自尊心

北 条猿(Kita Jyouen)

自尊心

僕はいつも、持っている。


左手にべったりとくっついて離れない、ずしんと重い透明なハコを。


透明だから、ほかの人には見えない。でも、僕にははっきりとハコが見えている。


未来の僕が、この透明なハコの輪郭に実体をはめ込んで見せてくれる。


いつも、ハコが実体で満たされる日を心待ちにしていた。


歳を重ねるたびに、ハコはますます大きく、重くなった。


ついに片腕で支えきれなくなった。だから僕は、ハコを両腕で支えるようになった。


ある日、旧友と出会った。彼は言った。


「僕は、行動したから変わることができたんだ」


これまでの自分を振り返った。


僕は、地位や名声が自然と湧いてくるのをずっと待っていた。


これではだめだ。欲しかった未来を得るには、行動しなくては。


僕は自分を奮い立たせるために、頬を平手で叩こうとした。




あ、もう手が動かない

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自尊心 北 条猿(Kita Jyouen) @nighttwice

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