第43話 白頭鷲姫は白頭鷲王の孤独を知る
「私が話せることはこれくらいだが……参考になっただろうか??」
エドワードお兄様の話を聞いて、私はその時はじめてユーリの内面に触れた気がした。
私にとってのユーリは、可愛い白頭鷲の雛だったり、大きくなって懐いてくるいい子の白頭鷲、つまり人外としての付き合いの方が長いため人間としてのユーリが抱いている絶望や悲しみへの理解が足りていなかったのだ。
ユーリの今までについては一度説明されたが、それはあくまで事実を述べたものであってその心情を理解できていなかった。
エドワードお兄様の話の中のユーリは、なにひとつ身についていない状態でずっと家族から放置されていたことが分かった。
本来なら、そこでマナーを覚えたり、勉強したりするのにとても苦労するところだが、ユーリには『鷲の目』があってその部分の苦労はしなかった。
ちなみに私は、最近まで眼鏡をかけていたため『鷲の目』の効果で簡単に全てが覚えられたりはしなかった。
けれど、だからと言って家族からないがしろにされ続けた痛みが消える訳ではない。さらに、この間の友好記念式典で、クーデターの首謀者が義兄だったこともあの時はユーリに特に変わった様子はなかったけれど内心傷ついていたのだろう。
あの時のユーリを睨んでいた義兄の瞳を思い出す。そこに愛情も親愛もないことは誰が見ても明らかだった。
学生時代のユーリの話では、あの義兄がユーリに優しかったこともあったらしい。
誰からも放置されて孤独だったユーリ。小さな優しさを糧に生きなければいけなかったそうしなければいけなかった過去を想像した時、頬を一粒の涙が伝い落ちた。
「私は、ユーリのこと、人間のユーリのことを全然知らなかったのですね」
「……それは仕方ない。ふたりは物理的に交わらない場所で育ったのだから」
エドワードお兄様の言葉は優しかったけれど、私は白頭鷲の雛時代のユーリを思い出していた。ユーリはさみしがり屋で甘えん坊な雛だった。
私の側を離れることを極端に恐れて、離れると激しく呼び鳴きをしていた。ユーリの本質は甘えん坊のさみしがり屋さんなのだ。
私は机の上に積み重なったありとあらゆる誘いの手紙を見つめた。
私とエドワルダを今閉じ込めているのは、ユーリの中で私達がどこかへ行ってしまうのではないかと言う懸念を感じたからかもしれない。
けれど、だとしたらユーリと対話する必要がある。
「エドワードお兄様、ありがとうございます。やはり、ユーリとの対話が必要です」
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