Another Story

そらと

第1話

私には、憎らしくも可愛い姉がいる。


何でも言われるがままな自分に腹を立ててみるが、

所詮、無駄な事。

いつも好かれようとしてしまう自分がいる。

単純に、私は姉に憧れているのだ。


彼女には人を惹きつける何かが備わっている。


誰にも言っていないが、姉の彼氏の煌太くんは、

私の初恋の人だ。



「煌太くんと付き合う事になったの♡」


目をキラキラさせて、そう報告された時には

目眩さえ覚えたが、そうなるべくしてなったように思えた。


煌太くんは、麗しいメガネ男子で、彼を好きになる女子は数知れずいた。

(いや、これは恐らく現在も進行中であるだろう。)


姉には、フワフワと女子から女子へ飛び回っているかのように見せているが、其の実、きっぱりとお断りしている。

そればかりか誰からも嫌われず、彼女達を完璧なまでに自分のファンに仕立て上げる魅力(魔力か?)があるのだ。

(これは折を見て彼女達から証言をとっているので紛れもない事実だ。)


煌太くんを知ろうと、彼の部屋の本棚を確かめに行った事がある。

すると、ここは本屋さんか?と思える程、多岐にわたる分野の本があった。


この知識が彼を作っている。

リスペクトしかない。

(因みに、幼馴染という立場を利用し何度も訪れ、背表紙を確認、大量に同じ本を購入済だ。)



そんな彼から、

「ウェブショウセツ書いているんだ」と聞かされた。

「ウェブショウセツ?」

「WEBで音楽配信とかあるでしょ。それの小説版みたいな感じ。」

「あぁ、小説のコミケみたいな…」

(何とか同じフィールドにいるフリをしたが、思い起こすと″自主″しか合っていないような…)


「これ、カクヨミって言うんだ。」

「自分で書いた小説を読んでもらえるんだよ。」

「面白いって思ったら″いいね!″みたいにして、知らせる事も出来るんだ。」

「へー。」

(ペンネーム見えないっっ。)



あれから煌太くんの小説を読み、推したいと密かに探りを入れている。

これが今の最重要課題ミッションだ。


そんな行動を予測、百も承知な彼は、なかなか辿りつけない私にヒントを与えつつ、確実に面白がっているようだ。

癪に障るが、そんな彼が私を作っているのかもしれない。

(ちょっと嬉しい。)

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