Henzel & Gretal
一葵
雨降る夜に、思い出話を…
ヘンゼル:「ねぇねぇ、こっち来てー!」
グレーテル:「なによ、もう…うるさいわね。」
ヘンゼル:「えー、煩(うるさ)いとか言わないでよぉー。お兄ちゃん悲しいだろー?」
グレーテル:「はぁ…」
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コツコツコツ、キィ、
ヘンゼル:「ただいまー!」
グレーテル:「ただいま。」
ジェリルシー:「おかえり。ヘンゼル、グレーテル。お前たち、また派手に"遊んで"きたのか。」
ヘンゼル:「うん!楽しかった!でも…うーん…」
グレーテル:「どうしたの?」
ヘンゼル:「いやぁ、今日遊んださ、オモチャ。あれ、脆(もろ)すぎて物足りなかったなーって思ったんだ。ねぇ、グレーテルはどうだった?」
グレーテル:「うーん…まぁ、かなり "幼かった" からすぐ"壊れちゃった"ね。」
ヘンゼル:「だねぇ…」
ジェリルシー:「お前たち、また幼体を狙ったのか?」
ヘンゼル:「うん、そうだよ?」
ゴツン!
ヘンゼル:「いったぁ!何すんのさ、ジェリルシー!」
ジェリルシー:「ヘンゼル。またお前が言い出して、幼い餌(え)をアソビに使ったのだろう?グレーテル。どうなんだい?」
グレーテル:「そうよ。私、最初は反対したのよ?でも、ヘンゼルが煩(うるさ)いから仕方なく遊んだの。まぁ、もろくてすぐ壊れちゃったからつまんなかったわ。」
ジェリルシー:「ヘンゼル。」
ヘンゼル:「…ごめんなさい。」
ジェリルシー:「後で説教だ。」
ヘンゼル:「さいあくぅー…」
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ガチャッ
ヘンゼル:「はぁ、最悪。もう、ジェリルシーから怒られたくないや。ガミガミ怒られて、体力持ってかれちゃったよ。」
グレーテル:「なんで勝手に入ってきてるのよ。」
ヘンゼル:「えー、お兄ちゃんだからいいじゃん。」
グレーテル:「えー、じゃない。あたし、あんたの妹だけど、一応女なの。入ってきて欲しくないの。分かる?」
ヘンゼル:「そりゃ、女の子だけど、別に兄妹だから良くない?」
グレーテル:「はっきり言うわ、あんたが入ってくるのが嫌なの。一人でいたいの。」
ヘンゼル:「こんな夜に?」
グレーテル:「こんな夜?」
ヘンゼル:「だって、外、雨降ってるよ。なんならさっきまで霧が出てたよ。僕、こんな日の夜、嫌いなんだよね…」
グレーテル:「どういうこと?別に夜だし、家の中だし、関係ないと思うけど。」
ヘンゼル:「覚えてないの?僕らが捨てられた日。あぁ、グレーテルはまだ幼かったから覚えてないか。まぁ、そういう僕もそんなに覚えてないけど。」
グレーテル:「??」
ヘンゼル:「僕らさ、捨てられたじゃん。あの売女(ばいた)に。ほら約束したじゃん、今度のおもちゃをそいつにするって。覚えてない?」
グレーテル:「いや、覚えてるけど。それがどうしたの?」
ヘンゼル:「あれから捨てられたのがこんな夜だったって、ジェリルシーから拾われた時に聞いたんだ。あの時、グレーテルはまだ赤ちゃんだったから覚えてないとは思うけど。」
グレーテル:「へぇ、そうなのね。」
ガチャ、キィィィ、パタン。
ヘンゼル:「あれ?ジェリルシーどうしたの?」
アギュル:「んー?ふたりが興味深い話をしてたから入ってきたんだよー。」
ジェリルシー:「そうだ。お前たちの部屋の前を通った時にアギュルの言うように、興味深い話を耳にしてね。入ってきたのさ。」
ヘンゼル:「ふぅん…」 ←
同時に
グレーテル:「ふぅん…」↙
ジェリルシー:「して、なぜそんな話をしていたんだい?」
ヘンゼル:「んー?まぁ、一人でいるのが嫌でグレーテルの部屋に入ったら文句言われたから、一人でいたくない訳を話したけど、わかってないっぽかったから、ジェリルシーから聞いたあの話をしてたんだ。」
ジェリルシー:「そうかい。確かにあの時はまだグレーテルは幼かった。覚えてないのも仕方あるまい。ならば話してやろう。お前たちの生い立ちを。」
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ジェリルシー: わしがまだ齢(よわい)185だった頃。今より若く、美しく、皺(しわ)も少なかった頃じゃ。そうじゃな、屍(しかばね)を喰い始めた歳じゃ。
その日は、やに人が少なく、しとしとと雨が降っていた。
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ジェリルシー(185歳):「なんだ?こんなにジメッとした天気は。湿気がわしの肌について離れん。アギュル、何とかしろ。」
アギュル:「えぇ、無茶言わないでよぉ。僕、そんな力持ってないよ?だって僕は黒魔術で作られた使い魔だもん。そんな器用な魔法使えないよぉ。」
ジェリルシー(185歳):「そんなこと抜かさんでいい。…ん?なんだ、あれは?」
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ジェリルシー(200歳): ジトジトした雨の日、箒(ほうき)に乗って飛んでいたわしとアギュルは何かを見つけて下に降りた。降りた場所は裏路地。その奥からかすかに赤子の泣く声と、幼子が泣き喚く声が聞こえたんじゃ。
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アギュル:「なんか聞こえるね、ジェリルシー。」
ジェリルシー(185歳):「そうだな。わしの耳の聞き間違えでなければこれは幼子と赤子が泣いておるな。それに…」
アギュル:「ん?どうしたの?」
ジェリルシー(185歳):「…」
アギュル:「ジェリルシー?」
ジェリルシー(185歳):「アギュル。この裏路地の周りには何があるか見てこれるか?わしはこのまま声が聞こえるところまで行く。戻ってこれるようにお前にしか分からぬ、香(こう)を焚こう。」
アギュル:「いいけど、なんで見てこなくちゃいけないの?」
ジェリルシー(185歳):「わしの感では、この路地の周りから匂いがする。血…いや、分からぬが、なにか如何(いかが)わしい匂いがする。」
アギュル:「わかった、見てくるよ。ジェリルシーの感は当たるし、その血の匂い、僕もなんとなく感じとってたんだ。じゃあ、行ってくるね!お香、きちんと焚いといてね!」
ジェリルシー(185歳):「わかった。早く行ってこい。」
アギュル:「はーい!」
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ジェリルシー(200歳): そう言ってアギュルを偵察に行かせた。代わってわしは、その声のする場所に向かった。
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ジェリルシー(185歳):「だんだん声が大きくなってきてはいるが、声の主はまだ遠くにいるのか…はぁ、なぜわしはこんな面倒臭いことをしているんだ。」
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ジェリルシー(200歳): わしはそう言ってゲンナリしながら、声の主を探したんじゃ。ずっと歩いていると、最奥に辿り着いた。
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ジェリルシー(185歳):「ん?ここ、か?しかし姿が見当たらんぞ。」
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ジェリルシー(200歳): そう言ってわしは辺りを見渡したが、その声は見当たらなかった。しかし、そこからまだ声はする。どこかと探るために、四方の壁に耳を当てたのだ。そうしているうちに声が聞こえる場所を見つけたんじゃ。
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ジェリルシー(185歳):「ここ、か?ここから声がするが、ここは壁だろう?しかし、思い当たる場所はここしかない。壁、壊してみるか…」
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ジェリルシー(200歳): 念の為、壁を叩くと、穴が空いているような音がした。そして、そのノック音に驚いたかのように声が一瞬止まり、今度は激しく泣き始めた。
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ジェリルシー(185歳):「ここだな。」
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ジェリルシー(200歳): 壁の中に声の主がいることを確信したわしは、切断魔法で壁を円形にくり抜いた。壁を切ってみれば、そこには幼子と赤子がおった。なぜ、ここに子供がいる?
そうわしは思った。その後、香の匂いを辿ってアギュルが帰ってきた。
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アギュル:「たっだいまぁーあぁ…え、それ、どうしたの?」
ジェリルシー(185歳):「いや、壁の中から声がしてな。くり抜いてみたらこんな有様だ。とりあえず埃臭かったから外に出したら、これは引っ付いて離れなくなった。赤子は置きっぱにはできんから抱いておる。」
アギュル:「そっかぁ…」
ジェリルシー(185歳):「で、周りはどうだったんだ?」
アギュル:「あ!そうそう!見回りに行ったらさ、ここ周辺、全部さ、娼館だった。通りで臭いわけだよ。」
ジェリルシー(185歳):「なるほど、経血と男と交わった匂いだったのだな。」
アギュル:「それでさぁ、それとそれどうすんの?」
ジェリルシー(185歳):「さてな、とりあえずここに隠すように捨てた張本人を見つけたいところだな。」
アギュル:「なんで見つけるの?」
ジェリルシー(185歳):「さぁ?」
アギュル:「さぁ?って…ん?今なにか通ったよ。」
ジェリルシー(185歳):「あぁ、見えておる。」
アギュル:「うーん、こっち見てそそくさと逃げてったところ見ると、捨てたの、あれだろうね。」
ジェリルシー(185歳):「そうだな。しかし、どうやって隠すように壁の中に捨てたかね?」
アギュル:「さぁ?でも、協力者がいないと無理だよね?」
ジェリルシー(185歳):「あぁ、そうだな。」
スンスン
アギュル:「あ、これ、男の匂いだ。それも若い男の匂い。」
ジェリルシー(185歳):「なるほど、ん?お前、眠たいのか?」
アギュル:「どうしたの?」
ジェリルシー(185歳):「いや、わしの足元でウトウトし始めてな。」
アギュル:「犯人探しは後でにする?」
ジェリルシー(185歳):「そうだな。」
アギュル:「じゃ、家に帰ろっか。」
ジェリルシー(185歳):「あぁ。」
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ジェリルシー(200歳): そう言って、拾った幼子と赤子が離れぬように落ちぬように瞬間転移魔法で家へ帰った。
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ジェリルシー(185歳):「さて、帰ったはいいものの、こいつら埃臭いな。」
アギュル:「僕、お風呂にお湯入れてくるよ。」
ジェリルシー(185歳):「そうだな。こいつらを風呂に入れんと臭すぎて鼻が曲がりそうだ。」
アギュル:「すぐお湯沸かしてくるー!ジェリルシー、待ってて!」
ジェリルシー(185歳):「あぁ。さて、お前、このまま寝るなよ。」
子供(ヘンゼル):「うん…」
ジェリルシー(185歳):「赤子も泣き止んだようだな。疲れたのだろう。」
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ジェリルシー(200歳): 少し経ってから、湯気を纏ってアギュルがお湯が湧いたことを伝えに来た。
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ジェリルシー(185歳):「さて、風呂に入れるか。服は、どうしたものか…」
アギュル:「僕、魔法で作ろうか?」
ジェリルシー(185歳):「お前、そんな器用なことできないだろ
アギュル:「じゃあ、人間の姿になるからこいつら風呂に入れてくるよ。」
ジェリルシー(185歳):「赤子は小さな桶の中に入れて洗え。絶対に溺れさせるなよ。」
アギュル:「はーい。」
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ジェリルシー(200歳): 星粒が舞った瞬間にアギュルは人の姿になって、なにかを呟きながら、わしに引っ付いていた幼子とわしに抱かれていた赤子を大事そうに抱いて、バスルームに消えた。
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ジェリルシー(185歳):「さて…服、どうしたものか。んー、寄せ集めたもので作るか。布さえあれば造形魔法で作れるな。」
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ジェリルシー(200歳): わしは赤子と幼子の服を作るためにいらなくなった服を寄せ集めて、造形魔法を使って選択して使いまわせるくらいの数をつくりあげた。
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アギュル: その頃僕は、ガキンチョたちを洗うのに悪戦苦闘してたよ。
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アギュル:「こら!暴れるな!」
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アギュル: 先に大きかった子供をお風呂に入れたんだ。
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子供(ヘンゼル):「うわぁーん!」
アギュル:「泣かなくていいから!ほら、頭洗うから目をつぶって!」
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アギュル: 埃でベタついてた頭を石鹸で洗ったらさ、すごく綺麗なブラウンの髪が見えたんだ。洗い流したらさ、天使の輪ができるくらい綺麗になってさ、僕天才!って思っちゃったね。
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アギュル:「次は、顔と体洗うから、じっとしててね。」
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アギュル: ポロポロ泣きながらさ、僕をじっと見つめてくるからさ、ちょっとだけ瞳(め)を見て見たんだ。そしたら、泣き腫らして目が充血してたけど、紫の瞳(め)をしててね、びっくりしたよ。
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アギュル:「おまえ、紫の瞳(め)をしてるんだね。そっか、なるほどな。」
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アギュル: そう言って、僕はその子の体を洗って、少し緩めに温めて沸かした、お風呂に浸からせたんだ。
もちろん溺れちゃいけないから、低めにお湯を湯船に入れたよ。
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アギュル:「さて!おまえ、僕がいいよって言うまでお湯に浸かっててね。」
アギュル: 頷いたのを確認して、僕は赤子ひとりが入れるくらいの大きさの桶を用意して、中にお湯を張って、縛るよう巻かれていた襤褸(ぼろ)布を剥いでお湯に浸けた。
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アギュル:「わぁ、この子、瞳(め)が金色だ。こりゃたまがったぞ。こいつら、忌(い)み子じゃん。」
アギュル: 忌(い)み子。生まれた時に目が変化して生まれてきちゃったり、容姿が異様だと忌(い)み子って呼ばれたりするんだ。
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アギュル:「んー、首、座ってるみたいだから、このまま桶の縁に頭置くか…首、締まってないよね?…うん、大丈夫そうだね。さて!洗うか!」
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アギュル: そう言ってそいつも同じように洗ったらさ、今度は黒髪に紫のメッシュが入ってたんだ。
そんでもって、土埃で汚かった顔を洗ったら美人さんでさ、あらぁ、僕一目惚れしちゃぁうとか思ったよね。
まぁ、それは冗談として、どんどん洗っていくうちに、口の中を洗うことになってさ、気づいたんだよ。下が蛇みたいに切れてたの。
赤ちゃんの方はそこまでだったけど、子供の方はガッツリ切れててさ、こりゃ痛かっただろうなぁって思ってさ、それに、2人にはそんなに経ってないくらいの切り傷を見つけたんだ。あと焼き傷ね。
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アギュル:「あー、これは…見つかったらジェリルシー怒るな。こんな大雑把な呪文書いてさ、呪いたかったのかな…まぁ、そんなことはいいとして。おい、お前、僕に捕まって。…よし、いい子。よいしょ!はぁ、それなりにこいつ重いな、性別、伝え…なくてもいっか、見つけた時に軽く見てるだろうし。」
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アギュル: 真っ白なタオルで2人の体を拭いてさ、汚くなった服を脱いで、ジェリルシーのいる部屋へ戻ると、そこにはたくさんの服と揺り篭があったんだ。
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アギュル:「そんなに作ったんだね。」
ジェリルシー(185歳):「待ってる間暇だったからな。ん?あぁ、なるほどな。」
アギュル:「ん?どうしたの?」
ジェリルシー(185):「お前はもう気づいているだろう?目の色が人と違う。なんならわしらに近い。お前たち、忌み子だな?」
アギュル:「さすが、ジェリルシーだね。この子達、瞳(め)の色が男の子の方は紫、女の子の方は金色だったんだ。」
ジェリルシー(185):「そうかい。捨てられた理由もそれか。」
アギュル:「捨てられた?」
ジェリルシー(185):「あぁ。お前を待っている間、少しだけ水紋鏡を見てたんだ。音声付きでな。そしたら、わしらが、こいつらを見つけた場所で男と女が騒いでてな。隠して捨てた子供がいなくなってるって小さな声で女が喚いて、男はそれを宥(なだ)めるようにしていたな。」
アギュル:「なんじゃそりゃ。」
ジェリルシー(185):「さてな。それは知らんが、おそらくこの水に映ったふたりが捨てたのだろう。しかし、忌み子ができるということは、少なからず売春婦であるだろうな。あとは、娼館の主の預かり知らぬ時に犯されて生まれた子か。」
アギュル:「ふぅん。あ、そういえば。」
ジェリルシー(185):「ん?どうした?」
アギュル:「服、着せてないや。」
ジェリルシー(185):「あ。」
アギュル:「作った服と下着、2人に着せてくるね!」
ジェリルシー(185):「わかった。」
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ジェリルシー(200): アギュルを待っている間に、わしは子供たちの瞳(め)の色について考えていた。
忌み子であれど、なぜそんな色になるのか、不思議であった。
はて、悪魔の血が混じれば赤くなる。しかし、拾った子は紫と金と来た。
何故だろうか…アルビノ?いや、違う。
分からぬまま、頭を捻らせてるうちにアギュルが戻ってきた。
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アギュル:「戻ったよー!見て!可愛い!」
ジェリルシー(185):「着せ替え人形ができてよかったな。」
アギュル:「うん!」
ジェリルシー(185):「まぁ、それはいいとして、この子達をどうするかだ、家に置くとしても、名前を決めねばならん。」
アギュル:「そうだね。でも、何がいいかなぁ…」
ジェリルシー(185):「うーん。」
アギュル:「あ!そういえば、グリム童話にさ、魔女と捨てられた子供の話あったじゃん?その子供の名前つけようよ!えぇっとぉ…ジェリルシーが魔女だし。いいよね?」
ジェリルシー(185):「あぁ…ヘンゼルとグレーテルか。」
アギュル:「ちょうど、男の子と女の子だし。イェーイ僕てんさーい!」
ジェリルシー(185):「調子に乗るな。」
ゴチンッ!
アギュル:「痛て!何すんのさぁ!いきなりゲンコツ落とすなんて!」
ジェリルシー(185):「お前が調子に乗るからだ。まぁ、ほかに名付けるものも思いつかんから、それでよかろう。」
アギュル:「やったね!」
ジェリルシー(185):「はぁ、疲れた。」
アギュル:「だねぇ…」
ジェリルシー(185):「アギュル、赤子を揺り篭に入れろ。そんでもって、暖かいミルクと子供にあげる飯を作れ。」
アギュル:「えー!」
ジェリルシー(185):「寝たあとの面倒はわしが見る。」
アギュル:「等価交換ってことね。」
ジェリルシー(185):「等価交換ではないとは思うが、よかろう。そう捉えておけ。」
アギュル:「はーい。」
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アギュル: その後、ミルクとご飯を与え、食べ終わったのを見て2人を寝室に連れていった。
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ジェリルシー(185):「して、アギュル、お前は何を見た?」
アギュル:「ん?何が?」
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ジェリルシー(200): アギュルを元の姿に戻したあと、わしらは二人で見たことを話した。
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アギュル: 「んー、そうだね、口を洗った時に舌が2人とも真ん中から蛇みたいに切られてたりとか、あとは…」
ジェリルシー(185):「あとは?」
アギュル:「んー、言いづらいんだけどさ、すごく大雑把な呪いの呪文が背中に書いてあってさ、人間の仕業なのはわかるけど、それにしてもかなり大雑把でびっくりしたんだ。」
ジェリルシー(185):「ほう、人間ごときが。」
アギュル:「まぁ、そう怒らないで。」
ジェリルシー(185):「そうだな。」
アギュル:「それで、ジェリルシーは何を見たの?」
ジェリルシー(185):「わしは、あの子たちの過去とあの子たちを捨てる前までの女の行動を見てたんだ。」
アギュル:「何があったのー?」
ジェリルシー(185):「女は若い男に襲われ、誤って子供を孕み、娼婦であるため、子供が出来たことがバレると価値が下がる故、子供を堕ろそうとしたが出来ず。逆にそれで客がつき、毎夜なんども夜這いを繰り返し、2人を産んだ。その後、子供がいると邪魔、との事で産んだ子供を周りにバレぬよう、あわよくば死ねばいいと思って壁の中に隠し、捨てた。というのが事の経緯だ。」
アギュル:「なるほどねぇ…人間って馬鹿だね。」
ジェリルシー(185):「そうだな。」
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ジェリルシー(200): わしらは、得た情報を一晩中話し、共有し、今寝ているお前たちにある程度成長したら話すことにしたんじゃ。
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ジェリルシー:「これがお前たちの生い立ちの全てだ。」
アギュル:「他、分からないことある?」
グレーテル:「へー、そうだったんだ…」
ヘンゼル:「まぁ、僕は多方ジェリルシーから聞いてたから覚えてたよ。」
ジェリルシー:「そうじゃな。」
ヘンゼル:「んー、でもさぁ…」
アギュル:「どうしたの?」
ヘンゼル:「だってさ、その売女(ばいた)が外を歩かなければさ、襲われることもなかったし、僕らを産むこともなかったじゃん?僕、思うにさ、産まなければ、僕らに仕打ちを受ける必要性、ないと思うんだよね。」
グレーテル:「そう、そうね…確かにそうだわ。でも、私たちが産まれてなかったら、産まれて、ジェリルシーとアギュルに拾われなかったら、私たちは、私達は、消えてたのよね。」
ヘンゼル:「まぁね。」
アギュル:「まぁ、僕らに拾われたんだ。そこだけでも喜んだ方がいいんじゃない?」
グレーテル:「そうね。」
ヘンゼル:「…腹がってしょうがないよね。」
グレーテル:「同意だわ。」
ジェリルシー:「して、お前達。」
ヘンゼル:「んー?なにぃー?」
ジェリルシー:「その女にどう仕打ちをする?」
グレーテル:「周辺のことを猫に化けて情報収集したら、賞味期限切れってことで今はもうやめて、何やら店の店主をしてるらしいの。それに、結婚するって噂も出てるらしいわ。」
ヘンゼル:「結婚ねぇ…僕達を捨ててよくノコノコと幸せになろうとして…ほんっとクソッタレだよね。」
グレーテル:「ええ。」
ジェリルシー:「ならば、結婚する前に悪夢を見せてあげな。」
グレーテル:「そうね。そうするわ。」
ヘンゼル:「ねぇ、グレーテル。」
グレーテル:「ん?」
ヘンゼル:「明日、そいらをどん底に突き落とそうよ。」
グレーテル:「そうね。そうしましょう。」
ヘンゼル:「ジェリルシー。」
ジェリルシー:「なんじゃ?」
ヘンゼル:「その女の婚約者、連れて帰ってきていい?」
ジェリルシー:「好きにしな。」
ヘンゼル:「やったー!ひひひっ。」
グレーテル:「なんで持って帰ってくる必要性あるのよ…はぁ…ま、いっか。」
ヘンゼル:「ん?なんか言った?」
グレーテル:「別に。」
ヘンゼル:「そっか。あぁ、遊ぶの楽しみだなぁ…何して遊ぼうかなぁ…ひひひひひっ。」
グレーテル:「気持ち悪。ねぇ、ヘンゼル。」
ヘンゼル:「んー?」
グレーテル:「何持ってく?というか、どこで遊ぶ?」
ヘンゼル:「とりあえずー、うーん。あ!おもちゃ箱とポーション持っていこうよ!あとはぁ、大体のものは向こうに揃ってるでしょ。」
グレーテル:「向こうってどこよ。」
ヘンゼル:「僕らが特別な時に使う場所だよ。アイアン・メイデンとかファラリスの雄牛とか、あとはぁ…」
グレーテル:「ファラリスの雄牛…それ、一緒にいるであろうやつに使わない?」
ヘンゼル:「それ名案!それをあの女に見せようよ!」
グレーテル:「いいわね。」
アギュル:「2人とも思う存分遊んできなよ!」
グレーテル:「ええ、もちろん。」
ヘンゼル:「あのぉ、グレーテル。」
グレーテル:「なに?」
ヘンゼル:「ポーション、どっちが作る?できるなら僕ぅ、下手だからやりたくないんだけど…ダメ、かな?」
グレーテル:「なんなら2人で作りましょ?」
ヘンゼル:「え?なんで?」
グレーテル:「あんたがいないと作るべきポーションがわかんないでしょうが。ほんとおバカね。」
ヘンゼル:「そんなに言わなくてもいいじゃぁん。むぅ…」
グレーテル:「そんな顔しない。」
ヘンゼル:「はーい。」
アギュル:「あははっ!ヘンゼルがグレーテルの尻に敷かれてるや。はぁ、面白い笑」
ヘンゼル:「笑うなよー!」
ジェリルシー:「騒がしい。」
ゴン!
ゴン!
ヘンゼル「いってぇ!」
アギュル「いったぁ!なにすんのさ!」
ジェリルシー:「お前たちが騒ぐからだ。グレーテル、地下室の奥から二番目の部屋に特別なポーションを作ることが出来る道具が揃っておる。それで作りな。いいね?」
グレーテル:「わかった。奥から二番目の部屋ね。とりあえず行けばわかるかしら?」
ジェリルシー:「そうじゃ。わかりやすいところに置いてある。」
グレーテル:「わかった。ありがとう、ジェリルシー。ヘンゼル、遊んでないで地下室に行くわよ。」
ヘンゼル:「へ?なんて?」
グレーテル:「地下室に行くわよ。ポーション作るんでしょ?」
ヘンゼル:「そうだった!早く行こ!」
グレーテル:「はぁ…行きましょ。」
アギュル:「居眠りしてたら爆発するからねー、気をつけてねー。」
ヘンゼル:「わかったー!」
グレーテル:「はーい。」
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アギュル:「地下、吹っ飛ばないといいね。」
ジェリルシー:「そうじゃな。…さて、わしらは改造人間を作るぞ。」
アギュル:「えー、またツギハギ野郎を作るのー?」
ジェリルシー:「文句を言うな。最近ここをうろついてるやつがおる。そいつを捕まえるための防犯と、あの子たちをさらに成長させるための道具にするんじゃ。もう1回文句を言ったら、お前の毛皮をはぐぞ。」
アギュル:「ぎゃー!悪魔ー!」
ジェリルシー:「はぁ…何を抜かしよるんじゃ…ほら、行くぞ。」
アギュル:「あだだだだっ!耳引っ張るなー!」
ジェリルシー:「煩い。」
アギュル:「ひどぉい!泣くぞ!」
ジェリルシー:「はいはい。」
コツコツ
キィィィィ、パタン
Fin
Henzel & Gretal 一葵 @hina-poultry-
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