第41話 襲来 -3-
3人でお茶を飲んでいると、程なくして翔夜くんが戻ってきた。
2人に気づいて、軽く会釈をすると、
「
と、
それからまた少しの間、4人でおまんじゅうを食べながらおしゃべりを楽しむ。
翔夜くんはすっかり
(ふふ、翔夜くんはいいお父さんになりそうだな。)
そんな微笑ましい気持ちで2人を見ていると、広間にある壁時計が
それを聞いたお母さんは、
「そろそろお
そう言って「まだ遊ぶ」とごねる
私もそろそろ帰らないと・・・と、飲み終えた湯呑みや急須を台所に運び、蒼月さんが戻るまではここにいるという翔夜くんにおまんじゅうを預けた。
そこで初めて、竹の皮の下に隠れていた髪飾りに気づいた。
「あれ?これって・・・
私の言葉に、翔夜くんが顔をこちらに向ける。
「あ、そうだね。いつ落としたんだろう。」
そうして、首を傾げていつだ?って呟いている翔夜くんに、
「私、ちょっと追いかけてみるよ!野菜市に寄っていくって言ってたから、まだそこにいるかもしれないし。」
そう伝えるや否や、翔夜くんが何か言っているのも聞かずに飛び出した。
野菜市は番所を出て比較的すぐの場所にある。まだいるといいな、と思いながら、小走りでそこに向かう。
程なくして野菜市に到着すると、時間のせいもあるのか少し人手は多いものの、30メートルほど先にふわふわの白い髪からちょこんと2本の角が出た小さな女の子の後ろ姿が見えた。
人混みを縫うようにそこを目掛けて早歩きで進む。
「やっと見つけた・・・」
ふと耳元でそんな声が聞こえ、キョロキョロと周りを見回してみるも、誰も知り合いはいない。
(あ、見失っちゃう)
その声に気を取られて
そして、ついに2人に追いついた私は、無事、髪飾りを返すことができた。
再び何度も頭を下げてお礼を言うお母さんに「気にしないでくださいー」と言ってその場を去る頃には、もう夕闇が迫り始めていた。
(
野菜市の中を人の流れに沿って出口に向かいながら、子供の頃のことを思い出す。
歩きながら道なりに並ぶ出店に目を向けると、知っている野菜もあれば初めてみる野菜もあって意外と楽しい。
交換するものを何も持っていないので見るだけなのだけど、ちょっと外国の市場を覗いている気分になる。
(今日の夕飯はなんだろうな〜)
千鶴さんの作るご飯はどれも美味しくてつい食べ過ぎてしまうので、絶対こちらに来てから体重が増えていると思われる。
(筋トレくらいしたほうがいいのかな・・・)
この街ではジョギングしている人を見かけないので、筋トレくらいしか思いつかない。
そんなことを考えながら歩いていると、背後にふと人の気配を感じて振り返った。
いや・・・振り返ったはずだったのに。
視界が急に真っ暗になり、私は意識を手放した。
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