男、突っ走る!

壽倉雅

第1話

2011年4月。僕は、自宅から自転車30分圏内の地元の高校に入学をした。東日本大震災発生から1ヶ月も経っておらず、日本全体がまだ自粛ムードとなっていた頃であった。

推薦入学で受かったが、実はこの推薦入学の数日前、当時小学生だった弟からインフルエンザをうつされてしまい、必死で咳を抑えながら推薦入学の面接を受けた。この時ばかり、弟を恨んだことはない。


期待と不安を胸に、高校の門を入る。クラス編成を確認し、教室に入ると、中学からの友人が数名いたことで安心感があった。が、よく周囲を見てみると、男子ばかり。いや、正確に言えば廊下側の一列に女子が7人座っている。僕のクラスは、男子33人、女子7人という異色の編成だったのだ。一体どんな1年2組のクラスになるのかと、僕はふと思った。

入学式を終えた日、僕は福岡に単身赴任中の父に報告をした。父の口からは何も聞かされなかったが、電話が終わった後、母から単身赴任の期間が延長するかもしれないという話を聞かされた。後に、結局2年延期することが決まった。


家の話はさておき、入学式からの3日間はオリエンテーションがメインであった。そして休みが明け、一週間の最初という月曜日が始まった。この3日間、僕は一つ前の席に座っているKに対しての印象があまりよくはなかった。僕の一つ後ろの席に座っているJとKは同じ中学校らしく、先週は僕を挟んで会話をしていた。僕にとっては、それが正直苦痛な時間で、何なら席を変えてもらいたいぐらいだった。が、Kからいきなり「おはよう」と声をかけられた。正直、驚いた。でも、案外話してみるとKは周りを巻き込む力があり、Jも紹介され、すっかり2人と仲良くなった。


Kは中学時代から野球部のエース。それに比べて、僕は大の運動音痴。体育の授業での温度差は激しく、ある意味では凹凸コンビと言っても良いだろう。新しい環境での生活の不安はいつの間にか消えていた。

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