七夕ウィーク

九戸政景

第一夜 星の味

「お兄ちゃん、お星さまちょうだい」

「はいはい」



 従姉妹が期待しながら待つ中、俺はポケットからグミが入った袋を取り出す。そして袋を開けてその中身を従姉妹に渡すと、従姉妹は口に入れてとても美味しそうに頬に手を当てた。



「うーん、やっぱり美味しいなぁ」

「お前好きだよな、このスターフルーツ味のグミ」

「うん、大好き!」



 従姉妹は満面の笑みで言う。従姉妹はこの星の形のスターフルーツ味のグミが本当に好きで、珍しいと思った俺が買っていたのをあげたところ、これを大好物だと言うようになり、従姉妹が遊びに来た時用のおやつとして定期的に買っておく事にしたのだった。


 そして従姉妹は欲しい時にはグミが欲しいとかあれちょうだいとかではなく、お星さまちょうだいと言うのだが、まだ小学生の従姉妹にとってはこういうお菓子でも夜空に光る星のようなものなのだろう。



「けど、食べ過ぎるなよ? これは一日に一つまでの約束だからな」

「わかってまーす」



 従姉妹はスターフルーツ味のグミを美味しそうに味わう。それを見て俺もグミを一つ出して口に入れた。


 表面に軽く舌が触れるだけでも甘さと酸味がしっかりと感じられるが、噛み締めるとそれは口いっぱいに広がり、子供だけじゃなく大人でも美味しいと喜びそうなものだった。


 そして飲み込んでいると、従姉妹が俺の事をジッと見ていた。



「どうした?」

「お兄ちゃんにとってそれはどんな味?」

「え? 甘くて酸っぱい味だけど……それがどうしたんだ?」

「そっか。私にとっては……レモンみたいな味かな」

「レモン……まあ酸味はあるけど、そんなに酸っぱくはないし、ちゃんと甘いぞ?」

「そうじゃないんだけどな……」



 従姉妹は不満そうに言う。レモンの味、ではなくレモンみたいな味と言ったところに何かあるのかもしれないが、俺にはその答えはわからなかった。けれど、今日のグミは少し甘酸っぱい物に感じられた。

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