カラカラ(お題:カラカラ)


 カラカラと鳴るのは壺振りの振る壺。賽の目が決まらぬ状態にあることを示す音。丁か半かは神様仏様、いやくわえて凄腕の壺振りにしかわからない。

 喉がからからなのは大勝負を張ろうとしているから。博打の醍醐味は、どこで押し、どこで引くか。ここぞという高浪たかなみを予期し、そこに合わせて勝負をしかける。負けて熱くなるのが三流なら、金の多さで勝とうとするのは四流以下だ。

 持てる力を振り絞り、ピンかパーかの大勝負。必ずしも賭場ごとにその時が訪れるとは限らないし、一度か二度で済むとも限らない。そこまで含めて読んで、仕掛けた勝負ならば負けても悔いはない。

 悔いはないが、タマもない。

 たとえ勝ったとしても、そこにはいまより上の歓びはないだろう。

 カラカラと音が鳴る。

 こいつはおいらの、スカスカになったこうべの中で、転がる小さな味噌の音。

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