愛されたい2人
―深夜―
寝静まった王の寝室から抜け出たレイクは扉を閉めるとともに、
昨日の晴れやかな空とはうって変わって、只ならぬ重苦しい雲が空を包んでおり、今にも大雨が降りだしそうだ。
アンネの気持ちが自分に向いていないことはわかっている。
好奇心旺盛な彼女はいつも
ビルデはギルバートの子孫である自分に価値を見出している。
騎士団長候補としての自分に。
継承者として存在しうる自分に。
―僕は、誰からも愛されていない―
ふと見上げた空の彼方の森に、レイクは自分と同じ悲しみの色を見た。
◆◆◆
降り出した強い雨に打たれ、全身ずぶ濡れになった少女が草むらに立ちつくし、顔を赤らめてぽわんと放心している。1人の青年がそこに近づいた。
「美しいお嬢さん、こんな
少女はトロンとした目つきで青年を見る。
「……え……ジル?………きてくれたの??」
少女の目は青年を見ているようで見ていない。焦点の合わないその瞳を興味深く覗き込み、青年は続けた。
「………そう。ジルだよ。」
「ジル…!!!よかった。嬉しい…」
メドゥーは青年の肩に手を回して抱きつき、厚い胸板に顔を摺り寄せた。
「ジル…。…ジル…。もうどこにも行かないで。ずっとあたしと一緒にいて??」
メドゥーは目を閉じ、ジルにキスを求める。
(幻覚魔法か…??それも、内と外の色が同じ…これは…)
青年は顔中に不快感を示し、素早く右手を広げた。彼女の心の中にいる、
「…ん?……あれ…???」
「やぁ、お嬢さん。お久しぶり。
「…あ……」
メドゥーは彼の顔に見覚えがあった。光の聖域で珍しく、自分の挑発にのってこなかったクールな青年だ。
「…あぁ、あの時の………なんであなたがここに??」
メドゥーは
「…ふふ…そんなに怖い顔をしないでくれ。あの時は悪かったよ。光の聖域では、影のヒトとお近づきになるなんて、夢のような出来事だからね…君のあまりの
「…え…!??」
メドゥーは驚いて赤面した。
―お近づき―
その言葉は影から光に対してのみ使用されるはずのものだった。
「本当は、僕は君の美しさに心を奪われ、君の
「どうして…あたしの居場所が分かったの??」
「簡単さ。君のその強い魔力。そして激しい色気がこの森から発せられていた。僕には君の放つ色が見えるんだ。そして、君の背負っている悲しみも見える。」
レイクは切なげに目を細め、メドゥーの肩に手を置いた。
「君のことをこんなに苦しめているのは、誰なんだ?」
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