勉強も運動もそこそこな俺が、異世界で片想い中の女の子にスキルレベル上げに協力させられる話
一般通過ゲームファン
まえがき 作品投稿に至るまで
「あ゛ー、暇だぁー……。」
ある平日の昼下がり、その日の講義が全て休講になり、俺は家で暇を持て余していた。
パ◯ドラはランク上げ周回で案の定唯一安定しない一桁超根性を引いてやられ、スタミナ切れ。ア◯アスも時間帯の関係で日本部屋は過疎気味だ。かといってチーターとその他の言語設定にせずに登録されていない言語を英語部屋設定で使っているような奴らが渦巻くアジア鯖の英語部屋に飛び込んでもちっとも楽しくない。
S○○tchも修理に出してるし、本格的に詰んでいる。
課題も一通り済ませているし、溜まっているアニメの録画でも消化して時間を溶かそうと思ったその時、ふと一冊のノートが目に飛び込んできた。
それは高校時代に、自分と同じ作者の小説が好きだという同級生と、「一緒に皆をギャフンと言わせるような小説を書いてやろうぜ!」と意気投合して制作した、オリジナル合作小説の設定資料ノートだった。
「……懐かしいなぁ、これ。」
俺はノートを手に取り、ページをめくる。そうそう、こんな感じで王道の異世界転生ものを書いてたなぁ……。
(あれ? そう言えばアイツ、この曜日は全休だって言ってたような……?)
『いやー、まいったまいった。バイト先が臨時休業になっちゃってさ、ちょうど暇すぎて死にそうなところだったよ……。』
「そりゃ災難だったな。」
アイツとの個人チャットを開いて、都合がよかったら通話に来てほしいと書き込んだところ、ものの5秒ほどで飛んで来たのだから度肝を抜かれたものだ。一人暮らしだからバイトで忙しいものだと思っていた。とはいえ臨時休業となると、1日で済まないようでは懐へのダメージは大きいだろう。
「そういやお前、バイトっつうけど何やってんの?」
『ミリショ! 前々からモデルガン好きだったし、何よりあんなの読んだらやりたくてたまらなくてさぁ!』
「あーね。この前出た新作のテーマ、サバゲーだったもんな。でも臨時休業って、何があったんだ?」
『うちで主に取り扱ってるモデルガンのメーカーが界隈の問題に巻き込まれちゃって……そっちの熱りが冷めるまでは店を閉めるってさ。その間別のバイトでもしようかなぁ……。つうか一通、暇だから通話に来て欲しいって話だったけど、何でカメラONなんだ? お前まだ酒飲めねえだろ?』
おっと危ない。久しぶりに話したから積もる話が弾んで本題を忘れるところだった。
「ああ、さっきやることなくて暇してたら、偶然こいつが出てきてな。」
そう言って俺は例のノートを映した。
『あ! それって"
通称剣高こと、"剣と魔法と高嶺のあの子"。高校時代に、今通話をしている元同級生と共に書き上げた合作異世界ファンタジーだ。
『本当に楽しかったよな、"剣高"書くの! あ、お互いに暇してるし、久しぶりに"剣高"の話でもしようってことか!? 待ってろ、今俺の持ってる原本ノートも探してくる!』
「ああいや、そうじゃなくて! まあ、原本ノートもあった方がいいかもしれないんだけど、とにかく、まずは俺の話を聞いてくれ!」
気持ちが昂って原本を探しに行こうとした友人を何とか呼び止めて、俺は真剣な顔で画面の先の友人にある「お願い」をする。
「頼む! "剣高"のリニューアル版を、ネット上に投稿させてくれ!」
『なるほど、今一通は、KADOKAWAが運営しているそのカクヨムってサイトで小説を出していて、今日設定資料を見つけて、そこに"剣高"を投稿したいと思って、俺の都合が合うなら通話で許可を取ろうと思った。んでもって、身バレ防止のために、アレンジを加える予定だと。そういうことだよね?』
「ああ。」
『"剣高"に日の目を浴びせさせるかぁ……』
何やら、感触の悪そうな反応だった。
「ダメか?」
『いや、別にダメなわけじゃないんだけど……自信がない……って言うのかな? いくらアレンジを加えるとはいえ、競合作品が星の数ほどあるジャンルで、"剣高"みたいな王道を貫いただけみたいな作品が、受け入れてもらえるのか心配で……。』
「まあ、そうだよな。実際俺も、そこが大きな壁だと思う。だからこそのアレンジなんだ。」
『と、言うと?』
俺はノートの余ったページに書いたアレンジ案を友人に見せる。
「全員のチートスキルに、スキルレベルと、レベル上げのための活動を追加する。そして、そのレベル上げのための活動で、----!」
『それ、結構全体の流れ変わらない?』
「ああ、だと思う。けど、行けそうだろ?」
彼はしばらく考え込んでいたが、最終的に首を縦に振った。
『わかった。それで確実にウケるって確信はできないけど、最低限やっていけるだけの力はあると思う。それに俺は設定作りに少し手を貸してたくらいで、"剣高"の物語そのものは、お前の私物と言っても差し支えないし、俺が止めるようなことは場違いだ……。できる限りをやって来い、一通。もし行き詰まったら言ってくれ。俺もできる限りで手助けする。』
「ありがとな。そん時が来たら、頼りにさせてもらうぜ。」
かつて一緒に"剣高"を書き上げた彼が力を貸してくれると言うのだから、これほど頼もしいことはない。
『あ、それと、まずありえないとは思うけど、もし書籍化とかアニメ化とかいう話が出てきても、全然俺なんか通さなくていいからな。その作品は、俺とお前で書き上げた"剣高"を、お前が、お前の力で昇華させた、お前の作品なんだから。じゃあまたな。今度は、お互い酒が飲めるようになったら話そうぜ。』
その一言を残して、彼は通話を切った。
(ピロン)
「ん?」
-追伸 今度、お前のとこに原本パソコンに書き写したの印刷して郵送しとく
「ハッ、さてはこいつ、本格的に俺に進退丸投げする気満々だな?」
こうして、俺はこの作品を投稿するに至ったのだった。
(※一部脚色を施しております。)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます