片想いしているクラスメイトの女の子が毎朝電話をかけてくるようになった。

猫とホウキ

(1)6月10日 月曜日

※ASMRかどうかはともかくASMR応募作のため、ヒロインの一人語りで進行します。



***



 スマートフォンから、間の抜けたような変則的なリズムの──それでいて耳障りなアラーム音が鳴り響いている。


 その音は画面上の『応答』表示をスワイプすることで止まった。そして通話状態になったスマートフォンからは女性の声が聞こえてくる。


 機械のアナウンス音とも思えるほど、落ち着きがあって淡々とした口調と声色こわいろ



***



「おはようございます」


「突然お電話差し上げて申し訳ございません。朝比奈川あさひながわ高校二年C組──あなたと同じクラスの犬童いんどうです。ほとんど話したことないですけど、誰のことか分かりますか?」


「────。はい、その通りです。その席に座っている人です。分かるなら良かった。わたしってあまり目立つほうではないと思うので、認識できているか心配でした」


「あなたのケータイ番号は、あなたのご友人のご友人からお聞きしました。ご本人であるあなたには事前に伝えていなかったので通話拒否されないか心配だったのですけど、応答してくれて良かったです」


「それで用件なのですが、わたし、──に着任いたしまして」


「つきましては、モーニングコールをさせていただきました。なので目を覚ましてくれたのなら、この電話の用件は終わりです」


「────。なるほど、『びっくりして完全に目が覚めた』、と。そうですよね。普段話もしない相手からいきなり電話があったら驚きますよね」


「────。『それもあるけど、相手が犬童さんだったから余計に驚いた』、と。なにか含みのある言い方ですね」


「あの、その話の続きを聞きたいという気持ちもありますけど、一旦、切りましょうか。早く支度したくを始めないと遅刻してしまいますよ。わたしもまだ──実はベッドに寝転がっていて、これから学校に行く準備をしないといけないのです。まあ、あなたよりも学校に近いので、まだ時間に余裕はありますけど」


「────。『そもそも毎朝起こす係ってなに?』、ですか。なんでしょうね。ええ、なんなんでしょう。実はわたしもよく分かっていません」


「続きはまた今度。それでは学校でお会いしましょう」

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