みにくいアヒル姫は白鷲王にさらわれて溺愛監禁ライフを送ることになりました

雛あひる

第1話 鷹から生まれたみにくいアヒル

とびが鷹を生む』そんなことわざがある。

平凡な親がすぐれた子を生んだという意味だが、ここホーク王国ではそれを揶揄した以下の言葉が貴族から平民にまで浸透していた。


『鷹がアヒルを生んだ』

鷹とは、元子爵令嬢でありながらもその美貌で王太子だった現国王の心を射止めた現王妃を指し、アヒルとはその王妃の娘でありながら王妃にも王にも似ていないと揶揄され続けている姫、つまり私を指していた。


本当に不思議なのだが、私は家族の誰にも似ていない。


お母様はもちろん、国王であるお父様もお兄様方ふたりもみんな美しい人達なのに私だけが美しいとは程遠かった。しかし、私は間違いなくお父様の子で、それは神殿にある親子鑑定の神具にて証明されていた。


「どうして私だけみにくいのかしら……」


無駄に大きく装飾過多な前時代のデザインの鏡に映し出される、自身の姿は今日も美しさからはかけ離れていた。


大きく分厚い眼鏡にうつる小さな青い瞳と、ボサボサで艶のない白い髪をしたその姿に思わず大きなため息が出た。


しかし、落ち込んでなどいられなかった。


今日は建国記念の日の式典があり王族は全員参加が義務付けられているため、早く準備をする必要があった。


私は急いでその髪に櫛を通したら、あまりに急いだせいで櫛に髪が引っ張られて鈍い痛みが走った。きめの細かすぎる櫛に私のゴワゴワの髪は引っかかってしまうのだ。


それでも早く身支度を終わらせなければいけないのでなんとか櫛が通るまで髪を何度も梳かしたが鏡の中の私は冴えないままだった。


(私は髪質までおかしいのかしら……)


学園で出会ったご令嬢たちはいつも艶々の髪に美しいお化粧もしてみんなあんなに美しくでも準備ができるのに私にはそれが難しかった。


勉学やマナーは人並み以上に出来るようになれたが、これだけは苦手だった。


しかし、悩んだところで不器用が治るわけではないのでとりあえず自身が出来ることを最大限できるように努力し続けているが未だに艶々の髪を手に入れることはできていないし、化粧も壊滅的に苦手で一度無理にしたそれは異常な白塗りと真っ赤なチークにより道化師みたいで明らかに周りの失笑を買ってしまった。それ以来、最低限の薄化粧のみを日々することにしている。


なんとか、身支度を整えた私は、お母様が準備してくださったドレスを拡げて小さくため息をついてしまった。


装飾品も、化粧品も、ドレスも私には選ぶ権利はなくお母様が選んだものを使用している。


私達の生活は国民の血税から賄われているので倹約するべきだと教育を受けて来たのでそれ自体は気にならないのだが、目の前の前時代の型で作られた異常に肩の部分が協調されたラクダ色とどどめ色で構成されたドレスを着ないといけないと思うと憂鬱だった。


(せめて水色や淡い色のドレスだったらな……)


何気なく窓の外を眺めた時、私はベランダに何かの気配を感じ、ゆっくりと窓を開けた。


そこには1羽の白頭鷲が居た。普通はビックリすると思うけど私はその白頭鷲をよく知っていたので怯えたりはしなかった。


「ユーリ??」


名前を呼んで身をかがめるとまるで大型の犬のようにユーリは私の方に駆け寄りそしてグルグルと喉を鳴らしながら私の頬にそのもふもふした頭を寄せた。


ユーリは昔、怪我をしているところを治癒魔法で治して以来、私に懐いていてこうやっていつもベランダに遊びに来るのだ。


ひとしきりモフったところで、式典の準備が途中だったことに気付いた。


「ユーリ、ごめんなさい。今日は建国記念の式典があるから準備をしないといけないの」


本当はユーリともっと居たいけど今は、準備が最優先だから、断腸の想いでもふるのをやめて準備の続きに取り掛かった。

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