何が無理なの
愛美
何が無理なの
2016年11月7日午後、
女の子は、学校から帰宅後、友達の家へお父さんに車で送ってもらった。
「おとーちゃん、17時に迎えにきてや!」
その後、何も考えずに、女の子は友達と17時まで楽しく遊んだ。
17時になると、お父さんが迎えに来て、何事もなく帰ったのだが、
帰ってから1時間後、お父さんがしんどいと、
お気に入りの椅子でぐったりしていた。
心配したおばあちゃんは、夕飯の支度を一時中断して、様子を見に来た。
お父さんは、大丈夫だとしか言わず、おばあちゃんも女の子も、なにもすることができなかった。
女の子のお母さんは、夜勤で、ちょうどいなかった。おばあちゃんは、本当にしんどそうなお父さんを見て、一度お母さんに電話をかけた。
「忙しいのにごめんなんやけど、お父さんがしんどいゆーててな、帰ってきてくれへんかな?」
「わかった、今からでるわ」
お母さんが帰ってくると聞いて、女の子は心底ほっとした。
しかし、20時になっても、お母さんは帰ってこず、お父さんの容態は悪化していった。
23時、お父さんの意識が遠のいていくのを見て、おばあちゃんがたまらず、救急車を呼んだ。
救急車が着いた頃ちょうどお母さんが帰ってきた。救急車には、おばあちゃんが乗った。
お母さんと女の子は車で後を追った。
11月8日1時、心肺停止。
ICUに運ばれたお父さんは、意識はなく、心臓は止まっていた。
医者は、しばらく心肺蘇生を行った後、お母さんとおばあちゃん、そして、女の子に言った。
「蘇生は不可能です。このまま続けた方が、お父様はお辛いと思います」
お母さんは、大粒の涙をたくさん流していた。
その横で、女の子は幼いながら、お母さんを支えた。
渋々、お母さんは、心肺蘇生をやめることに頷いた。
部屋に鳴り響く死を意味する音に、女の子はついに涙を見せた。女の子は医者に問いかけた。
「なんで無理なん?お医者さんって、みんな助けるんやないん?」
医者は女の子に言った。
「無理なこともあるんや。ごめんな。」
それから女の子は、医者という職業、病院の空気、なによりも、「無理だ」という言葉が嫌いになった。
その女の子が今これを書いている私であるなんて、誰が想像しただろうか。
今でも私は、「無理だ」という言葉が嫌いだ。限りなく不可能に近いことでも、100%でないなら、私は、可能であることにかけてやる。
なぜその不可能に父が選ばれたのか暴くまで。
F i n .
何が無理なの 愛美 @hubuki0610
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