2024年12月21日 ー私は知ってたよー
土曜日の10時。上司として何を着ていくべきか考えていたが、結局コートを着てくことにした。
「みお、ごめんなひとりにして、」
「いやいや気にしないでよ。びっくりしたけど、高岡くんの彼女さんどんな人だったか教えてね。」
「うん、もちろん。」
「そうだ、今日の夜食べなさそうだったら連絡だけちょうだいね。」
「承知いたしました。でもなるべく早く帰ってみおの手料理食べさせて。」
「ありがと、でも私のことは気にせず楽しんできて。」
本当によくできた子だ。いく前に行きたくなさせる作戦なら成功である。
しかし無情にも時間が来てしまった。
「行ってきます!」
「はーい行ってらっしゃい。」
笑顔の彼女を見て駅まで寒い道を歩く。
土曜日の朝なのにサンロードはすごい人だ。
10時30なのにさとうのメンチカツを食べているひともいる。
その中で自分は、5時に並んで8時に配られた整理券を持って小ざさによって羊羹を買ってからいく。
ホクホクした気分で電車に乗る。僕は羊羹が大好きだ。高岡に渡しつつ、自分も食べようという魂胆だ。
高岡の家は意外と近く電車で15分だった。中央線沿いのマンションの四階。
インターフォンを鳴らすと、高岡の声だ。
エレベーターで上がり、チャイムを鳴らす。こんなに寒い日なのに汗が出てきた。緊張だろうか。
高岡が出てきて家に上がる。廊下を進むと鼓動が早くなっている。
何を話せばいいんだ俺は、高岡の彼女さんと、あいつは頑張り屋で、いつも仕事ではお世話になっているとかそんなことか?
リビングの扉を開けてくれたので、咄嗟に言ってしまった。
「いつも高岡にお世話になっている。上司の吉村 翔と申します。」
九十度のお辞儀。ポカンとした高岡。
5秒後笑顔が聞こえる。聞いたことのある声。
「はい、知ってます、彼女?奥さん?の高橋 怜です。」
うん?高橋 怜?なんか聞いたことある名前だな。
「久しぶり翔くん。元気だった?」
寝耳に水とはこのことだろう。羊羹が手から落ちる。
「怜さん?あの怜さん?」
「そうだよ、サークル同じだったでしょ?忘れた?」
「いや、覚えてるよ、高岡の奥さんって怜さん?」
高岡もポカンとしている。
「はい、僕の奥さんですが、、、お知り合いなんですか?というよりも、一旦座りませんか?」
「そうだな、、すまん」
世の中はなんて狭いのだろうか。まさか大学のサークルのマドンナと部下が結婚するなんて。
ソファに座り状況の把握をする。気まずい沈黙が流れる。
「二人はお知り合いだったんですか?」
高岡が沈黙を破る。
「そうなんだよ。怜さんとは大学が一緒で、サークルも同じで。」
「そうだったんですね、まさかそんなことあるんですね。」
そりゃこっちのセリフだ。
「そうそう、翔くんとは仲良かったんだよ意外と」
「そうだったんだ」
「よく、亜希と慶太くんと4人で遊んでたよね」
「そうだったね、」
あまり思い出せないが、なぜか仲がよかった気がする。
「まあでも翔くんがまさかたかちゃんの上司だったとはね、初め聞いた時驚いちゃったよ。」
「先に言ってよ」
「ごめんねたかちゃん、でも面白いかなーって」
二人の間には特別な時間が流れている。本当に特別な。
それを見てなぜか心がモヤっとしている。
「まあ、俺が一番驚いたけど、、」
「えー翔くん俺とかいうんだ、ヤンキーになっちゃって」
ヤンキーの定義が小学生すぎる。
「いやいや、俺ってずっと言ってなかった?」
「僕だった気がしたけど」
「もう、僕を置いてかないでくださいよ。」
ちょっと拗ねた高岡。
「わるいわるい、それで二人はどうやって出会ったの?」
「出会ったのは、2年前にカフェの店員さんだった怜さんに一目惚れしたのが出会いです。」
高岡らしいまっすぐな出会いだ。
「しつこくてね、たかちゃん。でも愛が伝わって付き合ったの。」
話している怜さんの顔は幸せそうだ。それを見て少し安堵した。
「てか、怜さんの結婚式ってことは、あいつらもくるのか?」
「うん、この前亜希にスピーチお願いした」
同期会の時に言ってくれればいいのに、、。
「同期会の日に式場の打ち合わせで私は行けなくて、亜希には同期会の後に会う約束しててそれで。」
それで亜希はいなかったのか。
「なるほどね」
「てか翔くん聞いたよ。みおちゃんと付き合ったって、やるねー男の子だねー」
「いやいや、まあ色々ありまして。それはおいおいね」
そんなことを話しながら羊羹を頬張る。そのあとは思い出話を他愛ものない話をして
気づけば夕方になっていた。
「じゃあそろそろお暇するね。お二人ともおめでとう。」
「もうこんな時間経ってたんんですね。こちらこそ当日よろしくお願いします。」
「緊張しないでよー翔くん。あっ、そうだ、みおちゃんにもぜひ式に来てって言っておいてね、たかちゃんもお世話になってるし」
「わかったよ。じゃあまた会社でな高岡。怜さんも当日楽しみにしてる。」
「送っていきますよ駅まで」
「いや、大丈夫だよ、そんなに遠くないし、今日はありがとう。」
マンションを出て、駅まで歩く。
変な気持ちが押し寄せてくる。目から涙が溢れた。
なんのことだかわからない。嬉しい?悲しい?
わからないのに止まらない。
「少し寄り道して帰るか。」
そう呟いて、一つ先の駅まで歩くことに。
家に着いたのは7時。廊下までいい香りがする。
今日はシチューだ。大好きな。
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