藁にもすがりたい(お題:ストロー)


 ギックリ腰とは、また違うのだと思う。仕事柄、なるべく腰に負担をかけないよう、膝を使っていたし、腰も垂直に上げ下げしていた。大体、魔女の一撃ウィッチズ・ショット、なんてものには無縁のはずだった。

 だが、この痛み。

 出るはずもない冷や汗が、全身から吹き出しているような気さえする。

 これは最後の藁ザ・ラスト・ストローだったのだ。

 藁を運ぶラクダの腰を折る、そのとどめの一本の藁。

「大丈夫ですか、死神デス様ー」

 足元を担う、小鬼ガバリンが間の抜けた声を出す。

 大丈夫なわけないだろ、このおバカ!

 と、声を発することもできないまま、半分だけ肉から離れた魂の頭部をつかみ、まんじりともできずにいる。

 威厳がどうとか矜持がどうとか、拘らず、比較的楽な足元を担当すればよかった。

 うん、もう素直に認める。

 これは魔女手下の一撃だわ。

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