(24)7月9日 火曜日
着信アラート音。画面上の『応答』表示をスワイプする。
***
「おはようございます。7月9日火曜日、午前7時くらいをお知らせします」
「
「そろそろ起こさなくても大丈夫でしょうか──まあ、こっちも習慣になってしまっているので、別にやめなくてもいいんですけど」
「ただ──ちょっと嫌なことを聞いてしまって」
「あ、その前に……昨日、プールの授業ありましたよね。あの、それで」
「前に、わたしの水着姿なんていくら見ても構わない──みたいなこと、わたし言いましたけど、やっぱり取り消してください」
「実際、見ましたか?」
「────。少し見た、ですか。まあ、少しなら、別に良いですけど」
「あのですね。昨日、『見ていてなんとなく不安になる出席番号8番を見守る会』にあれこれ問い詰めたんですよ。そもそも『毎朝起こす係』にわたしが指名された理由もよく分からなかったですし」
「それで、その」
「その──」
「『見ていてなんとなく不安になる出席番号8番を見守る会』の正式名称が、『見ていてなんとなく不安になる出席番号8番の片想いを見守る会』だと知ってしまい」
「その片想いの相手が、犬童つむぎ──つまりわたしであると」
「────」
「もちろん、わたしは信じていませんし──わたしなんかが好かれる理由なんて思い当たらないですし」
「でも、万が一、そうである可能性を考えてしまうと、水着姿を見られるのが恥ずかしく思えてきて」
「他の子より貧相な体をしていますからね。見比べられたくないというか」
「このモーニングコールもやめた方が良いのか──なんてことも考えてしまい。変に期待させる行動は取らない方が良いですよね──いやでも、これは缶コーヒーのためにやっていることなので、やめる理由もないんですけど、でも、なんか」
「はぁ……。頭の中がぐちゃぐちゃです。テストの結果とかどうでも良くなりました。まあ、あなたは数学の結果が分かるまで生きた心地がしないでしょうけど」
「変なことを聞いたせいで、今日は電話しているだけなのに汗がやばいです。そろそろ切ります。学校でお会いしましょう」
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