第44話 白頭鷲王は宰相に詰問される
「……陛下どうされましたか??」
そう話しかけて来たのは宰相で有り、最側近のひとりのハースト侯爵だった。この男の一族は祖父の代までずっと宰相職を歴任してきたが、父が皇帝になった際に一度任を外され、俺様が皇帝になる際に協力してくれたこともあり宰相職に返り咲いた。
冷静沈着で優秀だが『鷲の目』への強い信仰がある部分だけがいただけない男である。
「いや、特になにもないが……」
「いいえ、そんなはずありません。陛下の美しい『鷲の目』の黄金がくすんでいます。その場合、間違いなくなにか悩みがあるはずです」
ハースト侯爵は狂気に満ちた眼差しでこちらを見ている。背筋に悪寒を感じながら押し黙る。
友好記念式典の時に、兄がクーデターを引き起こしたことで現在、その刑罰について話し合われているがほぼ間違いなく死刑だということは理解していた。
それについては、国を転覆させようという大罪を犯したのだから仕方なくはあるが、複雑な気持ちも抱いていた。
元々、兄と俺様の接点はそれほどないのだが少しの期間だけふたりで遊んだことがあった。
あの時は、お互い幼く、そもそも俺様は白頭鷲の雛状態だったので、あまり立場を理解していなかったこともあったが、楽しかったことをはっきり覚えている。
けれど、周囲の大人に見つかり引き離されてからは人型になるまで再会することはなかった。
ほんの少しの間の思い出、本当にそれだけなのに俺様にとってはとても大切だった。兄はあの日の記憶など覚えていないだろうが、俺様には幼い頃の記憶ではルーナに出会った以外で楽しかったのはあの日々だけだった。
捕らえられた兄と面会もしたが、ただ憎しみに満ちた目を向けられるだけで話すことはなかった。
だからかもしれない、心の中に言い知れない不安感が生まれてしまっていた。
それは、今まで深く人と中々深くかかわることができなかった、俺様がルーナに愛され続けることができるのかというものだった。
ー『鷲の目』を持つ番同士なのだから、離れることなどない。
ずっとそう確信していた。けれど、よく考えればそれはあくまでおとぎ話のようなものであり、俺様はルーナに今までなにひとつできていないことに気づいてしまった。
そして、それに気づいた時急に怖くて怖くてたまらなくなり、さらにルーナへ沢山の招待状や手紙が届くのを見てついに部屋から出れないように魔法を使ってしまった。
そこまで考えている間もハースト侯爵の狂気じみた眼差しがこちらを見つめ続けていてしかもどんどん近づいてそろそろ顔がくっつくくらいの至近距離で怖いし気持ち悪かったので絞り出すように、
「……ルーナを、その閉じ込めてしまっている」
と言ってしまった。
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