第168話 侍女を捜査だ! ★ソラ SIDE

 先日リオが提案した、王妃の選んだ侍女2人を調査するミッションをシルビーと遂行すいこうする事になった。すっごく楽しみだったんだよねー。堂々と怒られずに聞き耳を立てたり出来て、リオに報告したらめられるんでしょう?最高だよねー!って事で、今日の午後から調査する事になったよー。


 今回調査するのは、王妃の侍女であるメルとアンで、孤児院の出身らしいねー。本来であれば貴族の娘をかかえる事が多いのだが、王妃は孤児院の子でも王宮で働けるという実例じつれいを出したくて、自身の侍女に孤児を選んだと聞いているよー。


 その中でも仕事が出来て、近くに置いている侍女2人にしぼった様なのだけど……2人ともアウトだったらどうするんだろうねー?そのどちらかが情報を流していて、王妃を表に出せなくしているとかー?面白そうだけど、リオ達が大変になるだろうから何事なにごとも無く終わって欲しいかなー。


 さて、王妃が1番信用しているというメルを尾行びこうするよー。今日はリオに隠密魔法を掛けてもらったから、フワフワと浮いて後ろから追跡ついせきするよー。シルビーも一緒だから、見落とすような事は無いと思うよー。


 ふむ、ふむ。井戸から水をんで来て、王妃の部屋の入り口を掃除し始めたみたいだねー。貴族の侍女はひざをついて仕事をするのは嫌がるけど、メルって子は掃除に集中してるからか、服がよごれる事も気にしてないみたいだねー。今の所は良い子じゃないかなぁー?


『シルビー、メルは良い子じゃない~?』


『ボクも、丁寧ていねいにお掃除頑張ってる良い子だと思う~』


『今日のメルは良い子だったって報告しよう~』


『は~い』


『じゃあ次は、アンって子の所だね~』


 オイラとシルビーは、今日が非番だったアンの部屋に向かったよー。部屋の場所はあらかじめ調べておいたから、シルビーにはオイラの尻尾しっぽつかまって貰ったら転移魔法でお邪魔じゃまするよー。


『あれ~?何か書き物してるね~』


 アンの部屋には手紙を書けるぐらいの大きさの机と、本が数冊置ける本棚、侍女達が使う普通のベッドが2つあった。壁側かべがわにクローゼットもある。この部屋は、どうやら2人部屋みたいだねー。


『この子、文字が書けるんだね~。珍しいね~』


『あれ〜?文字が書ける子って珍しいっけ~?』


『ソラ様、この子達は孤児だって言ってたよね~?貴族の子供でも女の子の識字率しきじりつ極端きょくたんに低いよ~』


 シルビーに指摘してきされ、感じた違和感いわかんの正体が分かったねー。


『あー、そうだったね……リオが何でも出来るから、それが普通になってたよ~。まぁ、リオの周りにいる女の子はリズとニーナとバーちゃんだしね~。さすがシルビー、教えてくれてありがと~』


『いえいえ~。アンが何を書いてるのか見てみよ~』


『そうだね~。今日のページはまだ空白だね~。昨日のページは……「今日も王妃様は元気が無かったので心配です。早くお元気になって欲しいです」って書いてあるね~』


 このアンって子、文字も滅茶苦茶キレイだねー。貴族の子が孤児になったのかなぁー?何年前から居るのか、どう言う経緯けいいで来たのかを調べる必要はあるかもねー?


『ほかのページも見たいね~。なんだか、事務的な日記だね~』


『うん、なんだかおかしいね~?毎日こんな日記つけてるのかなぁ~?リオは楽しかった事とか、怒られたけど反省する事とかを書いてるよ~』


『カミルはリオのこんな仕草が可愛かったとか~、お母さんに会った日は泣いてしまいそうだったとか~。1番沢山文字が書いてあったのは、プロポーズした日だったよ~』


 んー、やっぱり知り合いの日記の内容って、ムズムズするぐらい恥ずかしいよねー。リオとカミルはオイラ達に隠し事もしないから、見られる事になれちゃったのかなぁー?確かに2人の気持ちも分かってるし、言いたい事も分かるけど、それでもそれを見てるこっちは恥ずかしくなるんだよねー。


『え~?さかのぼって読んだの~?プライバシーの侵害しんがいだって怒られないの~?』


『カミルは怒らないよ~。読める場所に置いておいた自分が悪いって思うタイプ~』


『さすが王太子だね~。機密きみつ文書の管理がしっかりしてる~』


『だね~』


『今日はアンが日記をどこにしまうのかだけを確認したら終わりにしよ~。日記の他のページも読んで見ないとね~』


『うん、そうしよ~』


 シルビーと意見が一致したので、日記を隠したクローゼットの中を確認して帰る事にしたよー。


 ⭐︎⭐︎⭐︎


「って感じで、5日間調査ちょうさしたよ~。メルは真面目で、服が汚れても気にせず一生懸命お仕事頑張ってた良い子~。アンはちょっと変わってる~?オイラ達の知ってる人間の行動とは違ってたかな~」


「ソラ、どう違っていたの?」


「アンは文字が書けて、毎日日記を書いてたんだけど、王妃様の病気が早く治りますようにって書いてた~」


「それの何がおかしいの?」


「リオだって、日記にはその日起こった事とか、気になった事を書くでしょ~?王妃様の完治を願っていたとしても、毎日日記に書く事はしないでしょ~?」


「言われてみればそうね?」


「何だか、自分は王妃の事を心から心配していると思わせたいのかなって感じたよ。他人に見られる事を前提ぜんていに書いている様だ」


 カミルが言いたい事を理解してくれたみたいだね〜。


「なるほど、そのアンって子がうたがわれた時に、部屋を捜索されて日記が見つかって、こんなに王妃様を案じてたのにーって事ね?」


「うん。考え過ぎだったとしても、そう感じられるってだけで信用は出来ないかな。アンはもう一度、身辺調査を詳しくしておくから、ソラ達も安心して良いからね」


 さすがカミルだね。言わんとする事を先回ってやってくれるのはありがたいよねー。


「じゃあ、味方につけるのはメルって子になるわね。ねぇ、カミル……」


「そうだなぁ……身元を隠して、侍女として護衛の出来るリューと……それでも護衛が少ないから、影も数人連れて行くなら……かな」


「それで良いからお願いしたいわ。自分の目で確認したいの」


 ん?何だろうね?オイラとシルビーは顔を見合わせて、首をかしげた。何処どこかに行くみたいだねー?


「何の話し~?」


「シルビー、リオは彼女たちがいた孤児院に行ってみたいんだって」


「そんな事、一言も言って無かったのにね~。長年連れ添った夫婦みたいだね~」


 シルビーが揶揄からかうと、カミルの顔が一瞬で真っ赤になったよー。今更だよねー?いつもあれだけ所構わず砂糖吐いてるのにって思うのは、オイラだけなのかなー?まぁ、取り敢えず侍女の件はこれで良いみたいだねー。さぁ、次は何が起こるのか楽しみだなぁー。

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