Day2 それじゃあ耳かきをします

「おにーさーん………?」


(コンコンコン、と扉がノックされる音)


「おにーさん。約束通り、今日も来ましたよ?……返事がない……ただの屍になっちゃったのかな……入りますよー。ダメならちゃんとダメって言ってくださいね」


(ガチャり、と扉が開く音)


「おにーさーん……あぁ、今日も見事にぶっ倒れてますね……。おにーさん。大丈夫ですか────キャッ!」


「ちょ、ちょっとおにーさん……っ、急にお腹に抱きついちゃだめっ……ふわっ、脇腹、掴んじゃ……めっ!」


「も、もう!おにーさん!そういうことはダメって、自分から言ったんじゃないですか!……全く」


「私以外にしたら、怒りますからね。こほん。話を戻しますが二日目です。おにーさん」


「私、少し調べてきました。男の人が、どんなことされると『癒される』と感じたのか」


「……その、調べたサイトの殆どが、えっちなのばっかりだったので、少し恥ずかしかったですけど、健全そうなものをリストアップしてきました」


「はい、おにーさん。この中からどれが一番して欲しいか選んで────即決……耳かき?」


「分かりました。少し待っててください。道具を持ってくるので」


(一度、足音が離れて、もう一度近づいてくる)


「はい。持ってきましたよ。ちゃんと、梵天が着いてるやつです」


「それじゃあ耳かきをしますので、昨日のように私の膝で横になってください……脇腹つまむのは、無しですよ?うっかり手元がブレてしまうかもしれないので、おにーさんのほうが危険なんですから」


「……鼓膜、破れたくないですよね?」


「ちょ!?なんでそんな一気に後ずさるんですか!?私がおにーさんにそんなことするはずないじゃないですか!」


「大丈夫ですって!急におにーさんが擽ったりとかしなければ、大丈夫ですから!ほら、怖くないですよ~」


「……そ、そんな初めて人から餌貰うような動物みたいににじりよらないでも……」


「……はい。それじゃあ始めていきますね」


「うーん……結構溜まってますね。おにーさん、最近耳掃除しました?……え?自分では怖くてあまりできない?確かに、自分でやるとちょっと怖いですもんね。どこまで耳に入れていいのか、わからないですもんね」


「でもでも、知ってました?あんまりやりすぎるのもダメみたいですよ?頻繁にやらない程度に、これからも耳かきしていきましょう」


「……かり、かり……こういうの、オノマトペって言うんでしたっけ。なんか、こういうのも言った方がいいって、サイトには書いてありました」


「かりかり……かりかり……あ、でっかいの取れた」


「どうですか、おにーさん。癒されてますか?……自分でやるより気持ちいい、ですか。それはありがとうございます!」


「……はい、これで片方は大分とれましたね。仕上げに、この梵天で……っと」


「ぽんぽん……これ、ぽんぽんで合ってるのかな……どうですか?おにーさん。私、あんまりこれ使わないので仕様とかよく分からないですけど……ふふ、気持ちいい、ですか」


「はい、それじゃあ反対の耳を見せてください。体勢は……おにーさんに任せます」


「……な、なんかお腹見つめられると少し恥ずかしいです。は、反対側、やって行きますね」


「……え、手を握って欲しい、ですか?別にいいですけど……どうしてです?」


「……性感帯?左耳がですか?……ふーん?」


「……いいこと聞いちゃった。あ、今『やっちまった』みたいな顔しましたね。大丈夫ですよ。今日は、何もしませんから」


「はい。それじゃあぎゅ~って、手を握りますねおにーさん……あらら、こっちも中々でっかいのが……」


「こそばゆかったら、直ぐに言ってくださいね……入れますよー」


「かり、かり……あ、今ギュッ、て私の手を握りましたね。なんだか可愛いです、おにーさん」


「んしょ……んしょ……あ、取れた……わぁ……おにーさんの耳垢、中々でっかいのがありますね……最近、耳が遠くなってきたって言ってた原因、これのせいじゃないですか?」


「最後に梵天、やりますね……ぽんぽん、ぽんぽんって、軽くやって……はい、おしまいですよおにーさん」


「どうでした?今日も中々癒されたと思いますけど……最高だった……にへへ、ありがとうございます。頑張って仕入れたかいがありました」


「また明日、ですね。明日はも~~っとおにーさんを癒しますから、覚悟しててくださいね」

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