攻撃はオーソドックスだよね」


死角が大きく、敵が潜みやすいと感じた時は魔力探知をして、進行方向に何かいないか調べてから行動しているので、わざと知らないふりをして近づき、返り討ちにした。


「ここら辺のゴブリン程度なら気付かないけど、もっと強い魔物なら魔力探知されたことを感じ取れるようになるからねー」


「うん、なるべくバレにくいようにする」


まあ、ウィリィンも他人の魔力が自分の身体に触れていれば濃度によるが気付くことができる。

空気中の魔力に紛れるように広げることで、バレにくくなるのだが、ウィリィンは熟達までは至っていない。


遠くからダンジョンのトラップをいい感じのタイミングで起動させてきたり、


「おおー!?びっくりしたー」


落とし穴が開いたが咄嗟にシールドで足場を作り、事なきを得た。

なお、落とし穴の下は木のとげが沢山あった。


「おー、良く落ちなかったね」


「雪山とかでの経験が生きたかな。

あと、アスレチック。

急に足場がなくなることって結構あるから、咄嗟に足元にシールドを出す動きがかなり染みついてる。

それで、トラップの類は結構気を付けながら見てたし、体重をかけた際の動きについてもしっかり見てたつもりだったんだけど」


「うーん、感圧式じゃないのかもねー。

そうなると、魔力で検知してたのかなー?

でも、それだと魔力の痕跡が残るはず、それにそれならウィリィンが気付くよねー。

ああ、ウィリィンあそこに答えがいるよ」


フェアが指さす方へと視線を向けると壁に向かって何やらスイッチみたいなものを押し込んでいるゴブリンが眼に入る。

こちらに気付かれたことを察したのか、奥の方へと去って行ってしまったが。


「なるほど、遠隔で開閉するタイプ。

それなら、人の検知と落とし穴を分離できるから、隠密性が増すのか。

現に踏んだだけじゃ分からなかったし」


「おー、勉強になるー」


最初から倒れているゴブリンがいたり、


「いや、ダンジョン内の魔物は死んだら魔力に戻るから、確実に不自然なんだけど、

どうせこれも」


また矢が飛んできたので

ウィリィンは慌てずキャッチして投げ返す。

それに合わせて倒れていたゴブリンが襲い掛かってくるが、ウィリィンは金棒を一振りして仕留める。


「そうだねー、倒れているゴブリンに目を向けすぎると矢で射抜かれちゃう感じー。

そういえばさっきから矢はなるべく投げ返しているけど理由とかってあるのー?

シールドで弾いた方が確実じゃない?」


「魔力の節約と、反射神経を鍛えてる」


「おおー。

いいね、確かにガードするだけじゃ勿体ないかも」


そして、更に進んでいくと、新たな魔物が姿を現し始めた。


「ん?なんか水が動いてる?

っ!?」


液体状の物体が溜めるような動作をしたかと思うと何か粘性の液体をこちらに向かって発射してきた。

ウィリィンは少々慌てながらもシールドで液体を受け止め、距離を取る。


「スライムだねー。

あんな感じに自身の身体の一部を飛ばしてくるから注意―。

ちなみに酸で出来ているので当たると溶けるよー」


「なるほど、取り敢えず触れない方がいいってことか」


取り敢えず弾いたスライムに対して効きそうな電撃を流して倒す。


「うーん、一体倒すたびに魔法を使って倒すのはコスパ悪そう・・・」

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