第118話 おっさん、お腹が1番

バタン


とドアが閉まるやいなや、俺たちはタガが外れたかのようにヨガした。


抑えなど効かなかった。


1回動画1本文じゃ飽き足らず、すぐ2回戦2本目の動画に突入した。


なぜかはわからない。


ちょうど俺も女神もヨガ欲が高まっていたのだろう。


2回戦が終わる頃、俺たちは汗だくで、呼吸も荒かったが、とても充実した気持ちで満たされていた。


ぶっちゃけふざけてやりすぎた感はあるが、俺は『ヨガで勝つ』ために(これがすでにふざけてるんだが)、女神は『とある目標』のために、ちゃんと真面目に取り組んだのだから許してほしい。


2人で息を整えながらスポドリ(ゼロカロリー)を飲んでいると女神から質問が来た。


「でもほんとになんで急に『来ちゃった』んですか?」


「え?ヨガしに。

あと女神に会いに」


「そっ、そういうのはいいです」


だがこうかはばつぐんだ。あと別に嘘じゃないしな。


「でも明日すぐにヨガの日ですよ?」


「そうなんだけどなー」


俺はボクシング会見の経緯やらを女神に説明した。


「そうなんですね。ではしっかりヨガの素晴らしさを教えてあげてください!」


あんまりふざけないであげてくださいくらい言われるかと思ったが、女神もまあまあ憤っている。


すっかりヨガ信者になっていたようだ。


俺もヨガ好きになってるけどさ。


主に女神がやってるのを観るのが、だが。


やる方もちゃんと好きだ。


ただトレーニングに取り入れるのと違って、試合にヨガを取り入れるのはハードルが高い。


まさかダノレシムさんスタイルで構えるわけにもいかない。


別にそれでも勝てそうだし、そんな奴に負けたら恥ずかしいなんてもんじゃないだろうが俺だって恥ずかしい。


共倒れしてやるほどじゃない。


まあ、試合前に5日間しっかりヨガをやってたことを言うくらいだろうな。


「ってことだから明後日(木曜日)も来るからな」


「はい、準備して待ってますね。

といっても身一つで出来ると思うので準備も何もないですが」


いや、あなたは着るものを考えておくべきじゃなかろうか。


そう、まだ女神は自分がスパッツタンクトップスタイルであることに気づいていないのだ。


俺は別にスパッツにタンクトップスタイルでやってもらっても全然構わないというか、むしろその方がいいんだが。


いつも(月水金)はちゃんとゆったりゆったりティーシャツとスカートライクなハーフパンツ着用だからな。


急な俺の『来ちゃった』やヨガに熱中してたことで完全に意識の外に行ったのだろう。


水分補給を終えたところで、女神がタオルを取ってきてくれた。


「ありがとう」


タオルを受け取り汗を拭く。


女神も顔、首すじと拭いていき、胸・・・は上の方にぽんぽんとタオルを当てるくらい。


さすがに一番汗をかいてそうな場所はここでは拭かないらしい。


そしてお腹もタオルを当てて拭き拭き。


なんかお腹が1番ドキドキするな。


とここで女神に違和感。


そう、お腹を拭けるはずがないのだ。


ティーシャツを着ていればの話だが。


おっと女神の視線を感じるぞ、俺の視線は女神のお腹に注がれているからな。


視線を上げると・・・うん、目が合うよね。


そして俺がどこを見ていたのかもバレてるね。


もうお腹はタオルでしっかりガードされている。


若干隠しきれていないがそれもいいよね。


「・・・気付いてました?」


「まあ割と最初から?最初にドア開けてのぞき込んだ時に」


「いちばん最初じゃないですかっ!?」


割と最初にって言ったじゃん。


『割と最初』に『一番最初』は含まれないですか。そうですか。


「いや、だいぶ引き締まってきたみたいだから、その自信の表れかなって思って。

それに指摘するってことは『見るに堪えないから隠せ』って捉えられかねないだろ?

そんなの嫌だし、むしろ見たいんだから俺は」


静観するしか選択肢がないんだよな。


それとも「お腹引き締まってきたじゃん」くらい言えばよかっただろうか。


「見たっ!?なっ・・・なっ・・・!」


口をパクパクさせる女神。


「しっ、失礼しますっ!」


律儀にそう告げてから、走って出口へ向かうのかと思ったら、バックで急ぎ目だが歩いて出口の方へ向かう。


後ろ姿とは言え、走ったらセクシーだろうしな。


結構残念だがしょうがない。


まあ動画2本分のヨガに加えて、お出迎えから休憩まででいっぱい堪能したからな。


やっぱりヨガいいよ、ヨガ。

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