第125話 御披露目の相談と防犯 ★カミル SIDE→デューク SIDE
今日は、帝国から皇帝を王国に確実に連れて来るための会議だ。デュルギス王国側は国王陛下、宰相、僕、リオ、デューク。帝国からはジャン、アメリア、テオドール、エドワードが出席している。今回は皇帝が帝国を長期間離れていて貰わなければならないため、皇帝の食の好みなどのリサーチも兼ねている。
「この度は集まってくれて感謝する。この世界の存続の為にも、皆で協力して進めて行けたらと思っているよ」
「本日はこのような場を設けて戴き……」
「挨拶はさっきいただいたからかしこまらなくても問題ない。さぁ、座りたまえ。次期帝国の太陽である皇太子殿下」
「あ、ありがとうございます……」
陛下は、外用の威厳...普通に警戒するレベルの威圧感を出しているせいで、ジャンがほんの少しビビってる様に見える。顔色が悪いけど大丈夫だろうか?
「あら?ジャンは緊張しているの?今日はちゃっちゃと話しを進めないと終わらないんだから、緊張している暇なんてないわよ?」
リオも気がついたらしく、
「ふふっ、その通りだねリオ。ジャンと皇女様だけでは無く、テオドールやエドワードも、言いたい事や言っておくべき事はどんどん発言してくれて構わないからね。半端なタイミングでも、思い出した時にどんどん言ってね。どの情報を知っていて、何を知らないのかをすり合わせておく必要もあると思っているよ」
帝国から来た4人はしっかりと頷いた。
「それでは、今回は王国で『聖女様のお披露目パーティー』を大々的に、周辺国の王族を含め招待して開く事を前提として話しを進めてもよろしいでしょうか?」
宰相が皆を見渡し、国王に視線を向ける。
「うむ、その通りだ。リオの称号は『大聖女』であり、『女神の加護』と『精霊の加護』を持っている事も匂わせる程度はしようと思っている」
「現在の世界情勢を見れば、デュルギス王国に喧嘩を売る国は無いと思いますが、聖女様の狙われる可能性は少なからずあるかと」
アメリア皇女が心配そうにリオが公に顔を出す事への危険性を
「皇女様、それは心配なさらなくても大丈夫ですよ。今回は、聖女様が狙われる程の価値があると思わせなければなりませんし、我が王国の騎士団の誰も勝てないレベルで、剣技も上達なさっているようなので……最悪、『魔封じ』をつけられた聖女様にすら、誰も勝てるとは思えないのです」
恐らく影からの情報だろう。リオが剣の稽古をする為に、騎士団へたまに通っている事はちゃんと報告して来たから知っていた。僕も噂では聞いていたけど、やっぱり本当だったんだね……
「えぇ?リオ、騎士団にまで……」
「やだ、そんなの私が女だからって皆が手加減してくれてるからに決まってるじゃない。いくら何でも、騎士団の
「そ、そうよね……?」
周りを見渡すと、デュークや宰相がブンブンと頭を横に振っている。あぁ、普通に全力で挑んで来た騎士達に勝ったんだな……
「それでも、わたくしは友人のリオが危ない目に遭うのは心配ですわ」
「リア、ありがとう。気持ちはとても嬉しいけど、今回は私が中心になって立ち回らないといけないみたいなのよね」
「この世界の救世主だから?何故、リオばかりが危険な目に遭わなければならないのよ。リオが強い子だからって、怖くない訳ではないでしょうに……」
あぁ、皇女はリオの味方と思って間違い無さそうだ。女性の味方……それも王国の外に味方を作っておくのは大事だからね。
「その通りだと思うよ。アメリア皇女が僕と同じ考えを持っていてくれるなんて嬉しいな。でもね、今回はリオに任せないと厳しいんだ。何度もシミュレーションして出した結果なんだよ」
「そうでしたか……」
「今回、王国内でのパーティーが行われてから、その翌月には御披露目パーティーの予定だからね。リオのパーティーを来週に控えた今、早めに決めて各国へ招待状を出さなければ間に合わなくなる」
「なるほど、時間にも追われているのですね」
「そうなのです。それに、スタンピードが落ち着いている今、パーティーを2つとも終わらせてしまいたいですからな」
デュークが申し訳無さそうに皇女を見ている。皆んなリオが大好きだから、気持ちは分かるのだ。
「私は座ってるだけなんだろうけど……」
リオは両日とも挨拶をひたすら受ける事になるからね。知り合いのいる王国のパーティーはまだ楽だと思うのだが、一応補佐をつけるかな。
「リオの補佐として、リズをつけるから大丈夫だよ」
「それはキースも
「え?いや、まだ言ってないけど……」
「あぁ、公爵令嬢の婚約者の方ね。カミル殿下、それは両方に承諾させておかないと大変な事になりますわよ?」
「えぇ?リアまで?シルビー、分かる?」
「カミルはリオが権力のあるニンゲンの近くに控えている事で目立つのは嫌じゃない〜?いっぱいダンスの申し込みとか来そうだよね〜」
「はっ!そうか……リズはただでさえモテるから、キースはいつもヤキモキしてたもんね。それも今回は聖女と仲が良いとなれば、お近づきになりたい人間も今より多くなるか」
「そう言う事〜」
「本当にシルビーは賢いわね。人間の考えの繊細な所まで分かるなんて凄いわよね」
「そうだね。シルビーが僕のパートナーになってくれて本当に良かったよ」
ん?ソラが少し不貞腐れてる?皆んなでシルビーばかりを褒めるからかな?
「さすがはソラのお友達よね。類は友を呼ぶと言うけれど、きっとソラが賢いから、シルビーも賢いのね」
リオも気付いて素早くフォローしていた。さすがだ。ソラは機嫌良く喉を鳴らしてご満悦だ。移動の時に浮かず、言葉を喋らなければ、もう完全に猫だよね。
「その話はリズとキースに確認してから決める事にするね。この後、リオは予定があるから、リオに聞きたい事があれば、先に聞いておいてもらえるかな?」
「それなら……リオ、もうドレスは選んだの?出席するかは分からないけど、色が被らない様にしなければならないから、2回目のパーティーのドレスの色を教えて貰えるかしら?」
「私はいつも青系か紫系で深い色が多いわ」
「あぁ、カミル殿下からの贈り物なら必然的にそうなるわよね。僕のだ!って全力で主張してそうだわ」
「ぶふっ!カミルの事を良く分かっておるな。ハッキリと話す様は、やはり婆さんとそっくりだな」
陛下がリアの発言に、たまらず吹き出してしまわれたね。そんなに僕は単純に見えるのだろうか?まぁ確かに、婆やとリアは雰囲気もそうだけど、言動が似ている気がするね。
「はい、勿論です。わたくしの理想は叔母様ですし、今後も叔母様の様な強い女性になりたいですわ」
「まぁ!リアもなのね。私も婆やみたいな格好良い大人の女性になりたいと思っているわ」
「わ〜、リオもばーちゃんみたいになりたいの〜?シルビーもばーちゃん大好きだよ〜」
「オイラも〜。眠い時に上手に撫でてくれるんだ〜」
婆やは精霊達にも愛されてるんだね。まぁ、精霊に嫌われるタイプの人間は契約出来ないらしいけどね。
「あっ、そろそろ時間だわ。私のパーティーの話なのにごめんなさいね?」
「いえいえ、皇帝を王国へ呼び出して欲しいと願ったのは我々ですので、どうぞお気になさらないでください」
テオドールが発言すると、エドワードが大きく何度も頷き、リアとジャンは小さく頷き、優しく微笑んでいる。
「そう言って貰えると助かるわ。内容は後で確認させて貰って、不明点は質問を送るかも知れないけどよろしくね。それじゃあまた。陛下、御前失礼します」
「あぁ、リオ。忙しい中ありがとうな」
リオとデュークは颯爽と退室した。王国の防犯を高める為の仕組みや魔道具などを、師匠達と共に開発する為だ。リオの持っている異世界の知識はとても役に立つからね。
⭐︎⭐︎⭐︎
★デューク SIDE
「おぉ、待っとったぞ、嬢ちゃん」
師匠が機嫌良くリオ殿に話しかけている。顔がニヤつかない様に気にしてるのがバレバレだが、それだけリオ殿が可愛いのだろう。
「お待たせ、爺や。今日は裏門を確認するのよね?」
「あぁ、そうなのじゃが……」
「何か気になる事でも?」
「城の壁を超えるのは、簡単じゃろ?」
「えぇ、浮けるなら入れるものね」
「そうなんじゃ。ワシらは浮けるからのぉ。という事は、浮けない人間も対策するのじゃろう?」
「どちらも対策は必要だと思うわよ?飛べなくても、大男が投げ飛ばして城壁を超えて来るかも知れないわ」
「あぁ、それはありそうですね」
「えぇー?ありそうなの?デューク」
「ありそうと言うか、昔あったのです。私が30歳になった頃だったか。王妃殿下を一目見たいと平民の子供が、仲間の大男に投げ飛ばして貰って入れてしまったのですよ」
「まぁ!平民の子供が……凄いわね。その人はどうなったの?」
「騎士団に居ますよ。こんな守りじゃ王妃様を守れないから、自分が騎士になって守るんだと言って、騎士の試験を受けて正式な護衛騎士になったのです」
懐かしいな。試験の時に人手が足りなくて手伝わされたんだが、付け焼き刃とは思えない程のスキルを持っていると思って見ていたら、サイラスが慰問先の孤児院で剣を教えていた子供だったらしい。
「そうなのね。平民のほとんどは魔力が無いのよね?それなのに凄いわね。努力して勝ち取れる事を証明したのね」
「まぁ、好きな事は努力と言うよりは、好きだから苦痛じゃ無いってのもありますからね」
「えぇ、そうね。それが仕事になると辛かったりするんだけどね。その子は夢が叶って良かったわね」
「その子供……20年以上経っておりますのでもう大人になっておりますが、リオ殿のパーティーで王宮警備の隊長を任せる予定ですので、近々会う事もあると思いますよ」
「デュークから見ても優秀な人なのね?」
「えぇ。剣を教えたのがサイラスだと聞いております。ですので、『騎士とはこうあるべき』をそのまま体現してるイメージで合ってるかと」
「あぁ、なるほど……」
「それで、リオ殿に提案された『監視カメラ』なのですが、王城の入り口全てに設置が終わりました。『モニタールーム』を確認して貰ってもよろしいですか?」
「えぇ、目立つ様に『フェイクカメラ』も設置してくれた?」
「はい!その発想が画期的で、魔導師達がはしゃいで目立つニセモノを作っておりましたよ!はっはっは!」
「本物の方には魔道具で『防御結界』も張れる仕様になっているのよね?」
「はい!全て、リオ殿の仰る通りにしてあります!」
「これ、デク。自分達の意見もしっかり取り入れんか」
「師匠、我々も色々と考えていたのですよ。ただ、イメージの斜め上の発想で、更には壊される可能性まで考慮しておられる。非の打ち所がないでしょう?完璧過ぎて、全く何も思いつかない事が申し訳無かったですよ」
「まぁ、あの計画案を見た時にはワシも驚いたし、ワクワクしたからのぉ。一度に全ての入り口を監視するなんて、我々には無い発想だからの」
「えぇ。それも、何かあった時の為の連絡手段、『インカム』が素晴らしい!」
「あ、インカムも出来上がったの?」
「徹夜して作りましたよ!もう、楽しくって。魔導師全員で作り上げました。個数と発信側のチャンネルが多かったので、3つに分けておきました」
「そうね、どうせ1人では監視しないでしょうし、複数人で監視しながらバラバラに指示出来る方が良いわね」
「それで、出来上がったら陛下に報告してから権利の申請などがあるのですが……」
「カミルに任せて良いかしらね?」
リオ殿の価値観の違いは、我々とどれぐらい差があるのか興味があるな。リオ殿に任せると儲け度返しだろうとは思うけれども。
「因みに、リオ殿なら、5人と繋がれるインカムセットを幾らで売りますか?」
「金貨1枚ぐらいかしら?平民がひと月金貨3枚から5枚で暮らしてるって言ってたわよね?まだ高いかしら」
「………………商会は今後も全て殿下に任せましょう」
「それは勿論、カミルに任せるけどね?爺やなら幾らで売るの?」
「金貨50枚はくだらんだろうのー」
「えぇ……電話じゃ無くてただのインカムなのに」
「あぁ、その『電話』も落ち着いたら作る事になりましたよ。予算は陛下が出されるそうです」
「えぇ――――!陛下が出資なさるの?何故、そんな
リオ殿が遠い目をしながら、深いため息を吐いている。それくらい、凄い発明なのだと理解出来てない事が逆に凄いと思うのだが。師匠すら魅了するアイディアは、我々魔導師にとっては大好物だからな。制作する前から楽しみで仕方ない。
「嬢ちゃん、これは凄い発想じゃからな?陛下が喉から手が出る程、欲しかった技術なのじゃ。これだけは絶対に作らねばならん」
「ふぅん?そうなのね?あまり聞かない方が良さそうだから聞かないでおくけど、作るのは私じゃ無いしね。デューク、頑張って?」
「勿論です!私が全力で作り上げて見せましょう!」
「張り切るのは良いけど、徹夜は駄目よ?インカム作るのに2日完徹したんですって?」
「うっ!私は新しい物を作るのは大好きなのです。それこそ生き甲斐です!なので……」
「駄目よ。体を大事に出来ない人には作らせないわよ?そうね、リアが居る間はリアに見張っていて貰おうかしらね」
「ん?リア様ですか?」
「えぇ。まぁ、それは後々ね。うん、『モニタールーム』は素晴らしい出来ね。東西南北で分けたのね?とても見やすくて良いと思うわ」
「ですよね!自信作なのです!」
「爺や、後は任せて大丈夫そうね?」
「予算が降りなければ何も出来んから大丈夫じゃろ」
「そうよね?何となく安心出来ない気がするけど、爺やも居るからまぁ大丈夫でしょ。さて、そろそろ戻りましょうか。ソラ、婆やの所へお願い」
「おっけ〜。じゃ〜ね〜」
あっという間にリオ殿とソラ殿は転移してしまわれた。名残惜しいと言う気持ちは無いのだろうなぁ……師匠も寂しそうな顔をしている。仕方ないから『電話』の設計図でも眺めて楽しもうと思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます