悪役ブタ貴族に転生したので、悪役として死にたい
B.U.M
第1話 ブタ貴族に転生
男四十にして、所帯無し。
恋愛はゲームですらロクにせず、彼女いない歴=年齢。月一の風俗くらいしか女と触れ合わない俺は、オナニー中に死んだ。
Wtf
俺、死んだの?
意識有りますけど。いやまあ、体の感覚が無いんで察しましたよ。
でも、白い上下長袖のジャージじゃわからんよ。胸の刺繍に「DEAD」って書いてあんの腹立つ。
しかも、知らんうちに三途の川っぽい所いますけど。
川が澄んでて深い底まで見えるし、カラフルな花が咲きまくってる。俺以外にも数十人のがいて行列に並んでる。
日本人の性って奴で俺も列に並んでみる。
こういうの並んでおけば大体大丈夫だよ。
だってこの先にパチンコ有るわけ無いから変な行列に並んだりしない。
大丈夫だ、ちょっと死んだだけ。
何分待ったかわからないが前の方が見えて来た。病院の受付みたいなものがあり、一人ずつ額にバーコードリーダーでピッとされると、ジャージのまま川を泳いで渡らせられてた。
いやー、シビアシビア。
流石にこのままの流れには乗れないので、自分の番になったところで聞いてみる。
受付のお姉さんからのバーコードリーダーパンチを躱して、腕をつかむ。
「すみません。ここどこで、何で川を泳いで渡るんですか?」
「あら珍しい、意識が有りますね。ここは三途の川の中流です。悪人では無いが、まともでない人間が渡る場所です。ここを泳いで渡れたら天国いける可能性があります。」
「例えば溺れたり、下流に流されたらどうなりますか?」
「じゅ◯むが引き上げて、反対側まで運んでくれますが、地獄行きです。」
あいつここでも働いてんのかよ。
「成る程。服脱いでいいですか?」
「オススメはしませんが、どうしてもと言うなら。」
「わかりました。脱ぎます。後なんでピッてするんですか?」
「識別のためです。額が一番認証早いですが、どこでも大丈夫です。」
受付のお姉さんは小手を返しバーコードリーダーを首にあてる。すぐさまピッと音が鳴り終わった。
とりあえず川を渡るためジャージを脱ぐ。
パンツとTシャツになると、不摂生で丸くなった体が披露される。川を渡るための不確定要素を無くすため全裸になる。ぶらぶら揺れるのが逆に不安になったが、なりより濡れたパンツは気持ち悪い。
「キラ・マコト、下半身フリーダム、でる!」
他の連中が歩いて入水する中、威勢よく川に飛び込む。
泳ぎは割と出来る方なので飛び込みで勢いをつけ、距離を稼ぐ。久々なので少し深く潜ってしまったが、進みながら浮上すれば問題ない。
と思っていたが浮かない。
沈むというより吸い寄せられている。
川底に激突すると思われたが、小さな隙間に体が圧縮される吸い込まれていく。
あまりの水流の激しさにぎゅっと目をつむった。
僅かな時間がすぎると水流を感じなくなる。目を開けると宙に放り出されていた。流れる時間がゆっくり感じたが、ボフンと床に落ちた。まさにファンタジーで想像するような柔らかい雲の床に突っ込んだ。
頭からダイブしたが痛くない。
顔を上げると雲が泡のように頭にまとわりついている。
「おめでとうございます。あなたには異世界転生してもらいます。」
周りには誰もいないのに若い女の声がする。
転生?溺れたからてっきり地獄行きかと思ったがラッキーだな。
「転生先は一生遊んで暮らせる貴族がいいでーす。」
「残念ですがそういった要望は受け付けておりません。」
急に男の機械音声が流れてキャンセルされる。
「転生先はダーツで決まります。あなたが投げて転生先を決定します。」
はぁ?
「ではダーツカモーン。」
また、若い女声がすると地面からダーツが一本だけ置かれた木の台座が俺の真横に生えた。
それから5メートルくらい先にフレ◯ドパ◯クで見たようなカラフルで大きな的が出てくる。
「では目玉商品の紹介です。」
若い女の声で合図が出ると、次々に異なるおっさんの声で商品紹介が始まる。
「まずは大人気RPG『ドラマチッククエスト3』風世界より、勇者です。勇者しか覚えられない雷魔法で派手に魔王を倒しましょう!」
「続いても『ファットマンファンタジー7』風世界より、主人公クラウゾです。大食漢の主人公となり、悪のレストランチェーンとフードファイトを繰り広げましょう。」
「続いては料理バトルシミュレーションゲーム『モンスター飯店4』風世界より、筆頭料理長です。若き料理である主人公を導き、モンスター飯店の新たな伝説に育てましょう。」
「続いてはミリオンヒットアクションゲーム『マチェット&スワンプ』風世界より、スワンプです。主人公マチェットのバディで呪術人形です。ヒーローの背中背負われてジャングルを救いましょう。」
「最後はヒーローコミックの金字塔『スライダーマン』風世界より、主人公ペーター・コートです。それなりの力にはそれなりの責任が伴う。そこそこ強い皆のお友達になって街の平和を守りましょう。」
「そして、残念ながらダーツが的に届かなったときはテキトーな乙女ゲーム風世界のモブに転生します。」
とりあえず的に当てなきゃならんのか。
ガールズバーのダーツより全然遠くて届かないかもしれない。
「では、ルーレットスタート!」
軽快な女の声で的が回転し始める。
ドラマ!ドラマ!とパジ◯ロ風の掛け声が急に聞こえてくる。
どうする。投げなければおそらくモブ確定。
当たって砕けろの精神でいきたいが、全てが急転直下でストレスが半端ない。
逃げちゃだめだ!逃げちゃだめだ!なんて茶化す余裕すらない。
「残り30秒」
また、男の機械音声が聞こえた。
「因みにダーツを投げなかったら地獄行きでーす。」
なんだってー!
すぐさまダーツを台座から取って構える。届く事を優先させて出来るだけ高い位置から山形(やまなり)にダーツを投げる。
ダーツが的に弾かれた様には見えなかったので、的の何処かには刺さっているのだろう。的が回転しているので何処に刺さったかはまだわからない。回転速度が止まるとピンク色のところに刺さっているのはわかるが文字が小さくて読めない。
「転生先は大人気美少女ゲーム『俺の彼女はレッドドラゴン』風世界より、主人公のライバルの悪役ブタ貴族ベイブです。」
知らねー!それなんてエロゲ?
いやさ、一般人は恋愛シミュレーションなんてやらないんだよ。思春期の一時期に気が触れてやらなければ一生交わらないのが、恋愛ゲームなんだよ。普通は現実でやるんだよ。
それに本当に有名ならアニメ化して、『人生』なんて言われるくらい知名度があるんだよ。ジャンプで育った俺だって気になって見たくらいだ。
くそっ大体ベイブってなんだよ。手抜きなネーミングしやがって、こういうパロディやんのは低予算のメーカーってお決まりなんだよ。ハズレ世界の悪役とかあんまりだー。
「あの、全然聞いたことないゲームなんですけど本当に有名ですか?メーカーも教えてくれません?」
「メーカーはシコリティアップです。美少女ゲーム界隈では有名だと聞いてます。」
聞いてますってなんだよ。
あれか、ジャンルごとに担当がいて美少女ゲームはマイナーなやつでもそいつ次第で大人気って事になってんのか?
「というわけで、時間も無いのでレッツ転生!」
その言葉と共に俺の意識は無くなり、目覚めた時にはおっぱいを吸っていた。
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