夏休みに部活帰りのクラスメイトと毎日会ってます

uruu

第1話 終業式

 一学期の終業式。既にホームルームは終わり、クラスはざわついていた。すぐ帰るやつもいれば、遊ぶために友人と残っているやつや部活に向かうやつもいる。


 俺はと言えば、特に何もすることが無いのに、すぐ帰るのも嫌だと思って意味も無く残っていた。横には同じように長島勝弘ながしまかつひろが座っているが、こいつは単に部活まで少し時間があるから、残っているだけだ。長島とはたまたま席が隣になって、仲良くなった。


熊谷くまがいは夏休みの予定はあるのか?」


 長島が俺に聞いてきた。まあ、予定はあるな。


「ほとんどバイトだな」


「そうか、せっかくの高校二年生の夏休みなのにつまらんな」


「そうでもないよ。インターンみたいなもんだから」


「インターン?」


「うん、ソフト会社で少しお手伝いをさせてもらうんだ」


 俺はパソコン部に所属し、少しプログラミングをかじっていた。それもあって、こんなバイトがまわってきたのだ。パソコン部の部長が教えてくれたバイトだ。


「へぇー、そいつはすごいな」


 そこにポニーテールの少女が近づいてきた。町田怜香まちだれいか。長島の彼女だ。


「勝弘、お昼どうするんだっけ?」


「ああ、一緒に食べようか」


「うん、じゃあちょっと待ってて」


 町田が去って行く。


「お前いいよなあ、あんな可愛い彼女が居て」


「まあな。いいだろ。だが夏休みはほとんど一緒に過ごせないんだ」


「そうなのか?」


「ああ。俺はバスケ部だし、あいつはサッカー部。予定が合わなくてな。デートできるのはお盆休みぐらいだ」


「そうなんだ」


「まあ、部活の後で会ったりはするだろうけどな」


 長島が町田の方を見ているので、俺も見てしまう。でも、いいよなあ。ポニーテール美少女。うちの高校の女子サッカー部は熊本県内ではかなり強い方らしい。町田はそこで新キャプテンになったそうだ。今、町田が話している市村亜衣いちむらあいと並ぶサッカー部の美少女だ。


 すると、町田と市村が二人で俺たちの席まで来た。


「ちょっと職員室行ってくるから」


「おう」


「すぐ連絡する」


「待ってるな」


 町田と長島が話しているとき、手持ちぶさたで横に居る市村を思わず見てしまう。ショートカットの美少女だ。一瞬、目が合ったような気がした。うーん、この子が彼女なら最高なのにな、なんて非現実的なことを考える。


 話が終わると、町田と市村は二人で教室を出て行った。


「・・・・・・いいよなあ。彼女」


「お前も作ったらどうだ?」


 長島が簡単に言う。


「バカ言うなよ。2年になってからまともに話せた女子なんて一人しか居ないぞ」


「え、誰だよ」


「……お前の彼女。時々お前と一緒に話をしただろ」


「は? それだけか?」


「俺にとってはそれも貴重なんだよ」


「それで良く彼女を作ろうとか思ったな」


「思うだけならタダだしな。行動は全く起こせてないけど。夏休みもバイトだし、もう俺の夏は終わったよ」


「まったくしょうがねえなあ……俺が誰か紹介してやろうか」


「え、いいのか!?」


 長島の言葉に俺は目を輝かせた。


「と言っても、俺も紹介できる心当たりはないし。怜香に頼んでも難しいだろうな」


「だよなあ……」


「じゃあ俺、行くわ」


 そう言って、長島も教室を出て行った。


 まあ、紹介なんて難しいよな。でも、もし町田が俺に誰かを紹介してくれるとしたら……同じサッカー部だし、さっき一緒に居た市村亜衣の可能性も……。


 市村はサッカー部のエース。普段はさわやかなスポーツ少女という感じだが、笑うとすごくかわいいことを同じ中学だった俺は知っていた。


 市村なら理想的だが、確か彼氏が居ると妹から聞いた記憶があるな。妹は中学でサッカーをやっており、俺たちが三年生の時は一年生。そのとき、市村はサッカー部のキャプテンだったし、エースで目立っていたから良く話を聞いたものだ。


 そんなことをぼんやり考えていたら、もう教室に人は少なくなっていた。ふと見ると、残っているのは女子数人のグループだけ。その中心に居るのは竹本夏鈴たけもとかりん、ウチのクラスの人気者だ。ちょっとギャルっぽい感じで制服を着崩し、誰にでも気さくに話しかける明るい性格だ。だけど、俺は話したことはほぼ無い。


 もう俺が話せそうなやつは誰も残っていないし、仕方ない。帰るか。

 寂しい夏休みの始まりだ。

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