第六章 縁結び
第277話 影渡の告白 -1-
夏の終わりの太陽はすっかり暮れかかっていて、森の上空を茜色に照らしている。
私たちはそんな中を、
広がる樹海の上を悠然と進むその姿は、さすがに堂々としている。
やがて視界の先に街の入り口の門が見えてきた。
門の近くにいるあやかしたちが私たちを見上げる中、
「ここまで送ってくれてありがとう、
私たちが背中から降りると、
「いや、なに。人間界とあやかし界の有事を未然に防ぐことができたのは、
すると、隣にいた蒼月さんが、ぽわんという音と共に人の姿に戻った。
「この度は助力いただき、感謝する。おかげで無事に戻ることができた。」
そう言って頭を下げた蒼月さんに、
それから、
「落ち着いたら天狗山にもぜひ遊びに来るがよい。せっかく封印が解けたというのに、天狗としか顔を合わさんので退屈ゆえ。」
その言葉に思わず
そして、
「・・・改めて考えると、すごい存在ですね。」
その場に残る余韻を感じながら、私はぽつりとつぶやく。
私のその言葉を聞いて、蒼月さんと
「では、先へ進みましょうか。」
色とりどりの渦はまるで万華鏡のように複雑で美しく、異界の境界線を象徴している。
「市ノ街までは、この道を歩けばすぐです。一度通ってますよね?」
「・・・本当に戻ってきたんだな。」
蒼月さんがつぶやき、私は軽くうなずく。
やっと帰って来られた嬉しさと、人間界でしなくてはならないことを思い出すたびに湧き上がる不安が混ざり合って、胸の中にふわりと複雑な感情が広がっていく。
ふと振り返ると、街の入り口が遠ざかっていくのが見えた。
それでも、今はまっすぐに前を向こう。
「早くみんなに会いたいですね。」
私がそう言うと、蒼月さんは静かに、だけど嬉しそうに微笑んでうなずいた。
そうして私たちは道の突き当たりに辿り着き、目の前には見慣れた市ノ街の大通りが現れた。
「とりあえず今日は解散して休もう。お互い色々あって疲れているだろう。」
蒼月さんが
「おまえが言っていた説明の機会だが、明日の朝、長老の屋敷に来てくれないか?そこで話を聞こう。」
「はい、わかりました。では、明日の朝、長老のお屋敷に伺います。」
事務的な会話をしている二人のそばでなんとなく大通りを行き交う人たちを眺めていると、
(そういえば長いこと行方不明だったんだっけ・・・)
番所に来ている子供たちが残念がっていたことを思い出す。
(あの子たちも人間界のお菓子や絵本、また手に入るようになってよかったな・・・)
私は私で
「受付処は明日の午後から再開しますね。」
そうして人だかりも散り散りとなり、しばらく経ってざわつきが収まると、
「では、我々も帰るか・・・」
そう言って、歩き出した。
「なんか・・・ほんの、今朝のことなんですよね・・・?」
蒼月さんのお母さんに呼ばれて、ご実家に伺ったのは今朝のことだ。
それから今回の件についての話を聞いているうちに、蒼月さんの妖力の暴走が起きて、気づいたら
そしてそのまま人間界・・・
なにこのジェットコースター・・・
そんなことを考えていたら、
「ははは、百面相でもしてるのかと思ったぞ。」
と、私を見下ろす蒼月さんは楽しそうに笑っている。
「しかし、そうだな・・・さすがにいろいろありすぎて疲れたな・・・腹も減ったし・・・小鞠殿に何か作っておいてもらうよう、連絡しておくか。」
そう言った蒼月さんは、ささっと伝書を送ると、
「さて、行くか。」
と、私の手をそっと取って、お屋敷までの道を歩き始めた。
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