第108話 王国側の見解 ★カミル SIDE

 シルビーと王国の執務室に帰って来た。勿論、転移してくれたのはソラで、友達が僕と契約した事を喜んでいる様だった。


「王子様〜、直ぐに戻って来るの〜?」


「ん〜、どうだろうね〜?リオ次第かなぁ〜」


「そっかぁ〜。帰って来たら、会いに行っても良い〜?」


「良いよ〜。王城内なら、自由に動いても大丈夫だよ〜。ねぇ、カミル〜?」


「そうだね。僕達は陛下に一度顔合わせしておいた方が良さそうだから、これからお伺いを立ててみるね?」


 キースを振り返ると、頷き部屋を出て行った。


「それが良いかもね〜。じゃあオイラはリオの所に帰るから、後はよろしくね〜」


「了解、ソラもリオをよろしくね」


「おっけ〜」


 ソラは消えて、シルビーが僕の腕にスリスリと頭を擦り付けていた。


「少し不安かい?僕の周りは悪い人は居ないと思うけど、嫌な事があったりしたら、早めに教えてくれる?」


「え〜?嫌な事、言っても良いの〜?」


「言っちゃ駄目って言われたの?」


「ハッキリ言われた訳じゃ無いけど〜、契約者や他のニンゲンに嫌われたく無いから皆言えないって……」


「シルビー、僕はシルビーを信頼しているし、大好きだよ。だからね、簡単に嫌いになったりなんかしない。嫌な事があったら直ぐに教えて欲しいな。もしかしたら、それが王国の為に必要な情報かも知れないからね」


「なるほど〜!分かったよ〜。ボクで役に立つかは分からないけど、異変に気がついたら報告するね〜」


 帝国で起こった事を精霊が知らない筈は無い。何故契約者達に伝えなかったのか気になっていたのだが、そう言う事だったのか……って、シルビーは僕が言いたい事を良く分かったね?


「シルビー、君はとても賢いね?」

 

「そう〜?精霊の中では考える方だって、王子様には言われた事があるくらいかなぁ〜?」


「そうなんだね。シルビー、僕の唯一はリオなんだ。リオに何かあったら、直ぐ僕に教えてね?」


 心強い味方が出来たと考えて良いだろう。人には限界があるからね。精霊なら情報も入りやすいと思われる。


「うん、勿論だよ〜!契約者の気持ちは少しだけど分かるからね〜。王子様も言ってたから大丈夫〜」


「あぁ、ソラも1番はリオだからね。そう言う意味では君達の団結力はありがたいかな」


「カミル殿下、国王陛下がお呼びです」


「今行くよ。さて、シルビー。この国の1番偉い人に会いに行こう。緊張しなくても、僕の父上だから、安心して良いからね」


「あ、そうなの〜?それなら良かった〜。精霊はあまりに自由過ぎるから、オイタが過ぎてメチャンコ怒られたって言ってた精霊が居たから〜」


「ふぅん?変わった言回しをする子だね?」


「へへっ、現在の精霊の王様のイナリ様だよ〜。元契約者の人が……カミル、大丈夫〜?」


「カミル殿下、大丈夫ですか?」


「えっ?」


「凄く顔色が悪いですよ」


「カミル、少し休んだら〜?」


「陛下との謁見が終わったら休むよ。だから、2人ともそんなに不安な顔をしないで大丈夫だからね?」


 ⭐︎⭐︎⭐︎


「カミル!ん?カミル?大丈夫か?」


「国王陛下に……」


「挨拶は良いから座りなさい。キツネの精霊よ、私は王国の国王だ。簡単に言えば、この国の王様だな。そなたの名前を教えてくれるかい?」


「うん、ボクはシルビーだよ〜!王様、よろしくね〜」


「我が国は暮らし難くは無いだろうか?精霊はソラ殿ぐらいしか居ないだろう?」


「ボクは王子様とカミルの側に居られるから、現状に満足しているよ〜」


「そ、そうなのか。それは良かった」


「それよりカミル、魂の記憶が戻りそうなの〜?」


「「えっ?」」


「リオと王子様は気が付いてるよ〜。カミルに感じる違和感だね〜。今のカミルは『ニホンジン』みたいだよ〜」


「シルビー、僕は昔誰かだったのかい?そして、それをシルビーも知っているの?」


「生まれ変わり的な〜?輪廻転生だったかな〜?その時に、大事な記憶があったんだろうね〜。何かあった時に思い出す様、仕組まれていたのであれば、それが今だったって事だよね〜」


「本当に君って頭が良いよね……まぁ、記憶を完全に思い出してから考えよう。帝国に行ってから少し体調が悪いし、僕はこちらで出来る事を進めなきゃね」


「カミル、体調は大丈夫なのか?帝国で起こる予定のスタンピードなどは聞いておるが……本当に手伝うつもりか?」


「それはリオが決めた事なので、必ず成功させます。リオ自身が手伝いますから問題は無いでしょう」


「ふむ。それなら何も言うまい。他に相談しておく事はあるか?」


「もしかすると、帝国を属国にするかも知れません。表向きには同盟という形に収めようと思うのですが、陛下は如何思われますか?」


「帝国はそれで良いと言うのか?」


「ジャン……現在の皇太子にうんと言わせます。彼と彼の姉は賢い。その上、皇帝を降ろすとハッキリ言い切った。今のままでは帝国をおさめる事は難しいと理解しています」


「ほぉ。それは助ける価値もありそうだな。リオも彼らが悪い人では無いと思っているのだろう?だから助けたいのではないのか?」


「あ、リオは純粋に、目の前にある命を助けられるなら手を伸ばすってだけですね。ただ、運が良かったり?意図せず儲けのタネだったりするだけでしょうね」


「あぁ、なるほど……リオは好きにさせておけば、勝手に利益を持って来そうだな」


「根本が人のために行動する人間なので、面倒な事になっても大きな問題にはならないと思われますしね」


「そうだな。リオの事は私も信用している。帝国の事もそうだが、好きにさせて見よう。その代わり、カミルがしっかりと手綱を握っておけよ?」


「はい、勿論です。少しずつ方向修正しながら、上手い着地点を見つけられたらと思っております」


「うむ。カミルに任せておけば問題無かろう。爺さんが探しておったから、後で顔を出して来るんだぞ?」


「かしこまりました。それでは失礼します」


 シルビーは陛下の近くにススッと寄って、「またね〜」と言って戻って来た。陛下の顔がメロメロになっているのは気のせいでは無さそうだ……


 ⭐︎⭐︎⭐︎


「師匠、どうかなさいましたか?」


「カミル、お主は体調が悪くないかのぉ?」


「あぁ、さっきリオに少しおかしいから一旦王国に戻った方が良いと言われて帰って来ましたが、体調は悪くありませんよ。さっき、顔色が悪いとキース達には言われましたが、特に具合が悪い訳ではありません」


「ふむ。カミルはボーッとするタイプなのじゃろうか」


「え?人によって違う症状が出るのですか?」


「あぁ、そうじゃと思われるな。ボーッとするタイプと、著しく体調が悪くなるタイプに別れる様だのぉ」


「公爵とリオは体調不良タイプだったと?」


「うむ。現時点では、どの様にしてタイプが分かれるのかすら不明じゃがのぉ……」


「人体実験する訳にもいきませんからねぇ……」


「あぁ、データはデクから送って貰っておるでな」


「え?あちらに情報提供者が居るのですか?」


「どうやらあちらの皇女らしいがのぉ?」


「あぁ、惚れた弱味ですかね……」


「ん?デクにとうとう惚れた女でも出来たのか?」


「あ、逆ですね。惚れられてる方です。食われそう……って言ったら怒られるんだろうなぁ?」


「あくまで皇女殿下だからのぉ?彼奴はそれぐらい肉食系女子じゃないと、結婚出来ないのではないか?」


「国際問題に発展しそうですが?」


「丁度良いではないか。デクの嫁に皇女を貰って、人質にするのもアリじゃろうて」


「…………師匠、盗み聞きしてましたね?」


「ホッホッホ。バレたかのぉー」


「陛下の執務室を盗み聞きしちゃ駄目でしょう……どれだけ脆いんですか城の中なのに……」


「あぁ、ワシとデクが張った結界ばかりなのだから、ワシらが解除出来ない方が不味かろうて?」


「そう言う話しでは無いのですが……」


「まぁ、良いではないか。ワシも婆さんも、最近嬢ちゃんが帰って来ないから寂しいのじゃぞ?帝国の問題を早よぉ終わらせて、たまには帰省させてくれんかのぉ?」


「あ、はい……了解しました。どうやら、精霊王の所にも呼ばれてる様なのですが……」


「相変わらず彼女はモテモテだのぉ。ホッホッホ」


「はぁ……リオと早く結婚して落ち着きたいなぁ……」


「カミル疲れてる〜?」


「ん?あぁ、少し疲れてるね。でも大丈夫だよ、シルビー。ありがとうね」


「カミル、早くベッドで寝なきゃ駄目だよ〜」


「どうしてだい?」


「リオが、カミルはいつも無理をするから、疲れていたらベッドで寝るように言ってってお願いされたの〜」


「ぶほっ!そ、その通りじゃのぉ、シルビー。部屋に戻って、カミルを休ませてやってくれるかのぉ?」


「お〜け〜だよ、ジーちゃん!ボクもお役に立つよ〜」


 シルビーが僕の腕に抱き付いて、執務室まで転移した。


「ん?執務室?」


「補佐官を解散させなきゃ駄目なんじゃないの〜?」


「へー!シルビーは物知りだねぇ?キース、クリス、今日はここまでだ。また明日頼むよ」


「「御意」」


「またね〜」


 今回シルビーが転移したのは寝室の手前の部屋だった。ここで着替える事を知ってるのかな?


「シルビー、ありがとうね。君も僕のベッドで一緒に寝るかい?」


「え?良いの〜?」


「リオもソラと一緒に寝てるらしいよ?」


「そうなんだ〜……ボクもカミルと一緒に寝ても良い〜?」


「あぁ、勿論だよ。着替えたからおいで」


 僕とシルビーはお互いを感じながらゆっくり休む事が出来た。普段は眠りが浅い僕だが、この日はとても良く眠れたのだった。

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