いけいけ勇者様85

最上司叉

第1話

勇者が魔王たちと暮らしていた国を出てから3ヶ月が経とうとしていた。


【ピピッ】


小屋の外では鳥が鳴いている。


勇者は食べるものを取りに外へ出た。


仲間たちを捨てて国を出てから食力などないし何もする気にならなかった。


勇者は自分一人ではあの屈強な王に勝てる見込みがないからだ。


小屋の外に出れば見張りの黒装束の男が後をつけてくる。


もうダメかもしれないと思った時後ろで何かが起きた。


勇者は今歩いてきた方へ向かう。


【グイッ】


「!!」


勇者は誰かに腕を捕まれ口を手で塞がれた。


「黙ってついてこい」


【こくこく】


勇者は頷き口と腕の手が離された。


「こっちじゃ!」


「!!」


勇者は前を歩き出した人物に驚いた。


おじいちゃんだったからだ。


「急ぐぞ!やつに見つかったら厄介じゃ!」


勇者は必死におじいちゃんについて行く。


「ふう、ここまで来れば安全じゃ」


そこは森が開けて滝が流れていた。


まるで仙人でも住んでいそうなたたずまいだ。


勇者は呆気にとられている。


「まずは食事じゃな」


【ドサドサッ】


「!!」


「栄養満点メニューじゃ」


おじいちゃんは慣れた手つきで動物の肉と野草と米を煮ている。


勇者は我に返りおじいちゃんが何者か聞いた。


「何ただのジジィじゃ」


とおじいちゃんは言っているが只者では無いことは明らかだ。


ここまで来るときの身のこなしやあの黒装束の男を一撃で失神させたり。


そんな勇者の考えをおじいちゃんは悟ったのか昔話をはじめた。


「昔昔ある所に剣技に優れた1人の若者がいた、若者の未来は明るいと思って疑わなかった、ある男が現れるまで」


「…」


勇者は黙って聞いている。


「若者はある国の姫の護衛を務め姫と結婚するはずだったのじゃ」


「…」


「ところがある日一人の男が現れ若者に決闘を申し込んだのじゃ」


「…」


「決闘の結果は若者が僅かに負けた、そして若者は国を追われ愛する姫と結婚したのは決闘で勝った男だったのじゃ」


「…」


「その勝った男は姫と王様を殺してその国を支配しだしたのじゃ」


「…まさか!」


「そうじゃ、お主の会った男じゃ、これからワシの持つ全てをお主に叩き込む、覚悟するのじゃ!」


「!!」


勇者はこれであの屈強な王に勝てる可能性が出てきたと喜んだ。


「喜ぶのは早い!時間が無いのじゃ!お主の仲間たちにも危害が及ぶかもしれないのじゃ!」


「!!」


そうだ。


俺が居なくなったと分かればあの屈強な王が魔王たちに何をするか分からない。


もはや一刻の猶予もない。


勇者は慌てて食事を終わらせて修行を開始するのだった。

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