車冑

「生き残った者は誰もが死者の犠牲の上に立っている。私も、君も、そしてあの少年もだ。彼も気づいている」


「どうせなら我々ではなく連邦を恨めばよいのに、と思わずにはおれませんわね」


「君は少し人心というものを気に掛けるべきだ」


「ウフ・・・殿方はおうらやましいですわぁ、熱中できるものが沢山おありで」


グラサンがチラリとこちらを向く。

夜道だろがよ~危なくねーのか。碧眼だから?


「ふふ、8歳とはおもえんな」


「このカッコ見て言ってます?」


ちなみに今あたしは外したパニエ(象牙の束)を手に持ちスカートを首にかけている。


「ふ・・・ハッハッハ、いや、失礼」


「子供故か、大人のやさしさには気付き難いのです。・・・ありがとう」


「なれないことはするものじゃない。礼を言われてしまうとは」


物憂げ(8歳)に横窓へ目を投げる。

ここから一気苛性に下半身へと武者振りつくッ!


「・・・民の命を踏みつけ、兵を殺し、生き残った者たちの前で臆面もなくのたまわねばなりません。よくやった、次はお前たちじゃ。期待しておるぞ、なんて」


「・・・そう自分を責めるものではない」


チッ、だめか。


「もう10ばかり歳が上なら、肩くらい抱いてくださいました?」


「18、か・・・いや、やはりそのカッコウではな。今のキミにそのしぐさは似合わない、以上の札は切れぬよ」


「チッ、あんのガキィ・・・」


「ハハハハハ」


18て呟くあたりで眉根が寄った。

ソコ既にもう射程外て真正かコイツ、やべえwww

でも、っつーコトは射程内のあたしは趣味じゃないってか。


残念。


「そろそろだが、どうすればいい?屋敷のエントランスまでは送りたいが」


「一ツ門が見える辺りで降ろしてください。あ、あそこ。噴水の横にお願いします」


「歩かせるのは不安だな」


停車。


「このままの別れというのも寂しい。我々の集まりでよければ、招待させてもらえないか。ほとんどが軍属のパーティだが、私服で出るような楽な集まりだ」


おっ、と。

ソツが無いな。

語りつつも降車し前を通ってドアを引いてくれる。


でも私服なぁ・・・


「・・・これはよい誼を結べたとよろこんでいいのでしょうか。今の私たちは社交辞令をも縋り倒しますわよ?」


差し出された手を引き、降りた後両手で包み込みながら胸へと引く。


まぁ、絶壁やけどーw


「これからのキミには力になりたいと願う男達が我さきにと殺到する。私は有象無象に埋もれる前に、先鞭をつけたいのさ」


ムチなら馬でなくむしろあたしに打って欲しい。


獣用のヤツをな!


そいやおじいさま(じいじの方ではなく公王)のフラフラなんとか機関て組織で人間を強化する実験してたっつーしひょっとして既に回転鋸刃股裂きに耐えられる夢の技術が実用化されてるかもしれない・・・


恐るべき官能の波を妄想してしまい目を潤ませていると、節くれだった男のゴッツい指で目元を掬われる。


ハッ、と妄想から戻ると目の前には金髪碧眼イケオジの顔が。

反射的つかノリで目をつむるとチューしてきやがった。


いやいやいやいあやいやいやいあいあいあいあ誘ってたカタチになってたとはいえ8歳にするかフツーwwwまぁ嬉しいけど。


「おやすみ」


「はぃ・・・」


耳心地よくチューニングされた大容量(?)インバーターの音が遠ざかっていく。


マーキングのつもりかな。


そいや前々世での友人のハナシだがロスのなんとかエンゼルて暴走族は女を複数人でズタズタに犯した後小便をかけるとか読んで埼玉から急行したらしいんだが夜を徹してソレっぽい人らに会ったのに「おまえはおかしい」とか「黄色いやつはおまん子猫ちゃん(なぜか意訳しか記憶にない)にはなれない。殺されるぞ」などとスカされ泣きながら帰ることになった。・・・そうだ。


「あっ、ハマ三お嬢様」


門番だ。


「おまえ一人?」


「いえ、間もなく応援が参ります」


応援?


「その・・・出られた時とお姿が変わっていたもので、自爆ロボットにでも改造されたのかと」


ブッ


「もー!せめてエリマキトカゲ人間とかにしなさいよおもろいわねー」


おもわず横によって門番のシリをバシバシ叩いてしまう。


「ご無事で・・・ようございました」


「うん。ありがとう」


スカートとパニエ(象牙)を渡し、続く一人に家紋の入った羽織をかけさせる。


漸くやってきたクラシカルな馬車に乗り込むと、入城する。


「前々世じゃいつかはお城に住んでみたい、なんて思ってたけど・・・ハァ」


尖塔に月がかかる古城を模した行政府貴族院第二離宮兼自宅を見上げ、溜息。


いい加減1階がコンビニのワンルームに戻りてーですわ。




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