ある異世界の住民

赤葉リュー

第1話 はたらきたくねぇよ

 「あんた、そろそろまともな仕事に就いたらどうなの?」

 これで何回目だろうか…母親の小言が耳に刺さる。

 「うぅぅ~ん」

 俺はやる気の「や」の字もないような力ない返事を返した。わかってるよ・・・

 「この店はラインが継いでくれたし、マリアもバインももう職についてるのよ?あんたもその辺ぶらぶらしないで家に金を入れなさいよ?父さんも今は黙っているけど言いたいことはたくさんあるんだからね!」

 バタン!

 勢いよく俺の部屋(もう兄弟みんな実家から出たので実質俺の部屋)の扉を閉めたかと思えば、怒気のこもった足音を立てて一階に降りて行った。

 「わかってる。わかってるって…」

 俺の家はアルマンデス商店という八百屋を営んでおり、兄のラインとバイン、そして姉のマリアがいる。その中で四男として生まれたのがこのまち随一のニート、マックスだ。

 俺は四男に生まれてからずっと肩身の重い生活をしてきた…。埋まらない兄弟との差、親からの雑な扱い、回されてくるボロ着…

 その俺がなんでこの家に金を入れるためだけに働かないといけない?兄姉が実家をでた今こそ、父さんと母さんはこれまでの扱いの差を埋めるために丁重に養うべきではないか?俺には何もなしか?ボロ雑巾のように使われるのか?

 否、養えよ!喜んで寄生してやるからよぉ!

 「はぁぁぁ~。でもなぁ」

 言いたいことを胸の内で吐露とろして頭が冷えた。

 実際、俺もこの状況に激しい焦りを感じている。この状況に何の感じないほどの図太い神経はしていない。

 来年は二十だぞ…みんな十五を過ぎて働くはずが、なんでこんな薄暗くて、外の喧騒に耳をふさぎながらふて寝してんだよ…

 てか、外うるせぇよ!なんでだよ!?下の階で店やってるからだよ!そうか…

 「なんか疲れた。寝よ。」

 嗚呼、働かなきゃ、はたらかなきゃ、ハタラカナキャ、ハタ…Zzz


 


 

 

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ある異世界の住民 赤葉リュー @Ruuu3345

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