第23話 増えるストロー(23日目・ストロー)
ストローが、一本多い。
(気持ち悪いな)
そうは思っても、どうすれば良いのか、良い策が浮かばない。そう思う内、芝はまた、十朱とファミレスに行った。
ドリンクバーで、芝が烏龍茶を入れたグラスを手に戻ろうと振り向くと、十朱がいて芝を見ていた。否、芝のグラスを見ている。見ると、やはり一本だったはずのストローが二本に増えていた。いつの間に。芝は目を丸くする。
「タキ、これは」
「けーご、ちょい待ち」
二人きりの時、芝は十朱のことをタキ、と呼んでいる。十朱の名前、
「勝手にこいつの飲み物飲めるのは、俺だけだから。お前はお呼びじゃねーの」
半分くらい飲んだ後、ストローから口を離し、十朱はそう言って空を叩く。何かを払うような動作。芝は呆気に取られた様子で、それを見ている。
「……タキ、何か居た?」
「居たな。よく分かんねぇけど、お前のグラスにストロー差して飲もうとしてたから俺が先に飲んだ」
あっけらかんと言う十朱に、芝はしばらくの後、笑い出す。
「ありがとう、タキ」
「俺も烏龍茶にしよっかなー」
芝の肩を叩き、十朱も笑った。
それから、芝の飲み物にストローが増えることは無くなった。
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