第15話お披露目1

(我々は当主ゆえ、子供か産まれてから3ヶ月後にその地に住むものの前で将来有望な我が子を知らしめる必要があるのよ。


まあ、お主は基本その場にいるだけだ。気負わんでよい)




(わ、分かりました)




取り敢えずよくわからないが参加するだけとのことなので魔法の演習をしつつ、時間を潰す。




その後、ルリィウィンに連れられて、外へと向かった。


外を出ると大きな階段があり、階段の下が広場になっていて、そこには数百人ぐらいの人が集まっていた。


ルリィウィン達はその人達を見下ろしている感じになる。


ルリィウィン達の姿が見えると人々は歓声を上げて祝福の言葉を投げかけていた。




(そういえば、アウィリィママは?)




(今回は私の領土のお披露目ゆえ、少し後ろの方におるよ)




(こっちよ)




声がする方に顔を向けると、アウィリィの姿があった。




(これはあんたらが主役だから、私の出番は無いわ。頑張りなさい)




そうこうしているうちにルリィウィンが観衆の前に出て、演説を行う体制を取る。


すると先程までの歓声がピタッと止み、彼女は話始めた。




「皆のもの、我が子のお披露目に参加してくれて嬉しく思うぞ、此度、女子が生まれた。


親バカかもしれぬが既に強さの片鱗を見せつつあるゆえ皆で可愛がってくれると嬉しい。」




ウィリィンはまだうまく喋ることはできないものの、既に言語を理解し、喋っている内容が分かるようになっていた。


その時、ルリィウィンの声が脳内に語りかけてくる。




(ああ、そういえば伝え忘れてた。この演説が終わると観衆から祝福を貰うことになるのだが)




「.......」




演説を続けながらも話しかけてくることに驚きつつも声に意識を傾ける。するとアウィリィの声も脳内に響く。




(ちょっと、あんたあれ伝えてないの?)




何か、とても慌てた様子、とても嫌な予感がする。




(私がお主を真上に投げると同時にお主に向かって皆がナイフを一斉に投げてくるゆえ、気をつけてな、ちなみに沢山刺さり、殺せるほど良い祝福とされる)




(え、ちょ!?)




「我が子ウィリィンに祝福を」




状況を飲み込むよりも早くルリィウィンは演説を終え、ウィリィンを真上に放り投げた。


その直後、正面から沢山のナイフが迫ってくる。


バリアや石などを展開しつつ、自身に対する当たり具合で3段階にわけ、


当たらなそうなのは無視、少し高い軌道をずらせば当たらないものをまとめて風を起こして逸らし、身体の中心を捉えているものはバリア、石を用いて弾いた。




(ふう、くそ、焦った、でもそんなに速くなかったから数は多かったけどなんとかなったなっ!?)




先程とは比べ物にならない速度でナイフがこちらに飛んできて頬すれすれに飛んでいく。


観衆の方に目を向けると、先程までの微笑ましい感じとは打って変わって獰猛な肉食獣のような雰囲気を纏っている。




「おお、流石は領主様の子だ」




「既に魔法を使いこなされるとは」




「祝福を、祝福を」




(ひっ!?)




魔力こそ込められていないものの先程同様とんでもない速度でナイフが迫る。




(クソが、痛いのは嫌なんだよっ)




自身の前方に大きな水球をつくり、ナイフの速度を減速させる。


先程やらなかったのは観衆からの見え方も意識していて、できればよくわからないが当たらなかった感を出し、実力を隠したかったのだが、そうも言ってられないので全力で対応する。


ナイフが水球に突っ込む度に水面を大きく打ち、制御にかなりの力を持っていかれる。


ただ、水中を進むことでかなり勢いを落とすことに成功しており、身体に貼ったバリアで弾くことができている。




すると、上空でカキーンという音がし、気づくと肩にナイフが突き刺さっていた。




(いってぇぇぇぇ、上からだと!?)




見上げると空中でナイフ同士をぶつけて軌道を変え、正面の水球をかいくぐって当てようとしてきていた。


成功率は高くないものの、何本か同様にこちらに向かってくる。




(クソが、でも弾いた分勢いはある程度落ちるっ石で防げるっ)




ナイフを石で弾いて当てないようにして、ついに下で待ち構えてたルリィウィンにキャッチされる。するとナイフはもう飛んでこなくなり、一息つくことができた。




ルリィウィンはウィリィンを高々と掲げると観衆は大喝采で肩にナイフが刺さり、ジワジワと血を流し続けるウィリィンを祝福した。


なお、ウィリィンは癒しの炎を使って痛みを誤魔化しつつ




(抜いちゃダメですか?結構痛いんですけど)




(ダメだ、もう少し待て、これ以上目立ちたいならやってもいいぞ?)




(いや、ルリィウィンママがやってくれれば)




(ダメだ、皆の前でナイフを抜いて治療するのはこの行事的に縁起が悪い、ナイフを沢山刺して、屈強な子へ育つようにという催しだからな)




と、ルリィウィンに交渉して却下されていた。


しばらくして部屋の中に戻ると、途中で合流したアウィリィがナイフを素早く抜きながら治療してくれ、痛みも綺麗さっぱり消え去った。

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