第179話 大事な仲間と ★シルビー SIDE

 ボクとソラ様は秘密裏に、リオの為に準備されたはずのお金が何処へ行ったのかを、ずっと探していたんだ。そして、リオのお金がある場所と、誰が関わったかも突き止めていた。そして、捕まえるための証拠となる物や記録が何処に隠されているかも、とっくに探し終わっていたのだった。


『シルビー、これで証拠は全て揃ったんじゃない〜?』


『全部揃ったけど、運ぶの大変だぁ〜』


『証拠のほとんどが紙だから仕方ないね〜。紙以外は金貨だし〜』


『本当にね〜。金貨って、案外重いよね〜』

 

『そうだね〜。でも、どうにかして運ばないと〜』


 屋敷の外には王様がつけてくれた影が5人居るから、そこまで運べれば問題無いんだけどね。ボクとソラ様では、一気に全てを持ち運ぶ事は出来ない。猫と狐の姿だからね……少しずつなら浮かせて移動させるぐらいなら出来るんだけど、ボク達も最初から浮いているからか、重い物を浮かせて運ぶのは難しいんだよね。


『ねぇ、ソラ様〜。ライトにお願いしてみようよ〜』


『あぁ、確かに人型だから両手使えるし、オイラ達よりは沢山運べるかも〜?』


『魔力を辿られると面倒だからって、荷物を運ぶ事にも魔法が使えないのは痛いよね〜。どちらにしろ、転移しないで少しずつ運ぶのなら、せめて外の影達が待っている場所まで移動させるための、人の力が必要になると思うよ〜』


『確かにね〜。転移は出発地点に魔力が残るだけだから、呼ぶ事は可能だけど、移動はどうしようか〜?』


『ライトは隠密魔法が使えるのかなぁ〜?それ次第だよね〜』


『聞いてみた方が早いかな〜?シルビー、頼める〜?』


『了解〜!』


 えっと、ライトに念話するんだよね?ボクからは初めて念話するけど、答えてくれるかなぁ?


『ライト〜。今、返事出来る〜?』


『ん?あぁ、確か……シルビーだったか?』


『うん!そうだよ〜。覚えていてくれて嬉しいよ〜』


『そ、そうか。吾輩は、シルビーの尻尾がとても心地良さそうで、ずっと気になっていたんだ』


 ボクの沢山ある尻尾に、ライトからの視線を確かに感じていたけれど、実は触りたかったからだなんて思っても居なかったから、少し驚いたよ。


『そうなの〜?今度触っても良いよ〜。今日はね、お願いがあって連絡したんだよ〜』


『そうなのか。では、そちらへ行こうか?』


『あ、最終的には来て欲しいんだけど、先ずは説明と、いくつか質問しても良い〜?失敗は許されないミッションなんだ〜』


『ふぅん?そうなんだな。取り敢えず話を聞いてみようか。吾輩に何をして欲しいんだ?』


『えっとね、ボクとソラ様では運ばない荷物を、屋敷の外にいる影のおじちゃん達に渡して欲しいんだ〜。それでね、こっちで魔法は使いたく無いの。ライトは隠密魔法を自分にかけられる〜?』


『あぁ、隠密魔法なら使える様になったぞ。魔力のコントロールも随分上手くなったと、王様に褒めて貰ったから大丈夫だと思う』


 王様が褒めてくれたのであれば、随分上手いと言う事だから大丈夫だね。王様はボク達がちゃんと生きて行ける様に、かなり厳し目に評価してくれるからね。


『じゃあ、隠密魔法をかけて、ソラ様とボクがいる場所まで転移して来てくれる〜?』


『分かった』


 ポンッ!とライトが目の前に現れた。久々に会ったライトは、とても生き生きして見えるね。お勉強も頑張っているんだろうなぁ。証拠の移動が終わったら、リオに報告して、ライトを褒めて貰おうね。恐らくそれが、ライトに取って、1番のご褒美だと思うから。


『ライト〜、あそこに積んである紙類と、金貨が入った布袋がボク達には持てないんだけど、お願いして良い〜?』


『あぁ、分かった。確かに、小動物の姿で運ぶのは大変そうだな。それで、あそこに居る黒ずくめの男達に渡して来れば良いのか?』


 ライトは窓の外を指差して、影のおじちゃん達の位置を確認した。説明しなくても、ちゃんと分かってくれていて助かるね。


『うん、そうだよ〜。えぇっ?窓から飛び降りるの?』


 荷物を抱えたライトは、窓の枠に手と足をかけ、身を乗り出そうとしていた。


『このくらいの高さなら問題無い。早く終わらせた方が良いんだろう?5回も往復すれば、終わるだろうから急ごう』


『ライト、ありがとう』


 ソラ様が一言、ライトを労ったね。ソラ様はまだ、ライトに慣れていないみたいだね。同じ精霊とは認めているけれど、ライトが放っていた、殺気に似た気持ち悪さを、まだ忘れられないんだって言ってたよ。


『……吾輩に出来る事なら、いくらでも頼ってください』


『うん、助かるよ。何かあったら、頼むね』


『はい』


 ライトは王子であるソラ様に対して緊張してるんだろうね。2人とも少しオロオロしてたけれど、ソラ様が紙類に手を伸ばしたから、ライトも手に持った荷物をしっかりと抱いて、窓から飛び降りた。そして、影のおじちゃん達に荷物を手渡して戻って来る。窓のフチに手をかけて、軽々と部屋の中へ入って来た。


『もう少し多く持てそうだ。うん、これぐらいだな。それでは渡して来る』


 ライトはそれから数回、荷物を持っては窓から飛び降り、影に荷物を預けてを繰り返した。あっという間に証拠は外に運び出され、今回の任務も無事に終わったのだった。


 ⭐︎⭐︎⭐︎


 屋敷の外で転移し、影のおじちゃん達も連れて、王様の部屋に戻って来た。ボクはリオを連れて来る為に、ソラ様にお伺いを立てる。


「ソラ様〜、ライトが頑張ってくれたから、リオに褒めて貰っても良い〜?」


「うん、良いよ〜。ライトのお陰で、あっという間に終わったから助かったよね〜。オイラがリオに念話して、ここに呼ぶよ〜」


 ソラ様に呼ばれたリオは、優しい笑顔でボク達を労ってくれる。


「ソラ、シルビー。任務、ご苦労様でした。あら、ライトも居るのね。元気そうで何よりだわ」


「あぁ、リオ。久しいな」


「今日はね〜、ライトがボク達の任務を手伝ってくれたから、早く終わったんだよ〜」


「まぁ!そうだったのね。ライト、ありがとう」


「あぁ、吾輩が手伝える事なら、何でもするから言ってくれ」


「ふふっ、ありがとう。頼もしくなったわね、ライト」


「そ、そうか?勉強は頑張ってるぞ。吾輩は、もっと沢山の知識をつけたいと思っているぞ」


 リオに褒められて照れているライトは、前に比べると笑顔が増えたし、立ち振る舞いが堂々として見えた。


「そうなのね。知りたい事があったら聞いてね。本が欲しいなら探しておくわ。私の部屋にも、カミルの執務室にも本は沢山あるから、気になる本があったら貸してあげるから言ってね」


「ありがとう、リオ。精霊界にある本は、ほぼ読み切ってしまったから助かる。今日は帰るが、本を借りに近々顔を出すぞ」


「ええ、分かったわ。待ってるわね。今日は本当にありがとう」


「ああ、またな」


 ポンッ!と消えたライトは、ボクにはとてもカッコ良く見えた。


 ⭐︎⭐︎⭐︎


 証拠を王様とカミルの前に全て並べて、ボクとソラ様は説明を始めたのだが……


「な、なんと……こいつらが?」


「間違い無いよ〜」


「また侯爵家の人間が減りますなぁ……」


「あ、他にも余罪があると思うよ〜。パーティーに集まってるニンゲンも、仲間なんじゃないかなぁ?」


「きっちり隅々まで調べねばならんな。影の長よ、頼まれてくれるか?」


「御意!」


「ふぅ〜、オイラ達が手伝うのはここまでだよ〜。後はちゃんとオイラ達が納得する結果を出してね〜?」


「あぁ、勿論だとも。後は任せておくれ」


「王様の言葉を信じるよ〜。オイラ達は疲れたから戻るね〜」


「王様〜、またね〜」


 今日も王様と宰相の近くでバイバイと手を振って、ソラ様とばーちゃんのお家に帰って来たよ。ばーちゃんとリオが準備してくれた、ボクとソラ様が一緒にお昼寝出来る大きめのソファで、ソラ様と少し休憩する予定だよ。でも、気持ちの良いソファの上で目を閉じたら、いつの間にか眠ってしまったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る