第58話 練習見学
土曜日。明日は試合だから今日のサッカー部の練習は軽めに上がる。
俺はもうバイトも無いから練習開始前にグラウンドに来ていた。
すると、そこには久しぶりに見る顔があった。森千尋の彼氏、関だ。
「あ、熊谷先輩。今日も見学ですか」
「おう。でも、最初から練習見るのは初めてだ」
「そうなんですね」
そんな話をしていると選手達が来た。森千尋が関のところに来る。
「千尋、今日の調子は?」
「まあまあ」
「そうか。がんばれよ」
関は森さんの頭をぽんぽんと叩いた。表情を変えない森さんが少し赤くなった気がした。
「……ありがと」
そう言ってグラウンドに出て行った。
「森さん、かわいいな」
俺は思わず言ってしまう。
「ですよね。頭ぽんぽんってされるのが子どもの頃から好きなんです」
そういえば幼馴染みだったな。
そして、市村と町田が出て来た。
「あ、秀明。来てたね。暑いから水分補給してよ」
「おう、水筒持ってきた」
「ちゃんと飲んでね」
そう言ってグラウンドに出て行った。そして、町田が俺に近づいて言う。
「いいわね、亜衣は。彼氏が観に来てくれて」
「長島は今日も練習か?」
「今日は練習試合で他の高校行ってる」
「そうか、寂しいな」
「寂しくないし。勝弘に余計なこと言わないでよ」
そう言って、グラウンドに出て行った。
長島に町田が寂しがっていたと伝えておくか。
試合前日なので軽めの練習であっさりと終わる。市村と森千尋が一緒に出てきた。
「千尋と話したんだけど、4人で何か食べに行かない?」
市村が言った。
「俺はいいけど、関は?」
「俺はもちろんオッケーです! あんまりダブルデートとか経験無いんでやってみたかったんですよね」
「ダブルデートと言うほどでも無いけどな」
俺たちはバスセンター地下のマックに来た。だがそこはかなり人が多い。
「ちょっと座るところ無いですね。注文にも時間がかかりそうだし、どうします?」
「ハンバーガーならもう一つの方に行くか?」
ここにはフレッシュネスバーガーもある。
「いいですけど……ちょっと高いですよね」
関が言った。森さんも渋い顔だ。
「たまにはいいだろ。それに可愛い後輩だから、今日は俺がおごるよ」
「え、マジっすか。だったら、千尋、行こうよ」
「……うん」
ということで、俺たちはフレッシュネスバーガーに来た。値段を見て関が言う。
「……先輩、結構しますよ。大丈夫ですか?」
「言ってなかったっけ。俺、夏休みはずっとバイトしてたから大丈夫だよ。好きな物頼め」
「そうなんすね、だったらご馳走になります!」
俺と関はクラシックチーズバーガー、亜衣と森さんはアボカドバーガーを頼み、席に座った。
「こういうダブルデート憧れてたんで嬉しいです」
関が言う。
「今日はちょっと帰りに寄っただけだろ。本格的なダブルデートはまた今度しような」
「いいんですか? 是非お願いします」
「森さんもいいか?」
「……うん」
そういいながらハンバーガーを食べるのに夢中のようだ。ふと見ると市村も同じだな。
「部活はお腹空きますからね」
関が言った。
「だよな。スポーツやるならカロリーとらないとな」
「千尋もかなり食べますけど夏場は体重落としてますから。もっと食べるように言ってるんです」
「……体重の話はNG」
「あ、ごめん」
「亜衣も引き締まってるもんな。腹筋なんてすごいから」
「ちょ、ちょっと……」
市村が恥ずかしそうに言う。
「あ、ごめん」
「俺たち、謝ってばかりですね」
「だな」
俺と関は二人で笑った。森さんと亜衣は全く笑ってないが。
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