第18話 みにくいアヒル姫は羽毛のつもりが筋肉に顔を埋めてしまう
『全く。お前の姫はとても鈍感そうだな、ユーリ』
ユリアが呆れた様子でユーリに話しかけた。ユーリはユリアの子なので人語を理解している。本当に賢い子だなという眼差しでユーリを見つめていると、私の方へユーリがやってきた。
「……ルーナ」
それは低い男性の声だった。どこかで聞いたことがある声に似ている気がしたが驚いて声の主を探すが見当たらない。
「……ずっと隠していてすまないがこの状態でもしゃべれるのだ」
オロオロと周囲を探していた私を、決意したような黄金の瞳でユーリが見つめていることに気づいた。つまりこの声はユーリのものということになる。
「うそ、ユーリ……すごい!!」
元々賢いと思っていたし、聖獣の子であるのなら特別なのかもしれないがそれでもここまでちゃんと人の言葉を話すなんて鳥界の奇跡である。
私は思わずユーリを抱きしめていた。目を瞑りその柔らかい羽毛に顔を埋めて息を吸い込む。鳥を吸うという行為は鳥好きとしてやめられないなと思っているが、なぜか羽毛の香しい感覚を感じることなくむしろ固いものに顔を埋めていることに気づいて目を開くと、目の前に筋肉があった。正確にはものすごく美しい均整のとれた筋肉だったが、私が求めていたのは筋肉ではなく羽毛、柔らかな鳥の胸毛だ。
あまりのことに驚いて目を見開くとそこには、全裸のユリウス皇帝陛下が困ったような顔で立っていた。
「あ、あの、ユリウス皇帝陛下なんで……」
驚きのあまり絶句する私にユリウス皇帝陛下が何かを決意したように口を開いた。
「ルーナがユーリと呼んでいる白頭鷲は……」
ユリウス皇帝陛下が現在私を全裸で抱きしめている理由を語ろうとしたその時だった。
「見つけたぞ、ユリウス!!!」
聞き覚えのある男性の雄たけびが聞こえると同時に光の速さである人物がこちらへやってきた。
『……あれは『鷹』か』
ユリアがそう呟くと同時に目の前にひとりの男性、いや、この人は……、
「お兄様??」
そこには一番上の兄であるエドワードお兄様が立っていた。黒髪に青い瞳をした男らしい精悍な顔立ちでユリウス皇帝陛下を睨みつけていた。
「ちがう、ルーナ、にぃにだ。そして、ユリウス!!破廉恥な姿で嫁入り前の可愛い妹に抱き着くなど、にぃにとして許さん!!」
いきなり現れたのもそうだが、ユリウス皇帝陛下を呼びつけにするなんて、不敬すぎて殺されてしまうかもしれない。しかし、ユリウス皇帝陛下は意外にも、エドワードお兄様に対してバツが悪そうな顔をしている。
「誤解だ、テディ。俺様は……」
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