なにかそういうものなんだろう、たぶん ~文披31題

三葉さけ

Day1 夕涼み

 汗ばんだ額をサワリと風が撫でた。ベランダに置きっぱなしのサンダルをつっかけて外に出れば、夕焼けが目に眩しい。昼より気温が下がって涼しくなった。掃除で火照った体がだんだんと落ち着いていく。もう終わりにしてビールでも飲むか。夕涼み、なんてのもいいだろう。

 掃除が途中の部屋を横切り台所の冷蔵庫を開ける。祖母がそのままにしていた年代物の瓶詰たちを処分した庫内は、白い光を反射してすっきりと寂しい。昨日買ったノンアルコールビールを一本取って、チーズは迷ってあとにする。今は、喉に流れがほしかった。冷蔵庫の扉を閉めて部屋を振り返ると、さっきよりも暗い。でも電気はまだつけたくない。ベランダの網戸を開けて薄暗くなった庭に立つ。微かな風に吹かれて少し残るオレンジと紫から青に変わる空を見上げた。少し前まではこの時間どころか深夜まで仕事してたなと思いながらビールのプルタブを開ける。住人がいなくなった家で聞くアルミの高い音は、居候してる感をますます高めた。


おおい

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